先進融合医学共同研究講座
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牛車腎気丸は筋ジスモデルマウスでも筋量を増加させた

大阪大学 薬学研究科 准教授 深田 宗一朗先生との共同研究

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デュシェンヌ型筋ジストロフィーは筋ジストロフィー症の中でも、最も患者数の多い疾患であり確立した治療法がないのが現状である。そのため根本治療は勿論の事、効果的な病態進行抑制治療などの対症療法の確立も切望されている。
その中で、マイオスタチンと呼ばれる骨格筋の量を負に調節するサイトカインが注目を集めている(1)。マイオスタチンを欠損した動物では筋肉がムキムキになることが知られている。また、2002年にマイオスタチンを阻害する抗体により、筋ジストロフィーの症状が改善する成果がモデル動物( mdx マウス)を用いた研究により示され(2)、この成果を元に人を対象にした臨床試験が実施されている。
一方で、牛車腎気丸(GJG)が老化促進モデルマウスの筋量を増加させる事を萩原らは報告している(3)。マイオスタチン同様に筋量を増加させる作用は筋ジストロフィーの対症療法になる可能性を考え、我々が独自に開発した筋重量低下が著しいDBA/2-mdxマウス(4,5)を用いたGJGの効果を検証した。その結果、萩原らの報告同様に、GJGはDBA/2-mdxマウスの筋量を増加させる事ができた(6)。つまり、GJGの効果は老化モデルに限らず筋量低下を呈する状態において普遍的に効果を示す事が考えられる。しかし、残念ながら筋ジストロフィー症状を改善する作用は期待できなかった。GJG単剤では筋ジストロフィー対症療法薬にはならないが、病態を改善できる方法が確立されれば、それら薬剤との併用は効果的な作用を示す可能性は残されている。
【参考文献】
(1) Nature.1997 May 1;387(6628):83-90.
(2) Nature. 2002 Nov 28;420(6914):418-21.
(3) Phytomedicine. 2015 Jan 15;22(1):16-22
(4) Am. J. Pathol. 2010, 176:2414-2424
(5) Sci. Rep. 2016, 6:38371
(6) Clin. Nutrition Experimental. 2017; 16: 13-23
図1 図2 図3
※図はクリックすると拡大します

DBA/2-mdxマウスの特徴
※C57BL/10系統のコロニーから、自然発症で見つかったのがC57BL/10-mdxである。 近交配マウスであるC57BL/10の遺伝背景を別の近交配マウスである、DBA/2に戻し交配し、系統が樹立された。
従来、世界中で使用されているC57BL/10-mdxと比較し、ヒトDuchenne muscular dystrophy患者の症状に近いことが特徴である。
具体的には
  1. 野生型と比較して体重減少を示す(C57BL/10-mdxでは逆に野生型よりも重い)
  2. 野生型と比較して骨格筋量減少を示す(C57BL/10-mdxでは逆に野生型よりも重い)
  3. 病態形成が激しい(C57BL/10-mdxでは横隔膜等に限られている)
  4. 筋力低下が顕著である