血液透析患者の血中イオン化マグネシウム濃度とアニオンギャップ

Clin J Am Soc Nephrol. 13(2); 274-281, 2018. PMID: 29180531

Anion Gap as a Determinant of Ionized Fraction of Divalent Cations in Hemodialysis Patients.

Sakaguchi Y, Hamano T, Kubota K, Oka T, Yamaguchi S, Matsumoto A, Hashimoto N, Mori D, Obi Y, Matsui I, Isaka Y.

 

血液中のマグネシウムは、同じ二価陽イオンのカルシウムと同様に、アルブミンや陰イオン(リン酸、重炭酸、クエン酸など)と結合しています。これらの陰性荷電物質と結合していない遊離のイオン化マグネシウムが生理活性を有しており、健常人では血中マグネシウム全体の60-70%程度がイオン化マグネシウムとして存在しています。一方、血液透析患者の場合、上記の陰性荷電物質の血中濃度がしばしば異常値をとるため、イオン化マグネシウム分画の割合が変化している可能性があります。

そこで我々は血液透析患者さん118例を対象に、血中イオン化マグネシウム濃度の測定を行いました。その結果、透析前の血中総マグネシウムに占めるイオン化マグネシウムの割合が51%と大きく低下していることが明らかになりました。また、血中総マグネシウム濃度が基準範囲を上回っている患者さんの割合は62%であったのに対し、イオン化マグネシウム濃度が基準範囲を上回っている患者さんの割合はわずか13%でした【図】。逆に言えば、約90%の血液透析患者さんでは生理活性を持つイオン化マグネシウムの血中濃度は正常範囲内かまたはそれよりも低値でした。

なぜ透析患者さんのイオン化マグネシウムの割合は低下しているのでしょうか?この点についてさらに検討を進めたところ、血中リン濃度やアニオンギャップが高い患者さんほど、イオン化マグネシウムの割合が低下していることが分かりました。つまり、透析患者さんの血中に蓄積するリン酸などの陰イオンがマグネシウムと結合することでイオン化マグネシウムの減少に寄与している可能性が示唆されました。実際、これらの陰イオンが除去される透析後には、イオン化マグネシウムの割合は55%に上昇しました。

本研究結果から、特にリンやアニオンギャップが高い血液透析患者さんにおいては、血中総マグネシウム濃度を、基準範囲を超えて、高めに保たなければ、生理活性を持つイオン化マグネシウムの血中濃度を維持できないことが明らかになりました。