高齢血液透析患者における歩行機能とバランス能力に対するwhole body vibrationの効果

Clin J Am Soc Nephrol. 2023;18(1):84-90. PMID: 36719160

A Randomized Controlled Trial of Whole-Body Vibration on Gait Ability and Balance among Older Hemodialysis Patients.

Yuta Asahina, Yusuke Sakaguchi, Sachio Kajimoto, Koki Hattori, Tatsufumi Oka, Jun-Ya Kaimori, Naoki Kashihara, Yoshitaka Isaka

 

血液透析患者は非透析人口と比較して身体機能が著しく低下しており、特に歩行速度が遅く、転倒が多いことが知られています。歩行機能低下や転倒はQOL低下・寝たきりの原因となるだけでなく、医療資源の負担としても重大です。高齢化が進む血液透析患者にとって安全かつ継続的に実践可能な運動療法を確立し普及させることは喫緊の課題です。

そこで我々は高齢血液透析患者が一人で安全に施行できる下肢筋力トレーニングとしてwhole body vibration(WBV)に着目しました。WBVは振動するプレートの上に乗ってもらうことで、下肢筋肉や腹筋・背筋が自然に収縮・弛緩することを利用したトレーニングです。WBVは地域在住高齢者の歩行速度やバランス能力を改善させることが報告されていますが、透析患者におけるエビデンスは皆無でした。

本ランダム化比較試験は大阪府の一般血液透析施設に通院中である65歳以上の血液透析患者を対象に週3回のWBVを12週間実施し、歩行機能やバランス能力が改善するか否かを評価しました。

同意取得した98例をWBV群 49例、対照群 49例にランダム割付しました。12週間の試験期間中、トレーニング継続拒否で離脱した患者は僅か1例であり、WBV群の86%にあたる42例が12週間の全トレーニングを完遂しました。つまりWBVは理学療法士など専用スタッフのいない一般の血液透析施設でも十分に実施、継続可能なトレーニングであると言えます。

しかし残念ながら、WBVは歩行機能やバランス能力の指標であるtime up and go test、開眼片脚立位試験、30秒椅子立ち上がり試験をいずれも改善させませんでした(図1)。本試験は12週間と比較的短期間の試験であったことやvibrationの強度を弱く設定したことが原因である可能性があります。WBVが高齢血液透析患者の身体機能改善に有効であるかどうか今後更なる検証が必要です。