ステロイド骨粗鬆症におけるMDCTの有用性 | 大阪大学腎臓内科

ステロイド骨粗鬆症におけるMDCTの有用性

J Bone Miner Metab 2014; 32: 271-80

Multidetector-row computed tomography is useful to evaluate the therapeutic effects of bisphosphonates in glucocorticoid-induced osteoporosis.

Inoue K, Hamano T, Nango N, Matsui I, Tomida K, Mikami S, Fujii N, Nakano C, Obi Y, Shimomura A, Kusunoki Y, Rakugi H, Isaka Y, Tsubakihara Y.

 

ステロイド性骨粗鬆症は圧迫骨折を引き起こす重篤なステロイドの副作用であり、その対策は重要です。一般にDEXA法による2次元の骨密度では、ステロイド性骨粗鬆症による骨折リスクを評価できないことが報告されています。 骨強度は骨密度と骨質の2つの要素からなり、骨質を評価するには、骨生検という侵襲的な検査が必要でした。しかし近年CTの撮像技術が発達し、multidetector-row computed tomography (MDCT)により非常に薄いスライス幅の撮像が可能となった事、またCT画像の3D構築が可能となった事から、MDCTによる非侵襲的な検査にて、3次元の骨密度及び骨質の1要素である構造特性に関して、骨の微細構造を評価する事が可能となりました。そこで我々はIgA腎症に対するステロイド治療前と治療開始6ヶ月後で、ステロイド性骨粗鬆症に対する薬剤3種(Bisphosphonate (Bis)、Vitamin D(VD)、Vitamin K(VK))の予防効果について前向きランダム化比較試験を実施しました。MDCTによる海綿骨の微細構造に及ぼす影響を、骨密度、骨代謝マーカーの変化やDEXA法による骨密度測定と比較検討しました。

結果、ステロイド治療前後でDEXA法による骨密度や骨代謝マーカーの変化率は骨粗鬆症薬の3群間で差を認めませんでした (図1 A, B)。

図1 各群におけるステロイド治療前後での変化率 (A) 骨代謝マーカー, (B) DEXA法による骨密度 , (C) MDCTによる Bone volume / Total volume (BV / TV), (D) Star volume (骨微細構造の評価のひとつ)
VD:Vitamin D群 VK:Vitamin K群 Bis:Bisphosphonate群

 

図2は、VD群とBis群に振り分けられたある症例のMDCTによる腰椎の海綿骨の画像を3次元構築し、3次元のBMD値により色分けしたものです。ステロイド治療前後の写真を示していますが、いずれの症例もステロイド治療前後でDEXA法による2次元の骨密度が低下していた (VD群: -0.011 g/cm2, Bis群: -0.055 g/cm2)のに対し、MDCTによる3次元の骨密度はVD群では低下し、Bis群では上昇していました(図2)。

図2 MDCTによる腰椎海綿骨の3次元構築画像 (Bar: 1 cm)
A・B:vitamin D群 (ステロイド投与前 (A)・後 (B))
C・D:Bisphosphonate群 (ステロイド投与前 (C)・後 (D))

 

さらにMDCTによる計測では、D群と比較し、Bis群で有意にステロイドによる海綿骨の骨量及び微細構造の悪化が抑制されていました(図1 C, D)。

以上の結果からMDCTによる海綿骨微細構造の計測は従来の検査法よりBisphosphonate製剤によるステロイド骨粗鬆症予防効果の評価に有用である事が明らかとなりました。