腎移植患者における血清リン濃度は副甲状腺ホルモン濃度と腎予後との関連を修飾する

Sci Rep 10, 13766 (2020). PMID: 32792668

Serum phosphate levels modify the impact of parathyroid hormone levels on renal outcomes in kidney transplant recipients.

Doi Y, Hamano T, Ichimaru N, Tomida K, Obi Y, Fujii N, Yamaguchi S, Oka T, Sakaguchi Y, Matsui I, Kaimori JY, Abe T, Imamura R, Takahara S, Tsubakihara Y, Nonomura N, Isaka Y.

 

慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(chronic kidney disease-mineral and bone disorder、CKD-MBD)の重要な血液パラメータとして、カルシウム、リン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ヒト線維芽細胞増殖因子23(FGF23)、25-hydroxyvitamin D (25D)、 1,25-dihydroxyvitamin D (1,25D)などがあり、それぞれ移植腎予後と関連しうることが報告されています。しかしながら、これまでそれらのパラメータを同時に評価し、相互作用に関して報告した研究はありませんでした。

本研究では、井上病院通院中の腎移植後1年以上経過した263人を10年以上の長期間に渡ってフォローし、baselineのCKD-MBDパラメータが移植腎予後に与える影響について検討しました。OutcomeをeGFRの50%低下もしくは他の腎代替療法への移行と定義したところ、血清リン、PTH高値、1,25D低値がそれぞれ独立して腎予後不良と有意に関連していることがわかりました(下図)。

またPTH高値と腎予後との関連は血清リン濃度で修飾され(Pinteraction<0.1)、血清リン濃度が低ければPTH高値でも移植腎予後は悪くないことが示されました(下図)。

以上の結果から、CKD-MBDパラメータの中でも特に血清リン、PTH、1,25Dが重要であること、またこれまでにもPTH高値が移植腎予後不良と関連するという報告はありましたが、今回の研究からPTH高値が直接的に移植腎機能を悪化させるというよりは、PTHによるリン排泄が十分行えないこと(尿細管障害)が長期腎予後に関連しているということが示唆されました。今後血清リン、PTH、1,25Dへの介入により、移植腎予後が改善しうるのかについて知見を集積していく必要があります。