腎移植後早期からの天然型ビタミンD3補充は骨密度低下を減弱させる

J Bone Miner Res. 2021 Nov 8. doi: 10.1002/jbmr.4469. PMID: 34747516

Cholecalciferol supplementation attenuates bone loss in incident kidney transplant recipients: A prespecified secondary endpoint analysis of a randomized controlled trial.

Makoto Tsujita, Yohei Doi, Yoshitsugu Obi, Takayuki Hamano, Toshihide Tomosugi, Kenta Futamura, Manabu Okada, Takahisa Hiramitsu, Norihiko Goto, Yoshitaka Isaka, Asami Takeda, Shunji Narumi, Yoshihiko Watarai.

 

腎移植患者ではステロイド使用やビタミンD不足、続発性副甲状腺機能亢進症などから移植後早期に骨密度が低下し、骨折が多いことが報告されています。今回我々は、天然型ビタミンD3 (Cholecalciferol) 補充の副甲状腺機能や骨代謝に与える影響を、二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験の事前に規定した副次評価項目として評価しました。

名古屋第二赤十字病院で施行された生体腎移植後1か月の患者で、eGFR ≥30 mL/min/1.73 m2を対象とし、補正カルシウム濃度 ≥11 mg/dLの患者は除外しました。対象患者を天然型ビタミンD3 4000 IU/日もしくはプラセボに1:1の割合で割り付け、移植後12か月までの11か月間の介入を行いました。主要評価項目として移植後12か月時点でのeGFR変化量で2群間に差を認めませんでしたが(Am J Transplant. 2021 Sep;21(9):3043-3054)、副次評価項目として骨密度、whole PTH、骨代謝マーカーの変化を設定しました。

試験期間中に193人が無作為化され、ベースライン時の年齢、eGFR、25(OH)D濃度はそれぞれ52歳、46 mL/min/1.73 m2、10 ng/mL (中央値)でした。44%がT score -1.0未満で定義される骨量減少患者でした。試験終了時天然型ビタミンD3群では25(OH)D濃度が40 ng/mL(中央値)まで上昇しましたが、プラセボ群ではほぼ変化を認めませんでした。

移植前から移植後12カ月の間に腰椎骨密度はプラセボ群で1.9%、天然型ビタミンD3群で0.2%低下しましたが、群間差は1.7% (95%信頼区間, 0.1 to 3.3)と天然型ビタミンD3群で有意に腰椎骨密度減少を減弱させました(下図)。また特に骨量減少患者(Osteopenia/Osteoporosis)で群間差3.5% (Pinteraction <0.05)と天然型ビタミンD3の大きな効果を認めました(下図)。橈骨遠位1/3骨密度の変化は群間差を認めませんでした。

移植後1カ月から移植後12カ月でWhole PTHはでプラセボ群も移植後の変化として28%低下しましたが、天然型ビタミンD3群で39%低下し、群間差は−15%(95%信頼区間, −25 to −3, P = 0.02)と有意なものでした(下図)。特に腎機能が保たれている患者や血清カルシウム濃度、25(OH)D濃度が低い患者で大きな天然型ビタミンDのPTH低下作用が認められました(それぞれPinteraction <0.05)。天然型ビタミンD3は骨代謝マーカー(TRACP-5b、BAP)や血清カルシウム、リン濃度には有意な影響を与えませんでした。

本研究結果から、生体腎移植後早期の患者に天然型ビタミンD3を投与すると、血清カルシウム濃度を上昇させることなく腰椎骨密度低下を減弱させること、副甲状腺機能を抑制することが示されました。今後はより長期的な視点で、骨折抑制効果などを評価することが望まれます。