慢性腎臓病患者さんにおける冠動脈石灰化とfetuin-mineral complex (FMC) | 大阪大学腎臓内科

慢性腎臓病患者さんにおける冠動脈石灰化とfetuin-mineral complex (FMC)

J Am Soc Nephrol 2010; 21: 1998-2007

Fetuin-mineral complex reflects extraosseous calcification stress in CKD.

Hamano T, Matsui I, Mikami S, Tomida K, Fujii N, Imai E, Rakugi H, Isaka Y.

 

慢性腎臓病患者さんでは、しばしば血管が石灰化します。血管が石灰化すると心血管病による死亡率が増加するため、石灰化しやすい状態であるか否かを正確に評価する事は重要です。Fetuin-Aは異所性石灰化抑制作用をもつ蛋白で、その血清濃度低下が、心血管病による死亡や血管石灰化などを増加させると報告されてきました。しかし我々の糖尿病保存期腎不全患者さんを対象とした検討では、血清fetuin-A濃度と冠動脈石灰化指数(coronary artery calcification score: CACS)に有意な相関を見出すことができませんでした(Mikami S et al. Hypertens Res. 2008; 31(6): 1163-70)。我々は、この原因を明らかにするため動物実験を行い、血清fetuin-A濃度ではなく、血清中のfetuin-Aとミネラルの複合体(FMC)を測定することで、動物の異所性石灰化ストレス評価が可能であることを明らかにしました(Kidney Int. 75(9): 915-28, 2009)。

 

動物の血清FMCは、簡単な遠心操作で分離できます。我々は慢性腎臓病患者さんの血清を同様に遠心分離し、血清fetuin-A濃度ではなく、血清FMC量が人においても異所性石灰化ストレスの良いマーカーとなり得ることを示しました。