研究の紹介|大阪大学腎臓内科

腎不全における異所性石灰化のメカニズム

Kidney Int 2009, 75(9): 915-28.

Fully phosphorylated fetuin-A forms a mineral complex in the serum of rats with adenine-induced renal failure.

Matsui I, Hamano T, Mikami S, Fujii N, Takabatake Y, Nagasawa Y, Kawada N, Ito T, Rakugi H, Imai E, Isaka Y.

 

腎不全では、しばしば異所性の石灰化病変が生じます。我々は、異所性石灰化抑制因子fetuin-Aに着目し、血清中のfetuin-Aとミネラルの複合体を測定することで、異所性石灰化ストレスの評価が可能であることを明らかにしてきました。脂質がアポタンパクと結合し、リポタンパクとして血中を運ばれるのと同様、異所性石灰化ストレス下では、過剰なミネラルがfetuin-Aと結合し、fetuin-mineral complexとして血中を流れています。このfetuin-mineral complexは簡単な遠心操作で分離することが可能です。また我々は異所性石灰化ストレスに対する新たな治療法の開発にも取り組み、有力な治療薬候補を見出しつつあります。

正常ラットの大動脈(左)と腎不全ラットの中膜石灰化病変(右)

 

右図の黒い部分が石灰化病変です(von Kossa染色)。右図のような異所性石灰化が生じる状態では、血中にfetuin-mineral complexが出現します。