ビタミンDの欠乏は移植腎機能の低下を予測する|大阪大学腎臓内科

ビタミンDの欠乏は 移植腎機能の低下を予測する

J Clin Endocrinol Metab 2014; 99: 527-35

Vitamin d deficiency predicts decline in kidney allograft function: a prospective cohort study.

Obi Y, Hamano T, Ichimaru N, Tomida K, Matsui I, Fujii N, Okumi M, Kaimori JY, Yazawa K, Kokado Y, Nonomura N, Rakugi H, Takahara S, Isaka Y, Tsubakihara Y.

 

身体に必要な栄養型ビタミンDは、体内では主に日光を浴びた皮膚で生成され、その他には魚やキノコなどから経口摂取されています。ビタミンDが骨やカルシウムの代謝に重要な役割を担っていることは良く知られていますが、体内の様々な細胞にも作用するホルモンの一種であることが示されてきました。本研究は 特にビタミンDの免疫調整作用に関して注目し、ビタミンDが欠乏している腎移植患者さんでは 拒絶反応の頻度が高く、腎機能低下速度も早いのではないかという仮説を検証するために行われました。

以前の研究で保存していた患者さんの血清を用いて総25(OH)D濃度を調べたところ、充足している(>20 ng/mL)のは僅か3割にとどまり、7割の症例で不足していることが分かりました。そこで、この血清総25(OH)D濃度と、それまでの拒絶反応のエピソードおよび腎機能低下速度までの関連を検討したところ、移植日と登録日が近いほど関連が強いことが分かりました。患者さんを移植後10年目以降と以前の2群に分けたところ、前者では有意な関連が認められませんでしたが、後者では血清ビタミンD濃度が低いほど拒絶反応の頻度が高く、移植腎機能の低下速度が早かったことが確認されました(図)。

 

腎移植患者さんでは、皮膚癌予防のために日光を避けるよう指示されていることや免疫抑制剤の影響もあり、ビタミンDが欠乏しやすいことが指摘されています。今回の研究結果は、特に移植後早期からサプリメントなどを用いてビタミンD欠乏を補正することで、移植腎予後を改善できる可能性を示しています。一方で、ビタミンDには高カルシウム血症や尿路結石などの副作用が生じる可能性もあります。このビタミンDサプリメントによって得られる便益と潜在するリスクを科学的に検証するため、我々は新しく多施設共同ランダム化比較試験(CANDLE-KIT試験)を立ち上げました。この試験の結果は、2016年末頃にご報告できる予定です。

なお、本研究は当大学の先端移植基盤医療学寄附講座との共同で実施されました。本研究にご協力いただいた先生方には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。