内因性エリスロポエチン濃度とeGFR低下

Sci Rep. 2019 Oct 16;9(1):14871.

Low erythropoietin levels predict faster renal function decline in diabetic patients with anemia: a prospective cohort study.

Fujita Y, Doi Y, Hamano T, Hatazaki M, Umayahara Y, Isaka Y, Tsubakihara Y.

 

エリスロポエチン(EPO)は主に腎臓で作られる造血を促すホルモンですが、糖尿病患者においては非糖尿病患者より低値になりやすいことが知られています。またEPO低値は糖尿病患者に貧血が多い一つの原因とされています。これまで内因性EPO濃度と腎予後との関連を報告した研究はほとんどありませんでした。

本研究では大阪府立急性期・総合医療センター糖尿病内分泌内科外来に通院中で、貧血を伴う2型糖尿病患者339人を2年間前向きに追跡し、EPOレベルと腎機能(eGFR)低下との関連を検討しました。

貧血にも関わらずEPO濃度が基準値上限23.7IU/Lを下回る場合を“相対的なEPO欠乏”と定義すると、ベースライン時の解析では慢性腎臓病ステージの進行に伴い、その割合が増加しましたが、非慢性腎臓病患者(non-CKD)においても約60%が相対的なEPO欠乏を呈していました。

表1. 貧血合併2型糖尿病患者における相対的EPO欠乏と鉄欠乏の有病率

縦断解析では、EPO濃度は年間eGFR低下速度と正の相関があり、それはベースラインのヘモグロビン濃度やeGFRなどで補正してもその関係は維持されました。制限3次スプライン回帰モデルでは、特にEPO濃度が基準値上限23.7IU/Lあたりを下回ってくると急速なeGFRを認めやすいことがわかりました。

表2. EPO濃度と年間eGFR低下速度との関連

本研究結果から、2型糖尿病患者においてEPO分泌低下が糖尿病性腎症出現より早期に発現しうることがわかり、EPO濃度が低いと急速にeGFRが低下しやすいことが明らかになりました。今後非糖尿病患者においても同様の知見を認めるか、またoutcomeをeGFR低下より重要な透析導入などに変更し検証していく必要があると考えます。