保存期CKD患者の冠動脈石灰化に対する酸化マグネシウム/球形吸着炭の効果 – 2×2 ランダム化比較試験 –

J Am Soc Nephrol. 2019. Apr 29. PMID: 31036759

A Randomized Trial of Magnesium Oxide and Oral Carbon Adsorbent for Coronary Artery Calcification in Predialysis CKD.

Sakaguchi Y, Hamano T, Obi Y, Monden C, Oka T, Yamaguchi S, Matsui I, Hashimoto N, Matsumoto A, Shimada K, Takabatake Y, Takahashi A, Kaimori JY, Moriyama T, Yamamoto R, Horio M, Yamamoto K, Sugimoto K, Rakugi H, Isaka Y.

 

冠動脈石灰化は透析患者だけでなく保存期CKD患者にも高頻度に認められ、心血管疾患・死亡リスクの上昇と密接に関わるため、その対策は重要です。近年の基礎研究結果から、血管石灰化の抑制効果を持つ物質としてマグネシウムが注目されています。また、インドキシル硫酸などの尿毒症物質が血管石灰化を進行させることが動物実験で示唆されています。

そこで、我々は、①経口マグネシウム補充、および、②球形吸着炭による尿毒症物質除去、が冠動脈石灰化の進行を抑制するか否かについて、非盲検ランダム化比較試験による検証を行いました。

対象は保存期CKD stage 3-4症例のうち、血管石灰化のリスクが高い患者(糖尿病、心血管疾患既往、高LDL血症、現在喫煙中)としました。下図の通り対象者を、①酸化マグネシウム投与群またはその対照群、②球形吸着炭投与群またはその対照群、にランダム化しました。

試験開始時と2年後に、冠動脈CTによる冠動脈石灰化スコア(CACS)を計測し、2年間でのスコア上昇率を主要アウトカムとしました。

当初、症例数は250例を予定していましたが、125例目が試験終了した時点で実施した中間解析において、酸化マグネシウムによる有意な効果が確認されました。すなわち、対照群ではスコア上昇率が39.5%であったのに対し、酸化マグネシウム群では11.3%と有意に抑制されていました(下図)。この中間解析におけるP値が事前に定めた有意水準を下回ったため、本研究はこの時点で早期中止となりました。球形吸着炭群については、対照群と比してスコア上昇率の中央値としてはやや低下する傾向も見られるものの、有意な効果は認められませんでした。

本研究結果から、保存期CKD患者に対する酸化マグネシウム投与が冠動脈石灰化の進行抑制に有用であることが示されました。今後、マグネシウムによる心血管イベントの抑制効果についてさらに知見を集積していくことが課題となります。