活性型ビタミンD類似体による腎尿細管間質線維化抑制作用 | 大阪大学腎臓内科

活性型ビタミンD類似体による腎尿細管間質線維化抑制作用

Lab Invest 2012; 92: 1686-97

Maxacalcitol ameliorates tubulointerstitial fibrosis in obstructed kidneys by recruiting PPM1A/VDR complex to pSmad3.

Inoue K, Matsui I, Hamano T, Fujii N, Shimomura A, Nakano C, Kusunoki Y, Takabatake Y, Hirata M, Nishiyama A, Tsubakihara Y, Isaka Y, Rakugi H.

 

腎尿細管間質線維化は進行性腎疾患に共通した病理学的所見であるため、慢性腎臓病の治療戦略を考える上で、同病変を抑制する事はとても重要です。我々は、活性型ビタミンD類似体(22-oxacalcitriol(OCT))が、腎糸球体病変のみならず(Nephrol Dial Transplant 24: 2354-61, 2009)、尿細管間質線維化も抑制することを明らかにしました。尿細管間質線維化病変では、TGF-β1がSmad3をリン酸化(活性化)し、リン酸化Smad3(pSmad3)がTGF-β1発現を誘導する悪循環が形成されます。OCTはSmad3脱リン酸化酵素PPM1AをpSmad3に誘導し、上記悪循環を断つことで尿細管間質線維化抑制作用を発揮します。

 

片側尿管結紮(UUO)モデルで認められる尿細管間質線維化病変が、OCT投与により抑制されました。

 

TGF-β1刺激によりリン酸化されたSmad3は、Smad4と三量体を形成し、コラーゲンなどの線維化関連遺伝子発現を誘導するとともに、TGF-β1の発現も促進します(Smad3-TGF-β1悪循環の形成)。また、TGF-β1刺激によりビタミンD受容体(VDR)とSmad3脱リン酸化酵素(PPM1A)の複合体が形成されますが、同複合体は、OCT非存在下ではpSmad3と結合しません。TGF-β1刺激下にOCTを投与すると、同複合体がpSmad3に誘導され、Smad3が脱リン酸化され、Smad3-TGF-β1悪循環が断たれます。