進行した慢性腎臓病患者において高アニオンギャップは腎予後不良と関連する

Am J Kidney Dis. 2021 Jul 15. PMID: 34280508

Association of Time-Updated Anion Gap With Risk of Kidney Failure in Advanced CKD: A Cohort Study.

Asahina Y, Sakaguchi Y, Kajimoto S, Hattori K, Doi Y, Oka T, Kaimori JY, Isaka Y

 

慢性腎臓病(CKD)患者では腎機能の低下に伴い、しばしば代謝性アシドーシスを合併します。代謝性アシドーシスはアニオンギャップ(AG)に基づいて高Cl性アシドーシスかAGアシドーシスに分類されます。しかしながら、これまでの臨床研究や各種ガイドラインでは両者は区別されておらず、特にAGと予後の関係については十分検討されてきませんでした。そこで我々は、AGと末期腎不全・生命予後の関連について解析いたしました。

対象は当院腎臓内科外来の保存期CKD患者1,168例です。
AGとeGFRの関係について解析すると、高AG(AG≥9.2)の有病率はCKDstageG4以降で急激に増加していることが分かりました(図1)。

図1 高AGの有病率とeGFRの関係

生存解析を行うにあたり、AGと末期腎不全との時間依存性交絡に対処するため、marginal structural modelを用いた解析を行いました。
追跡期間3.1年(中央値)の間に317例が末期腎不全、146例が死亡に至りました。年齢、性別、既往歴、血液検査所見など様々な臨床的要因で調整を行った結果、高AGは腎予後不良及び生命予後不良と関連しました。感度分析として、10以上や12以上を高AGと定義した解析や、アルブミン補正AG、アルブミン・カリウム・リン・pHによる補正AG(full-adjusted AG)による解析を行いましたが、いずれも高AGは腎予後不良及び生命予後不良と関連しました (図2)。このことから、CKD患者のリスク評価にあたり、AGにも注目する必要があると考えます。

図2 高AGと末期腎不全及び全死亡の関連

今回の検討で、高AGと腎予後不良の関連はpHとは独立していました。従って、アルカリ療法によるアシデミアの解除のみでは、高AGの腎予後への影響は軽減されない可能性が示唆されました。AG低下を目指す治療が今後必要になるかもしれません。