細胞レベルの空間分解能、秒レベルの時間分解で、in vivo のミトコンドリア脂肪酸β酸化を可視化する

Am J Physiol Endocrinol Metab. 2023 Sep 20. doi: 10.1152/ajpendo.00147.2023. PMID 37729022

Spatiotemporally quantitative in vivo imaging of mitochondrial fatty acid β-oxidation at cellular-level resolution in mice.

Ayumi Matsumoto, Isao Matsui, Shohei Uchinomiya, Yusuke Katsuma, Seiichi Yasuda, Hiroki Okushima, Atsuhiro Imai, Takeshi Yamamoto, Akio Ojida, Kazunori Inoue, and Yoshitaka Isaka

 

脂肪酸β酸化(FAO)は、エネルギー恒常性を維持する上で極めて重要な役割を果たします。しかしながら、既存のFAO解析手法は、生体内のFAOを高解像度にリアルタイムに解析するのに十分とは言えません。本研究では、クマリンを基本構造としたFAO活性蛍光指示薬 (FAOBlue) をマウスに投与して二光子顕微鏡で観察することにより、単一細胞レベルの空間解像度と秒レベル時間解像度で、肝臓におけるFAOを可視化できることを明らかにしました(九州大学創薬ケミカルバイオロジー分野の王子田研究室との共同研究)。同手法により、肝小葉門脈域と中心静脈域のFAO活性の相違が可視化できるのみならず、「絶食」と「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)モジュレーター投与」という二つのFAO刺激下におけるFAO活性化の異質性も明らかになりました。

図1

生体におけるFAOを可視化するため、クマリンを基本構造としたFAO活性蛍光指示薬 (FAOBlue) を様々な前処置を行ったマウスに投与し、二光子顕微鏡で観察しました。

生体内ミトコンドリア脂肪酸ベータ酸化を可視化する方法(動画)

コントロール群 (Ctrl)、ぺマフィブラート群 (Pema)、絶食24時間群 (Fasting_24h)、絶食72時間群 (Fasting_72h)、エトモキシル群 (Eto)におけるFAO活性を可視化した結果を示しています。ムービーは42倍速で、スケールバーは 100 μmです。この可視化により、ペマフィブラート投与や絶食が主に門脈域でFAOを活性化させることを評価可能でした。また、ぺマフィブラートと絶食はいずれもFAO活性化させましたが、両者にはFAO検出時間 (FAOBlue投与前5フレームの輝度から求めた標準偏差(SD)を基準に + 3 SD以上の蛍光輝度上昇が初めて認められた時点と定義) に有意差を認めました。これは、ぺマフィブラートが脂肪酸の細胞への取り込みを促進する Cd36 の発現を誘導する一方で、絶食にはそのような効果が無いためだと考えられました。

図2

FAOを、in vivoで、細胞レベルの空間解像度、秒単位の時間解像度で評価する方法を確立しました。本法は二光子顕微鏡で観察可能なあらゆる臓器に応用が期待され、FAOの時空間的理解をさらに進化させると考えられます。