
アメリカ研修医事情 by Dr. Eguchi
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アメリカ研修医(レジデント)生活の体験を紹介させていただく6回シリーズの第1回目として、前回は私がニュージャージー州パターソンという町で、内科小児科合同プログラムのレジデントを始めることになった、その経緯について述べさせていただきました。今回はそのレジデント生活1年目の典型的な一日を、内科一般病棟のローテーション時を例として紹介させていただきたいと思います。
毎月一般病棟は4つのグループで担当し、各グループには1年目のレジデントが四人、その教育者として2年目のレジデントが二人、グループリーダーとして3年目のレジデントが一人、そして最終的にグループを統括する監督責任者として内科医師(Attending Doctor)一人が選任されます。レジデントの生活は、longの当直(callと呼ばれる)、当直開け、short、当直前日の4日間を1サイクルとし、1ヶ月は7または8サイクルで構成されます。longは昼12時から次の日の朝7時まで、shortは朝7時から12時までが当直の責任時間であり、1年目一人当たりlongで平均6-7人、shortで2-3人の入院業務(Admission)をその間に担当します。
ところでセントジョセフ病院の内科では、私たちレジデントが主治医になる患者さん(Medical Service)と、各々の内科医師が主治医となり、私達はその症例を後ろから勉強する患者さん(Private)とがおり、1年目のレジデントは平均して一人当たり、Medical Serviceを8-10人程度、Privateを10-15人程度フォローしていました。
典型的な1年目レジデントの一日は当直のない日もある日も朝7時に始まります。初めにコンピューターで自分の受け持ち患者の朝の血液検査の結果を調べます。毎朝午前5時頃より採血師(phrebotomist)が病室を回って採血しますので、7時の時点ですでにSMA7と呼ばれる基本的な生化学と一般検血の結果は出ています。レジデントは患者一人ずつに手掌サイズのカードを用意しており、その日の検査結果を書き込みます。次にそれぞれの患者のチャート(日本ではカルテ)をチェックし、前日からのVital(血圧、脈拍、体温)の変化、夜間に起きた出来事(胸痛発作、呼吸困難等)とその処置及び経過を把握します。小児科の一般病棟は1フロアですが、内科の一般病棟は6フロアありますので、各病棟を自分の担当患者に応じて回ります。患者さんは7時を過ぎれば起床していますので、各病室にて診察し病状説明をしていきます。
8時から9時までは1年目のレジデントが前日に入院した一症例について各々発表する朝のカンファレンスがあり、2年目と3年目を合わせたレジデント全員が集まり討議に参加します。患者について緊急の疑問があればこの時に2年目または3年目のレジデントに聞いておきます。カンファレンス終了後、残りの血液検査の結果をチェックし各症例の疑問点と治療方針をまとめ、回診の準備をします。
10時頃よりAttendingの回診が始まり、1年目のレジデントが担当の患者について先程のカードを参照しながら経緯を報告し、今日の治療方針を述べます。Attendingは質問または説明を加え、一つ一つの症例がグループ全員で勉強できるように指導します。それから全員で各患者さんの病室を回り、Attendingは診察後病状説明を行い、必要な投薬または検査等の指示および当日の退院の決定をします。レジデントはその指示に応じてチャートにorderを書き、orderは病棟クラークを通じてそれぞれのパラメディカルに指示されていきます。回診終了後問題となった患者のX線やCTフィルムを放射線科に見に行き、時には放射線科医と所見について検討を行い、Attendingの回診は終わります。
12時から1時までは内外の講師による昼のカンファレンスがあり、各分野のトピックについて勉強します。昼食後、診察、検査、回診の結果をカルテにSOAP(S:subject, O:object, A:assessment, P:plan)形式で記載し、必要な退院の手続きをします。Medical Serviceの患者さんが終了すると、次はPrivateの患者さんを診察し、同じ形式で一日の経過をカルテに記載します。最後に放射線科、病理などの結果も含めてすべての検査結果をコンピューターでチェックし、問題点を整理して一枚の紙にまとめ、口頭で直接今日の当直であるレジデントにフォローを頼み、病棟を離れます。必要事項を図書室で勉強し、当直のない日の典型的な一日は終了となります。当直のある日(on call)は、以上に入院の業務が加わります。
次回はその入院業務の実際と一般病棟以外のローテーションについて述べさせていただきたいと思います。
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