配偶子機能の減退が引き起こす妊孕性の低下は、医療、産業、環境において深刻な問題の一因となっている。例えば、ヒトの加齢や癌治療による妊孕性の低下は少子化の要因の一つであり、大型家畜の妊孕性の低下は莫大な経済的損失を生み出し続けている。また、急速に失われる遺伝的多様性に抗うために実施されている絶滅危惧種に対する人工授精などの成功例は限定的である。
これらの問題を解決するためには、ヒトを含む様々な動物の生殖細胞および生殖腺を用いて配偶子の形成過程を理解し、それに基づいて配偶子機能を亢進させる次世代の生殖補助技術(ART)の開発が必要である。
本研究では、マウスなどの実験動物の生殖細胞や生殖腺の培養において独自の先端技術を持つ日本の研究者が、多様な哺乳類の細胞資源と繁殖技術を有する海外の研究者とネットワークを形成し、ヒトを含む様々な動物の配偶子形成を再現する培養技術の開発を行う。さらに、これらの培養技術を利用して、配偶子機能を亢進させる小分子化合物を探索・同定する研究システムを構築する。
これらの研究を通じて多くの若手研究者を育成し、当該分野において日本が長期にわたり国際的に先導的な役割を担う基盤を確立することを目指す。