ARPKD異常によるNEDD4-family E3 ligaseの機能不全がARPKDの臨床像を説明できる可能性

Scientific Reports, 7(7733) PMID: 28798345

NEDD4-family E3 ligase dysfunction due to PKHD1/Pkhd1 defects suggests a mechanistic model for ARPKD pathobiology.

Sato Y, Nakanuma Y, Yamamoto S, Ichimaru N, Takahara S, Isaka Y, Watnick T, Onuchic LF, Guay-Woodford LM, Germino GG

 

研究の背景

常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)は成人に発症する遺伝性疾患で、腎臓や肝臓に嚢胞(のうほう)が形成される。ARPKDは新生児に見られる病気で、腎臓に嚢胞形成が見られる他、さらに本体性高血圧、肝臓の繊維化を伴う。ARPKDとADPKDは、同じような病気であるのに、出現する病態がなぜこのように異なるのかは、これまで不明であった。

図1 PKHD1遺伝子に異常が起こると、ユビキチンリガーゼを制御する、NDFIP2がユビキチンリガーゼを正常に輸送出来なくなり、結果的にのう胞形成、高血圧、肝臓繊維化の病態が引き起こされる。

本研究の成果

貝森らの研究グループでは、モデル動物や患者さんの組織を用いて、ARPKDの原因遺伝子からできるタンパク質分子(PD1)を含む小胞体を詳細に分析した。その過程で、多くのユビキチンリガーゼ(SMURF1, SMURF2, NEDD4-2)を制御する分子NDFIP2がPD1と同じ小胞体に存在し、PD1をコードする遺伝子に異常が起こるとNDFIP2によるユビキチンリガーゼの制御ができなくなり、ユビキチンリガーゼを正常に輸送出来なくなることを発見した。これにより、細胞骨格を制御する分子(RhoA)、腎尿細管で塩分の再吸収を行う分子(ENac)、細胞に繊維質を作らせる分子(TGF-β 受容体)を正常に消去することが出来なくなり、のう胞形成のような細胞骨格の異常、塩分過剰な蓄積による高血圧、肝臓の繊維化を引き起こすと考えられる。

本研究成果の意義

本研究成果により、ARPKDの特徴的な病態である腎臓嚢胞形成、本体性(原因不明の)高血圧、肝臓の繊維化が統一的に説明出来ることになり、今まで治療法の無かった新生児の腎臓難病に対する治療法の確立が期待される。