心肥大は血清fibroblast growth factor 23 (FGF23)濃度を上昇させる

Kidney Int. 2018 May 8. PMID: 29751971

Cardiac hypertrophy elevates serum levels of FGF23.

Matsui I, Oka T, Kusunoki Y, Mori D, Hashimoto N, Matsumoto A, Shimada K, Yamaguchi S, Kubota K, Yonemoto S, Higo T, Sakaguchi Y, Takabatake Y, Hamano T, Isaka Y.

 

血中FGF23濃度高値と左室肥大は非常に密接な関係を持っています。これまで、この両者の密接な関係は、(1) FGF23がα-klotho依存性にナトリウム再吸収を促進し高血圧を引き起こすことにより生じる左室肥大、あるいは(2) 非常に高濃度のFGF23がα-klotho非依存性に心筋細胞においてcalcineurin-NFAT系を活性化することにより生じる左室肥大、という2つのメカニズムにより説明されてきました。これらはいずれもFGF23→心肥大向きの因果関係が存在することを示しています。しかしながら、血圧を補正してもFGF23と左室肥大に密接な関係がある事や、血中FGF23濃度が正常範囲内の者を対象に検討しても血中FGF23濃度が高いと左室肥大が多い事は、これら2つのメカニズムだけで両者の密接な関係を説明できないことを示唆していました。我々は前述のFGF23→心肥大向きではなく心肥大→FGF23向きの因果関係が存在するのではないかと考え、心筋細胞特異的calcineurin-A活性化マウスや大動脈縮窄モデルマウスなどを用いた検討を行い、肥大心筋細胞においてcalcineurin-NFAT依存性にFGF23産生が増加することを明らかにしました(図)。心筋細胞特異的calcineurin-A活性化マウスでは骨におけるFGF23発現量が上昇していないにも関わらず血清FGF23濃度が高値になりました。一方、心筋細胞特異的calcineurin-A活性化マウスのリン代謝は野生型マウスと全く差がありませんでした。我々は、心筋細胞特異的calcineurin-A活性化マウスでは血中抗利尿ホルモン濃度が上昇しており、抗利尿ホルモン高値が腎臓におけるFGF23抵抗性を生じさせることを明らかにしました。我々の研究成果は、心肥大→FGF23向きの因果関係が存在することを明確に示したものです。また抗利尿ホルモンにより誘導されるFGF23抵抗性は、骨ミネラル代謝に新たな治療オプションを提供する可能性があると考えています。

心筋細胞特異的calcineurin-Aトランスジェニックマウス(CnA-TG)は顕著な心肥大を呈します。肥大した心筋細胞においてFGF23産生が亢進します。