L-リジンと血管石灰化 | 大阪大学腎臓内科

L-リジンは血管石灰化を抑制する

J Am Soc Nephrol 2014; 25: 1954-65

Dietary L-lysine prevents arterial calcification in adenine-induced uremic rats

Shimomura A, Matsui I, Hamano T, Ishimoto T, Katou Y, Takehana K, Inoue K, Kusunoki Y, Mori D, Nakano C, Obi Y, Fujii N, Takabatake Y, Nakano T, Tsubakihara Y, Isaka Y, Rakugi H.

 

血管石灰化は腎不全患者における心血管イベント発症の重要な危険因子ですが、いまだ十分な治療法は確立されていません。アデニン誘導性腎不全ラットにおいて、低蛋白食により血管石灰化が増悪することが知られているため、本研究では蛋白制限時に最も欠乏しやすいアミノ酸であるL-リジンと血管石灰化の関係を検討しました。その結果、L-リジン経口投与によりアデニン誘導性腎不全ラットの血管石灰化が著明に抑制されることが明らかになり(図1)、L-リジン経口投与が血管石灰化に対する新たな予防法となり得る可能性が示されました。

図1:血管全体のAlizarin red染色で、石灰化部位が赤紫色に染色されています。L-リジン投与で血管石灰化が著明に抑制されています。

 

また、L-リジン経口投与による血管石灰化抑制機序として、

(1) 二次性副甲状腺機能亢進症を抑制して適切な骨血管相関を保つ(図2)

(2) 血漿アラニンとプロリン濃度の上昇を介して血管平滑筋細胞のアポトーシスを抑制する

(3) 血漿アルギニンとホモアルギニン濃度の上昇を介してCa/P沈殿形成を抑制する

ことが関与していることを明らかにしました。

図2:大腿骨骨幹部のマイクロCTによる断面像です。L-リジン投与で骨粗鬆症様変化が著明に改善しています。