大阪府下の血液透析患者におけるSARS-CoV-2 IgG抗体陽性率に関する検討

日腎会誌63巻7号

大阪府下の血液透析患者におけるSARS-CoV-2 IgG抗体陽性率に関する検討

坂口悠介、貝森淳哉、柏原直樹、猪阪善隆

 

血液透析患者は透析施設に週3回通院し、医療従事者や他患者と同一空間を長時間共有しなければならないため、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に曝露される機会が増加している可能性があります。我々は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の蔓延が深刻な大阪府下の血液透析患者におけるSARS-CoV-2感染の実体を把握するため、SARS-CoV-2 IgG抗体のスクリーニング検査を実施しました。

対象は大阪府下の12の外来透析施設に通院する1,210例のワクチン未接種の血液透析患者です。2021年3月から5月に採取した血清のSARS-CoV-2 IgG抗体価を測定しました。

抗体陽性者は13例(1.1%)であり、大阪府一般住民の抗体陽性率と大きな差はありませんでした。このうち5例(38%)は感染歴のない不顕性感染であり、不顕性感染率も一般住民と同等でした。12施設中6施設に抗体陽性者を認めましたが、このうち5施設の抗体陽性者数は1例のみでした(図)。施設内での感染の広がりは限定的と考えられました。

COVID-19蔓延地域であっても、適切な感染防止対策は透析施設内での集団感染の防止に有効であったことが示唆されました。

本研究は令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)の支援を受けて実施しました。抗体測定は加藤保宏先生・熊ノ郷淳先生(大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学)にご協力頂きました。また、本研究にご参加頂きました全ての透析施設の先生方と患者様に深謝致します。