CLCN5遺伝子のイントロン領域に新規変異を有し、重篤な骨軟化症を合併したデント病の一例

Intern Med. 2018 Aug 10. PMID: 30101934

A Case of Severe Osteomalacia with Dent Disease Caused by a Novel Intronic Mutation of the CLCN5 gene.

Matsumoto A, Matsui I, Mori T, Sakaguchi Y, Mizui M, Ueda Y, Takahashi A, Doi Y, Shimada K, Yamaguchi S, Kubota K, Hashimoto N, Oka T, Takabatake Y, Sohara E, Hamano T, Uchida S, Isaka Y.

 

デント病は稀な遺伝疾患で、その約60%はX染色体上のCLCN5遺伝子変異が原因とされています。主な症状は尿蛋白・高カルシウム尿症、腎石灰化、腎機能低下であり、日本人では骨軟化症を呈することは稀です。

臨床経過などから本症例の腎不全の原因疾患としてデント病を疑ったため、遺伝子検査を東京医科歯科大学腎臓内科のご協力の下に行ったところ、CLCN5遺伝子のイントロン領域に新規の変異を認めました。図1に示すように、本症例では入院時に重度の骨密度低下を認めましたが、天然型および活性型ビタミンD製剤の投与および血清カルシウム濃度の適正な管理により、骨密度は改善しました。

図1. 骨密度(T-score)の推移。入院前は低下傾向であった骨密度は、治療により改善した。

CLCN5遺伝子の変異は、腎近位尿細管細胞の細胞内小器官の酸性化能を障害することが知られています。我々は、患者さんの尿から採取した尿細管細胞を用いて細胞内小器官の酸性化能が障害されていることも確認しました (図2)。

図2.本症例では正常対照症例と比較し、尿細管細胞の酸性化障害を認める(酸性化部位が赤色で示される)。

日本では骨軟化症を伴うデント病は稀とされていますが、デント病の診療においては骨塩量にも配慮することが必要と考えられます。