マッソントリクローム染色標本を用いてポドサイト足突起や尿細管ミトコンドリア形態を定量評価する
Kidney Int Rep. 2021 May 1;6(7):1923-1938. PMID: 34307987
Quantitative analyses of foot processes, mitochondria, and basement membranes using elastica Masson- and periodic-acid-Schiff-stained kidney sections by Structured Illumination Microscopy.
Matsumoto A, Matsui I, Katsuma Y, Yasuda S, Shimada K, Namba-Hamano T, Sakaguchi Y, Kaimori JY, Takabatake Y, Inoue K, Isaka Y.
腎臓病の発症および進展には、糸球体上皮細胞の足突起癒合や尿細管細胞のミトコンドリア障害などが関与しています。しかし、これらの構造変化は非常に微細なため、日常臨床で使用する光学顕微鏡では観察できません。本研究では、患者さんの腎臓病診断に用いられたマッソントリクローム染色腎生検プレパラートをそのまま超解像度顕微鏡で観察することにより、上述の腎微細構造変化が観察可能であることを明らかにしました。さらに、フーリエ変換を用いてこれらの構造変化を定量評価する方法を開発しました(https://github.com/NephrologyOsakaUniv/SuperResMicroscopy_2021)。また、我々の方法を用いて尿細管細胞のミトコンドリア形態変化を定量評価すると、腎生検後の腎機能低下速度を予測できることが明らかになりました。本研究成果を臨床に応用すると、腎生検組織から患者さん個々人の病態をこれまで以上に詳細に把握できる可能性があります。
図1:マッソントリクローム染色標本を構造化照明顕微鏡法で観察し、561 nmおよび640 nmレーザーで得られた画像をそれぞれ緑およびマゼンタに色付けしました。糸球体上皮細胞足突起の複雑に入り組んだ正常構造が尿蛋白の多い症例では破綻しています。この足突起変化をフーリエ変換を用いて定量したところ尿蛋白量と良好な相関が得られました。
図2:マッソントリクローム染色腎生検組織を561 nm励起して構造化照明顕微鏡法で観察しました。ミトコンドリアの櫛状の正常構造が尿細管間質障害を伴う症例では破綻しています。この変化をフーリエ変換を用いて定量評価したところ、腎生検後の腎機能の低下速度と相関しました。