学会へ行こう|大阪大学 免疫内科

教育・研修

学会へ行こう

論文に発表される前の最新情報を得る

論文に発表される前の最新情報を得るため、同じ分野の研究者と交流を持つため、様々な学会が開催されている。医学部卒業後、研修医となって最初に発表する学会は内科系研修医であれば日本内科学会地方会が多いだろう。学会の規模によって、地方会(各地方で開催)-日本の専門学会の年次総会(日本の都市で開催)-米国XX学会、欧州XX学会(米国や欧州の主要都市で開催され世界中の専門家が集まる)の順で演題数や参加者が多くなりプログラムも多彩になる。内科一般、臨床免疫学、リウマチ学、アレルギー学の関連での主な学会は以下である。


2011年米国リウマチ学会

大規模な学会では教育セミナーが開かれることがあり、話慣れた専門家により重要点を要領よく解説して頂くと、自分で教科書や論文を読んで勉強するより効率良く最新の知識を得ることが出来るだろう。新しい発見や新薬の登場などで年ごとに進歩している分野の学会会場では熱い雰囲気が感じられるだろう。世界中から人が集まる国際学会は宿泊施設や会場の関係で米国や欧州の大都市での開催となり、時間があれば街中に出かけてみたりもする。それも国際学会参加の楽しみかもしれない。

専門分野の最先端を真剣に勉強し、科学者間の交流を楽しみたいのなら、

一方、専門分野の最先端を真剣に勉強し、科学者間の交流を楽しみたいのなら、以下のカンファ(学会というより、規模が小さいのでカンファ、ミーティングと呼ばれる)を勧める。


Keystoneの学会会場です。
まわりにはスキー場以外何もありませんでした。
Montana州 Big Sky

これらのカンファは山奥のホテル(Keystone Symposia)やLong Islandの田舎(Cold Spring Habor)などで行われる。飛行機を2回乗り継ぎ最後にバスで3時間やっとたどり着いたこともあった。野生の鹿が出てくるくらいで、観光に行こうにもホテルの周囲に何もないのである。Keystone Symposiaは狭い専門分野を対象にした様々なカンファがコロラド州Keystoneをはじめ、あちこちで開催されるので、自分の専門領域の興味あるカンファを選択して参加する。会場のまわりに遊ぶところがなく、カンファ期間中はホテルに缶詰状態になる。仕方ないのでAbstract集に全て目を通して真面目に参加することになる。スキーリゾート地で行われることが多いのでスキー好きならお楽しみもあるかもしれない。

毎日の滞在ホテルでは朝食や夕食で著明な科学者と同じテーブルになったり、気軽に話が出来るチャンスに恵まれる。良い発表あるいは興味深いポスター発表を行うと、その場で共同研究の話が持ち上がったり、留学先候補が決まったりすることもある。狭い専門領域のカンファでは論文のレフェリー(審査)をするような人たちと出会う可能性があり、意見を伺って自分の論文投稿に備えることもできる。論文投稿時にレフェリー候補を記載できる場合は、カンファで知り合った好意的な人を記載するとよいだろう。また専門分野を先導するような学者が招待口演されるので、留学を考えているなら招待演者の発表を聞きながらラボの品定めをしよう。度胸があれば、後で捕まえてポスドクポジションの空きを尋ねてみると良い。最終日の夜はパーティーが催されるが、日本人は英語下手、社交下手もあり、なかなか一緒に騒げないが、旅の恥はかき捨て、度胸をつけて話かけてみよう。大規模な学会では参加者が多すぎてこうした密接な雰囲気は経験できない。

日本ではこのような狭い専門分野を対象にした親密な感じのカンファを定期的に行う組織がなく残念に思う。

国際学会に参加しようとする人へ

(1)英語が聞き取れなくても気後れする必要はない

イタリア人に内容が解らなかったと尋ねたら「私は英語が苦手なので時々イタリア語もまじえていたのよ」などと言い訳してくれた時には驚いたものだ。フランス人の鼻に抜けるような発音は英単語にはなく、フランス語を交えて話していたのかもしれない。スコットランドの英語も同じ英語なのかと思うくらいわからない。舌の形が似ているのかアジア人の英語はわかりやすい。聴衆はデータに興味があるのであって英語を批判する人はいない。聞き取れなくても自分の専門分野の発表であれば演者のスライドを見れば内容はわかるので、しっかり見て聞いて書き留めよう。

(2)ボーッと参加してはならない。前の席でしっかりノートに書き留める

Keystone Symposiaなどに参加して感心することは、皆競うように前の席を確保しようとすることです。最前列と2列目あたりは次演者の席だったり、重鎮の席だったりするので、3列目あたりから埋まる。また、口演中は偉い先生でも自席で熱心にノートにメモを取り、ノートパソコンに打ち込む姿がみられる。場外に出やすい端の席や居眠りしやすい後ろの隅に席を取るならそもそも参加しない方がよい。聞いている時は理解して覚えていても、日にちが経つと解らなくなったり忘れたりするので、見聞きした内容をノートにしっかりメモして残しておく。Abstract集は見返すことはないが、自分がまとめたノートは見返す。B5(小さいメモ帳はスペースが少な過ぎる、A4はやや大きすぎる)ノートを一冊持って行き、記録で埋めるようにしよう。書き留めるという作業は眠気を寄せ付けず、発表に意識を集中させ、手を動かすことにより記憶に定着する。また、後でノートを見返せば記憶を呼び戻せる。

(3)様々な情報を得た後は自分で考えよう

学会が終わり、頭が十分耕され栄養を得たら、知らない町角を歩きながら、あるいは長い飛行機の機中で帰国したあと行う研究や診療計画のことを考えよう。アイディアはすぐに消えてしまうのでノートに書き留めておこう。普段仕事に追われているとこうしたゆっくりした時間も楽しい。

(4)演題を出してみよう


発表のようす

学会に参加して勉強して帰るだけでは寂しいので、自分で演題を出してみよう。学会発表でデータをまとめると次に行わなければならない仕事が見えてくる。また、論文として投稿する前に外部の評価を得ることは貴重で、会場での様々な意見は研究室に戻ってからよりよい論文に仕上げる参考になるだろう。気がつかなかった指摘を受けたり、思わぬ人と知り合いになったりするので、メルアドを記した英語表記の名刺を持っておこう。自分の発表ポスターの前に立っていて尋ねてくれる人がいなかったら、発表内容が面白くなかったのだと反省するべきである。

(5)学会後に自分なりにまとめておこう

日本に戻り旅の疲れで休む前に、学会内容を忘れないうちにまとめておこう。ノートに追加説明、研究背景や自分の考えを書き足しておく。職場に戻り所属教室や医局の会議で学会報告のスケジュールを組み入れてもらい、学会に参加できなかった人たちに最新重要情報をしっかり伝えてあげよう。まとめることによって自身の記憶も定着するだろう。学会参加旅費を教室で負担して頂いているなら、参加させて頂いたことへの感謝として学会での最新情報を皆に伝えよう。昔は学会報告の内容が不十分だと「おまえは観光に行って来たのか」と教授から皆の前でお叱りを頂いたものです。


Denver空港。米国山岳地域への玄関口です。

最後に

学会やカンファで報告される前の最新データをいち早く知りたい?発表前のデータは通常は研究室外口外禁止なのです。そこまで興味が強く好奇心があるなら、もう自分で研究してみるしかありません。自分で研究に取り組めば自分が世界で初めて知ることができますよ。

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