血液透析患者の透析中低血圧と身体活動性の関連

J Nephrol 2022 Jan 16. PMID: 35034338

Intradialytic hypotension and objectively measured physical activity among patients on hemodialysis

Hattori K, Sakaguchi Y, Kajimoto S, Asahina Y, Doi Y, Oka T, Kaimori JY, Isaka Y

 

透析患者の身体活動量は一般人口に比して顕著に低下しています。低身体活動はQOL低下やサルコペニアの原因になるだけでなく生命予後不良と関連するため、その対策は重要です。しかし、低身体活動に対する介入可能な危険因子はよく知られていません。

透析低血圧は血液透析施行中に血圧が低下する現象です。透析低血圧は透析後の疲労感をもたらすことから、低身体活動とも関連する可能性があります。そこで我々は血液透析患者の透析低血圧と透析施行後の身体活動量の関連を検討しました。

対象は50歳以上の外来通院維持透析患者192例です。身体活動量計 (Active style Pro HJA-750c; オムロン社)を27日間装着し、透析後と透析翌日の歩数および中高強度身体活動(MVPA:3METs以上の活動)を定量化しました(図1)。

図1:研究デザイン

延べ1,938回の透析中の血圧データと歩数・MVPAとの関連を線形混合効果モデルにより解析しました。その結果、透析中の様々な血圧パラメーターのうち最低拡張期血圧が透析後および透析翌日の低身体活動と最も強く関連することが判明しました(図2)。この関連は年齢、性別、糖尿病、心血管合併症、透析間体重増加、炎症、栄養状態や筋肉量の指標で補正後も維持されました。

図2:透析中の各種血圧パラメーターと歩数の関連

ランダム切片・ランダムスロープモデルによる解析でも最低拡張期血圧は低身体活動量と関連しました(図3)。各々の症例において最低拡張期血圧が低い透析日の透析後やその翌日には身体活動が低下していると解釈できます。個人内で変動しない要因(年齢、性別、糖尿病、等)の影響をできるだけ排除した解析と言えます。

図3:ランダム切片・ランダムスロープモデル

非透析日の歩数4000歩未満と定義した低身体活動は149人(78%)に認められました。低身体活動の識別能は透析中最低拡張期血圧が最も良好であり(ROC-AUC 0.66)、カットオフ値 68mmHgとした時の感度66%、特異度67%でした。(図4)

図4:低身体活動に対する各種血圧パラメーターのROC-AUC

KDIGOによる透析低血圧の定義は最低収縮期血圧に基づいていますが(最低収縮期血圧90 mmHg未満)、本研究結果は最低拡張期血圧の臨床的意義を見直す必要性があることを示唆しています

最低拡張期血圧低値への介入が身体活動量の維持・向上に有用であるかについて、今後の研究の発展が期待されます。