先進融合医学共同研究講座
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ごあいさつ

大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授 萩原圭祐

新たな融合医学の構築に向けて

超高齢社会を迎えたわが国は、介護・寝たきりの問題や癌患者の増加の問題に直面しています。
一方、これ以上の医療費の伸びは期待できず、これらの問題解決に向けた新たなアプローチが必要とされています。

では、どこに、その答えがあるのでしょうか?
故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知るという言葉があります。

私は、前身の漢方医学寄附講座時代に、漢方の薬効を考えるうちに、漢方は心と体のレジリエンス(回復力)を高かめることで薬効を発揮していることに気づき、漢方に伝えられてきた考え方を基に、ベッドサイドに直結する新たな研究の展開をすることができました。

メーテルリンクの青い鳥のように、ヒントは、すぐ身近にあったのです。我々は、先進医学と伝統医学との新たな「融合医学」を構築し、超高齢社会の問題解決を目指していきたいと考えています。

融合医学の構築に必要なものとは?

私は、免疫難病や神経難病、癌、先天性の疾患の患者さんの診療の中で、先進医学と漢方医学を併用することで、数多くの劇的な臨床効果を経験してきました。

融合医学の構築には、先進医学のミクロの視点と専門性、漢方医学によるマクロな認識、に加えてレジリエンスの考え方が必要になります。

レジリエンスとは、回復力とか復元力と訳され、近年、注目されている考え方です。漢方では、古来から、人の回復力に注意が払われてきました。

また、心と体のレジリエンスを高めるためには、相互信頼やいたわりあう心が前提になります。レジリエンスをキーワードに融合医学の診療体制の構築と教育を行っていきたいと考えています。

伝統医学の考え方を踏まえた新たな研究展開

我々は、漢方の腎虚の考え方をもとに、前介護段階を意味するフレイルを引き起こすサルコペニア(加齢性筋肉減少症)に対し、牛車腎気丸が予防効果を示すことを、世界で初めて明らかにしました。

さらに、牛車腎気丸は、慢性疼痛においても有効である可能性を示すことができました。今後、我々としては、ベッドサイドにおける牛車腎気丸のフレイルやサルコペニアに対するエビデンス構築を目標に臨床研究を行っていきたいと考えています。

ただし、漢方における腎虚の考え方は、老化に限定されるものではありません。子供の成長や、不妊、うつや引きこもりなどの精神の不安定性にも関わります。

さらに、神経系の発育にも関与していることから、牛車腎気丸の中枢神経系への効果を明らかにしたいと考えています。

がんケトン食治療の作用機序の解明と普及を目指して

私たちは、漢方医学における「医食同源」の考え方を背景に、2012年よりがんケトン食治療の臨床研究に取り組んできました。これまでの研究を通じて、基礎研究と臨床研究の両面から検討を進めることの重要性を認識するとともに、得られた知見を学術的に共有する体制の整備が不可欠であると考えるようになりました。

こうした背景のもと、ケトン食療法に関する基礎・臨床研究の発展と、研究者間の学術的交流を目的として、日本ケトン食療法学会が設立されました。

学会の設立趣旨や活動内容、これまでに蓄積されてきた研究情報については、詳しくは「日本ケトン食療法学会 公式サイト」をご覧ください。