Canagliflozinの腎保護効果媒介因子は患者背景により異なる-CREDENCE trial-

Diabetes Obes Metab. 2023 Jun 29. doi: 10.1111/dom.15191. PMID: 37385955

Mediators between canagliflozin and renoprotection vary depending on patient characteristics: Insights from the CREDENCE trial.

Yohei Doi, Takayuki Hamano, Satoshi Yamaguchi, Yusuke Sakaguchi, Jun‐Ya Kaimori, Yoshitaka Isaka

 

糖尿病性腎臓病患者におけるSGLT2阻害薬の腎保護効果は確立されていますが, その機序に関しては十分にわかっていません。今回CREDENCE trial (N Engl J Med 2019; 380:2295-2306)のデータを使用して、SGLT2阻害薬の一つであるCanagliflozinの腎保護媒介因子を検討しました。

CREDENCE trialは2型糖尿病でRA系阻害薬を内服しており, eGFR 30-90 mL/min/1.73 m2, 尿アルブミンクレアチニン比(UACR) 300-5000 mg/gの患者を対象とし, Canagliflozinの腎保護効果を検証したプラセボ対照大規模臨床試験です。今回の研究における複合腎イベントはCr2倍化, eGFR <15 mL/min/1.73 m2, 腎代替療法, 腎関連死と定義し, 媒介因子の候補は52週時に測定された42種類のバイオマーカーにおけるbaselineからの変化としました。①Canagliflozinがプラセボと比較し, 有意にバイオマーカーを変化させるかを混合効果モデルで, ②バイオマーカーの変化が有意に複合腎イベントと関連するかをCox回帰分析で検討し, ①②を満たしたバイオマーカーの変化に関して媒介割合を算出しました。結果ヘマトクリット(47%), ヘモグロビン濃度(41%), 赤血球数(40%), UACRの変化(29%)がCanagliflozin の有意な腎保護媒介因子であることが分かりました。赤血球パラメータの中で最も媒介割合の高かったヘマトクリットとUACRの2つに注目してサブグループ解析を行ったところ, 特にBaseline UACR ≧3000 mg/g以上の群や女性において, ヘマトクリットの媒介割合が低く(それぞれ17%、23%)、UACRがより重要な媒介因子になることが示唆されました(それぞれ37%、42%, 図1)。

図1: Canagliflozinの腎保護効果媒介因子は患者背景により異なる

次に重要な媒介因子であるヘマトクリット, UACRの変化がCanagliflozin使用後の薬効指標として役立つかどうかを検討しました。まずプラセボ群と比較し、Canagliflozin群で52週後にヘマトクリットが上昇し, UACRが低下する割合は高く(43% vs 14%, 図2A)、ヘマトクリットが低下し、UACRが上昇する割合は低下することがわかりました(12% vs 33%, 図2A)。次に52週後のヘマトクリット、UACRの変化で分類したCanagliflozin群の4グループに関して, プラセボ群をreferenceとして腎予後を検討しました。その結果Canagliflozin群でヘマトクリットが上昇し, UACRが低下する群の腎予後は極めて良好で(HR 0.14; 95%CI 0.08-0.25, 図2B)、逆にヘマトクリットが低下し、UACRが上昇する群の腎予後は極めて不良であることが分かりました(HR 2.03; 95%CI 1.46-2.83, 図2B)。

図2A: Canagliflozin群、プラセボ群別の52週時におけるヘマトクリット、UACRの変化
図2B:Canagliflozin群における52週時のヘマトクリット、UACRの変化と腎予後との関連(プラセボ群がreference)

本研究結果から, Canagliflozin腎保護媒介因子は赤血球パラメータとUACRの変化が重要であるが, 患者背景によりその媒介割合は変化すること, またヘマトクリットとUACRの変化はCanagliflozinの有効性指標となりうることが示されました。今後は52週よりも早期の段階でも同様に有効性の指標になるかどうかに関して評価することが望まれます。