先進融合医学共同研究講座
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寒冷刺激で増悪する帯状疱疹後神経痛に対する桂枝加朮附湯とブシ末の有効性評価

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疼痛領域における漢方薬の役割は大きく、あらゆる西洋医学的な治療が奏功しない痛みが漢方薬により劇的に改善することがあります。特に、生薬の『附子』は、下行性抑制系賦活作用やκオピオイド受容体が関与している報告もあり、痛みの治療で頻用される様々な方剤に含まれています。痛みの中でも帯状疱疹後神経痛に代表される神経障害性疼痛は、治療抵抗性であることが多く、様々な治療が試みられていますが、十分な治療効果が得られていないのが現状です。

帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の皮疹が治癒した後も残存する痛みで、帯状疱疹(年間50万人)の約10~15%に痛みが残存すると言われています。
現在、帯状疱疹後神経痛に対して、様々な治療(神経ブロックやレーザー治療、抗てんかん薬、抗うつ薬など)が行われていますが、治療に難渋する事も少なくありません。桂枝加朮附湯やブシ末は、鎮痛作用、水分調整作用の他、温熱作用をもつ特徴があることから、寒冷刺激で増悪する傾向 がある帯状疱疹後神経痛に対する治療効果を検討しました。
方法は、まず、桂枝加朮附湯を投与し、痛みの改善が横ばいになるまで、ブシ末を追加増量して投与しました。
その結果、91.6%の症例で、痛みが半分以上改善しました。
痛みの改善率は、桂枝加朮附湯のみの内服時は、20.5±10.3 %でしたが、ブシ末の追加増量することで、76.5±27.7 %と著明に改善しました。最終的に必要であったブシ末の追加量は 1.0~5.0g/日で、その必要量は個々により異なりました(図1,表1)。
痛みが改善しなかった1例を除いて、すべての症例で、神経ブロックやレーザー治療などの併用していた治療を離脱しました。その結果、通院間隔が8.8 ± 6 日毎から 26.6 ± 8.5 日毎に延長し、通院回数の減少に繋がりました。



今後、寒冷刺激で増悪する傾向にある帯状疱疹後神経痛に、桂枝加朮附湯やブシ末の投与は、試みる価値のある有用な治療方法であると考えられます。

詳細は、The Journal of Alternative and Complementary Medicine, 2012で発表しています。

現在これらの結果をふまえて、神経障害性疼痛モデルを用いて、漢方薬の薬効機序を分子レベルで解析しています。

図1 表1
※図はクリックすると拡大します