蛋白カルバミル化は血管石灰化を悪化させる

Kidney Int. 2018 Apr 28. PMID: 29716796

Protein carbamylation exacerbates vascular calcification.

Mori D, Matsui I, Shimomura A, Hashimoto N, Matsumoto A, Shimada K, Yamaguchi S, Oka T, Kubota K, Yonemoto S, Sakaguchi Y, Takahashi A, Shintani Y, Takashima S, Takabatake Y, Hamano T, Isaka Y.

 

カルバミル化は尿素により引き起こされる蛋白翻訳後修飾です。ヒトにおいて血中カルバミル化蛋白濃度が高いと生命予後が悪化することが知られていますが、蛋白カルバミル化と生命予後悪化が相関する原因はこれまで不明でした。血管石灰化は生命予後悪化と密接に関わる病態であるため、我々は本研究において蛋白カルバミル化と血管石灰化の関わりについて検討しました。その結果、蛋白カルバミル化が血管石灰化を増悪させる事が明らかになりました(図1)。我々は、蛋白カルバミル化が血管石灰化を悪化させるメカニズムとして、異所性石灰化抑制因子であるピロリン酸を産生するectonucleotide pyrophosphate/phosphodiesterase 1 (ENPP1) の発現抑制が重要であることを見出しました。ENPP1自体はカルバミル化されませんが、ミトコンドリア蛋白であるATP synthaseのカルバミル化によりミトコンドリア酸化ストレスが生じ、この酸化ストレスによりENPP1の発現が抑制されることも見出しました。我々の研究は、尿素が酸化ストレスを生じさせるメカニズム、および尿素が生命予後に関わる病態を生じさせるメカニズムを明確に示したものです。今後は、蛋白カルバミル化を抑制する介入方法を確立し、治療に役立てたいと考えています。

図1:ラット大動脈のvon Kossa 染色です。石灰化部分は黒く染色されています。蛋白カルバミル化により血管石灰化が悪化しました。

図2:蛋白カルバミル化により血管石灰化が悪化するメカニズムです。蛋白カルバミル化はミトコンドリア酸化ストレスを増大させます。ミトコンドリア酸化ストレスは、石灰化抑制因子ピロリン酸(PPi)の産生酵素であるENPP1の発現を抑制し、血管石灰化を促進します。