FGF23とCVD | 大阪大学腎臓内科

保存期慢性腎臓病(CKD)患者のFGF23値は、透析導入前の心血管病発症を予測するが、透析導入後の心血管病発症までは予測しない

Bone 2012, 50(60): 1266-74.

Intact fibroblast growth factor 23 levels predict incident cardiovascular event before but not after the start of dialysis.

Nakano C, Hamano T, Fujii N, Obi Y, Matsui I, Tomida K, Mikami S, Inoue K, Shimomura A, Nagasawa Y, Okada N, Tsubakihara Y, Rakugi H, Isaka Y.

 

保存期CKD患者において、ビタミンD不足(25(OH)D低値)、副甲状腺ホルモン(PTH)高値、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)高値、アルカリフォスファターゼ(ALP)高値などの骨ミネラル代謝因子異常が全死亡を予測することが知られています。しかしながら、これらの因子を同時に測定し、主な死因である心血管病(CVD)の発症との関連を調べた研究はほとんどありません。そこで、私達はOVIDS-CKD研究に登録された保存期患者さん738名を対象に、研究登録時にビタミンD、PTH、FGF23、骨型ALPを測定し、入院を要する致死的・非致死的CVDイベント発症との関係を検討しました。

これら因子のうち、FGF23高値が透析導入前のCVDイベント発症と多変量解析で有意な関連を認めました(HR per FGF23(SD), 1.62; 95%CI,1.03-2.55)。CVD既往と糖尿病合併はそれぞれCVDイベント発症の危険因子ですが、CVD既往・糖尿病の有無にかかわらず、FGF23高値は透析導入前のCVDイベント発症と有意な関係を認めました(図)。

CVD既往・糖尿病の有無にかかわらず、FGF23高値群はFGF23低値群よりもCVDを発症するリスクが高い

 

従来のCVDリスク因子にFGF23を加えると、100人中約7人でCVDリスクが正しく評価し直され、FGF23測定が透析導入前の保存期CKD患者のCVDリスク評価に有用であることが明らかになりました。一方、透析導入後も含めた観察期間全体のCVDイベントと、研究登録時に測定したFGF23値には有意な関連を認めませんでした。FGF23値は腎不全進行とともに上昇すること、および導入時のFGF23値が死亡を予測するとの報告を考えると、FGF23を用いたCKD患者のCVDリスク評価には、導入時などに再測定が必要なのかもしれません。