CKD患者の蛋白尿と腎不全の関連における季節変動
Nephrol Dial Transplant. Published online November 21, 2024. doi:10.1093/ndt/gfae278. PMID: 39572085
Seasonal variations in the association between proteinuria, CKD, and kidney failure.
Takayuki Kawaoka, Yusuke Sakaguchi, Tatsufumi Oka, Yuta Asahina, Koki Hattori, Yohei Doi, Nobuhiro Hashimoto, Yasuo Kusunoki, Satoko Yamamoto, Masafumi Yamato, Ryohei Yamamoto, Isao Matsui, Masayuki Mizui, Jun-Ya Kaimori, Yoshitaka Isaka
慢性腎臓病(CKD)の診療において重要な指標である尿蛋白は、夏に減少し、冬に増加するという季節変動を示します。しかし、保存期CKD患者における尿蛋白季節変動の詳細や、尿蛋白とCKD進行との関連が季節によって異なるかどうかは不明です。
そこで我々は2010年から2021年に大阪府内5施設の腎臓内科に紹介されたCKD患者15,367例を対象とした後方視的コホート研究を実施しました。本研究では、①反復測定混合効果モデルを用いて尿蛋白クレアチニン比(UPCR)の季節変動をモデル化し、②夏季および冬季のUPCRと、腎代替療法の導入で定義したCKD進行との関連を多変量Cox回帰分析およびLASSO回帰分析で検討し、③C統計量、NRI、IDIといった指標を用いて尿蛋白予後予測能の季節別比較を行いました。
①保存期CKD患者のUPCRには夏に減少し冬に増加する季節変動が存在しました(図1)。冬季UPCR(中央値0.89 g/gCre)は夏季UPCR(中央値0.61 g/gCre)より46%高値でした。冬の尿蛋白量により4つのグループに分けて観察したところ、尿蛋白が一番多いグループでは、夏から冬にかけて約2g/gCreも増加していることが分かりました。一方で、尿蛋白が少ないグループにおいても、夏から冬にかけての尿蛋白上昇率はほぼ同等であることも判明しました。
図1 尿蛋白の季節変動(反復測定混合効果モデル)
②Cox回帰分析では、冬季UPCRは夏季UPCRよりもCKD進行と強く関連していました(1標準偏差あたりのハザード比1.66 vs 1.45)。LASSO回帰分析では、夏季UPCRではなく冬季UPCRがCKD進行と関連する因子として選択されました(図2)。
図2 LASSO 回帰分析の結果
③まず、識別能の指標であるC統計量を用いて3つのモデルを比較しました。一つ目は年齢、性別、eGFRなどのベースライン変数のみのモデル、2つ目はベースライン変数に夏の尿蛋白を加えたモデル、3つ目は冬の尿蛋白を加えたモデルです。その結果、冬の尿蛋白を投入したモデルが、最も高いC統計量を示しました。
次に、NRIおよびIDIを用いて尿蛋白リスク再分類能の季節別比較を行いました。ベースラインモデルと夏の尿蛋白を含むモデルにさらに冬の尿蛋白を加えると、NRI・IDIが有意に向上しました。一方でベースライン変数と冬の尿蛋白を含むモデルにさらに夏の尿蛋白を加えても、NRI、IDIは向上しませんでした。すなわち、既に夏の尿蛋白データがある状態でも、冬の尿蛋白を測定することは腎予後予測に有用である一方、既に冬の尿蛋白データがある状態で夏の尿蛋白も測定しても、腎予後予測において有用性をもたないことが示唆されました。
本研究結果から、冬季の尿蛋白は夏季の尿蛋白よりもCKD進行と強く関連し、腎予後予測においてより重要な因子である可能性が示されました。尿蛋白の季節変動を考慮することで、CKDの重症度評価や予後予測、治療効果の判定がより精度の高いものとなり、ひいてはCKD診療の質の向上につながることが期待されます。