異所性石灰化抑制因子fetuin-Aの腎臓における役割 | 大阪大学腎臓内科

異所性石灰化抑制因子fetuin-Aの腎臓における役割

Am J Physiol Renal Physiol 2013, 304(6): F751-60.

Retention of fetuin-A in renal tubular lumen protects the kidney from nephrocalcinosis in rats.

Matsui I, Hamano T, Mikami S, Inoue K, Shimomura A, Nagasawa Y, Michigami T, Ohnishi T, Fujii N, Nakano C, Kusunoki Y, Kitamura H, Iwatani H, Takabatake Y, Kaimori JY, Matsuba G, Okoshi K, Kimura-Suda H, Tsubakihara Y, Rakugi H, Isaka Y.

 

Fetuin-Aは肝臓で産生され血中に分泌される異所性石灰化抑制因子です。Fetuin-Aノックアウトマウスでは、腎臓を含む様々な軟部組織に異所性石灰化が生じることが知られていますが、fetuin-Aが腎臓の石灰化を抑制するメカニズムについては良くわかっていませんでした。

我々は、血中のfetuin-Aが糸球体で濾過され、megalin依存性に近位尿細管細胞に取り込まれることを明らかにしました(図1)。副甲状腺ホルモン(PTH)を過剰に投与したラットでは、尿細管腔内のミネラル過剰により腎臓が石灰化しますが(図2)、近位尿細管におけるfetuin-A取り込みを阻害すると、尿細管腔内にfetuin-Aが保持され、腎臓石灰化は抑制されます(図3)。血管平滑筋細胞における知見とあわせると、fetuin-Aを石灰化が始まる部位に集めることが、fetuin-Aによる異所性石灰化抑制に重要であると考えられます。

図1 近位尿細管細胞におけるfetuin-Aの取り込みFetuin-Aを緑、megalinを赤、核を青で示す。
図2 PTH過剰投与により石灰化した腎臓Von Kossa染色で、石灰化部分を黒色で示す。
図3 Fetuin-Aの取り込み阻害で腎臓の石灰化は抑制される図2に比べ、von Kossa陽性領域は減少した。