CKD患者における腎間質内好酸球集簇と腎予後の関連

Clin J Am Soc Nephrol. 2023 Aug 28. doi: 10.2215/CJN.0000000000000277. PMID: 37639279

Interstitial Eosinophilic Aggregates and Kidney Outcome in Patients with CKD.

Koki Hattori, Yusuke Sakaguchi , Tatsufumi Oka, Yuta Asahina, Takayuki Kawaoka, Ryohei Yamamoto, Isao Matsui, Masayuki Mizui, Jun-Ya Kaimori, Yoshitaka Isaka

 

腎間質内好酸球集簇(IEA)は薬剤性尿細管間質性腎炎などの特定の疾患だけでなく、糖尿病性腎症や糸球体腎炎など多様な腎臓病で観察される。IEAは間質線維化や尿細管萎縮と相関することが知られているが、予後との関連は明確ではなかった。本研究では、1) 腎生検所見におけるIEAの有無と腎転帰との関連を評価し、2) 保存期CKD患者において、IEAのサロゲートとして同定された血中好酸球数と腎転帰との関連を検討した。

(1)腎生検コホート
2009年から2021年に当科で腎生検を施行した563症例の後方視的コホート研究である。IEAはH&E染色で5個/HPF以上の間質内好酸球の存在と定義した(図1)。

図1:腎間質内好酸球集蔟:IEA
(黄色の矢印が好酸球を示す)

IEAは17%の症例に存在した。糖尿病性腎症が病因として最も高頻度であったが、他の様々な腎疾患にも認められた。IEAの86%が皮質内に観察され、そのうち80%において周囲に間質線維化が確認された。1病変あたりの好酸球数の中央値は7個[5-10]であった。IEAの無い症例に比し、IEAのある症例では、間質線維化、尿細管萎縮、動脈硬化のスコアが高値であったが、糸球体硬化のスコアは有意差を認めなかった(図2)。

図2:IEAの有無と組織学的スコアの比較

IEAの存在と関連する因子をLASSO回帰で探索したところ、血中好酸球数、糖尿病、eGFR、尿蛋白・Cre比の4変数が同定された。このうち血中好酸球数がIEAの存在と最も強く関連していた

追跡期間3.6年(中央値)の間に、腎複合アウトカム(eGFR 40%以上低下または腎代替療法開始)はIEAを有する96例中66例(57%)、IEAの無い467例中77例(16%)に発生した。IEAは年齢、性別、eGFR、尿蛋白・Cre比で補正した臨床モデルにおいて、腎アウトカムと有意に関連した(HR 3.55; 95%CI,2.43-5.19)。この関連は組織学的スコアを加えた臨床病理モデルでも一貫して示された(HR 3.61; 95%CI,2.47-5.29)。

(2)CKDコホート
2005年から2018年に当科外来を受診した2877例の保存期CKD患者を対象とした後方視的コホート研究である。IEAのサロゲートとして同定された末梢血好酸球数と末期腎不全(腎代替療法の開始)への進展との関連をmarginal structural modelを用いて解析したところ、末梢血好酸球数高値(≥289/μL)は不良な腎予後と関連していた(HR 1.83;95%CI,1.33-2.51)。

本研究結果から、これまで見過ごされてきた腎組織学的所見である間質内好酸球集簇-IEA-が、腎疾患の予後を予測するための新たな組織学的マーカーとして有用であることが示唆された。

IEAの形成や腎障害に寄与するメカニズム、さらに治療標的としての好酸球の意義を明らかにするための基礎研究の発展が望まれる。