腎移植後早期からの天然型ビタミンD3補充と移植腎機能;プラセボ対照無作為化比較試験

Am J Transplant. 2021 Feb 10. PMID: 33565715

The effect of cholecalciferol supplementation on allograft function in incident kidney transplant recipients: A randomized controlled study.

Doi Y, Tsujita M, Hamano T, Obi Y, Namba-Hamano T, Tomosugi T, Futamura K, Okada M, Hiramitsu T, Goto N, Nishiyama A, Takeda A, Narumi S, Watarai Y, Isaka Y.

 

腎移植患者では皮膚癌リスク軽減のため日光暴露回避が推奨されている他、ステロイド使用に伴うビタミンD異化亢進などから、特に高用量のステロイドを使用する腎移植後早期にビタミンD不足 (血中25[OH]D濃度低値)が多いことが知られています。また腎移植患者を対象とした観察研究では、ビタミンD不足と推算糸球体濾過量 (eGFR)低下、移植腎線維化進行との関連が報告されています。今回我々は、天然型ビタミンD3 (Cholecalciferol) 補充により、移植腎機能が改善するかどうかについて、二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験による検証を行いました。

名古屋第二赤十字病院で施行された生体腎移植後1か月の患者で、eGFR ≥30 mL/min/1.73 m2を対象とし、補正カルシウム濃度 ≥11 mg/dLの患者は除外しました。対象患者を天然型ビタミンD3 4000 IU/日もしくはプラセボに1:1の割合で割り付け、移植後12か月までの11か月間の介入を行いました。主要評価項目として移植後12か月時点でのeGFR変化量、副次評価項目として移植腎間質線維化・尿細管萎縮の程度、アルブミン尿の変化量などを設定しました。

試験期間中に193人が無作為化され、ベースライン時の年齢、eGFR、25(OH)D濃度はそれぞれ52歳、46 mL/min/1.73 m2、10 ng/mL (中央値)でした。試験終了時天然型ビタミンD3群では25(OH)D濃度が40 ng/mL(中央値)まで上昇しましたが、プラセボ群ではほぼ変化を認めませんでした。主要評価項目であるeGFR変化量は2群間で差を認めませんでした(群間差:−0.7 mL/min/1.73 m2 [95%信頼区間 −3.3 to 2.0], P = 0.63), 下表)。

一方層別解析ではeGFR <45 mL/min/1.73 m2の群で、天然型ビタミンD群で有意にeGFRが低いという結果でした(群間差: eGFR-4.3 mL/min/1.73 m2 [95%信頼区間 −7.3 to −1.3])。副次評価項目の腎間質線維化・尿細管萎縮の程度やアルブミン尿の変化量については群間差を認めませんでした。

本研究結果は、生体腎移植後早期の患者に腎機能改善目的での天然型ビタミンD3投与を支持しないものでした。またeGFR 低値の患者における天然型ビタミンD3投与は極めて注意が必要であると考えられました。