お知らせ
「甲状腺福島の甲状腺検査と過剰診断(あけび書房)」発売中です。過剰診断を学ぶ最初の一冊としてぜひお読みください.
「科学リテラシーを磨くための7つの話(あけび書房)」発売中です。
濾胞癌の分子診断と若年型甲状腺癌の経過観察はりんくう総合医療センターにて研究プロジェクトとして実施しています。
研究内容 日本から、甲状腺から始まるがん診療の大転換
1)日本人が提唱した新しい発癌理論、芽細胞発癌説(Fetal Cell Carcinogenesis)
従来、癌の発生機序のモデルとしては、良性または正常な細胞が分裂を繰り返すうちにゲノムにエラーを生じ、悪性形質を獲得して「癌化」するのであると考えられてきました(多段階発癌説)。しかし、この説では甲状腺のように細胞がほとんど再生・増殖しない臓器からの癌の発生を説明できません。我々は世界で最初に甲状腺癌の遺伝子発現プロフィールの作成に成功し、そのエビデンスに基づき新しい発癌モデルとして「癌は分化した細胞が先祖返りして悪性化するのではなく、発生途上で出現する未分化な芽細胞が分化することなく遺残したものから直接発生する」とする「芽細胞発癌説(fetal
cell carcinogenesis)」を提唱しました(2000年)。韓国における甲状腺癌の過剰診断問題、日本における甲状腺微小乳頭癌の長期経過観察のデータ、福島県民健康調査のデータ等、近年甲状腺癌においてこの理論の予測するとおりの実験的・臨床的エビデンスが報告されるようになり、癌に対する見方・考え方は大きな転換期を迎えようとしています。
◎2005年 アメリカ甲状腺学会誌Thyroid 5月号に総説・表紙として大々的に取り上げられました。
◎2007年 癌研究の代表的な総説誌であるSeminars in Cancer Biologyで世界で最初の癌幹細胞特集号が組まれ、日本人の論文ではただ一報、芽細胞発癌説が掲載されました。
◎2009年以降、Nature Review Endocrinol, J Clin Endcrinol Metab, Oncogene等代表的な学術誌の総説や教科書で甲状腺癌の新しい発癌モデルとして取り上げられています。
【英語論文】
Natural history of thyroid cancer (Review) Endocr J 64:237-244, 2017
無料フルテキスト
【日本語論文】
芽細胞発がん説ー甲状腺からはじまったがん診療のパラダイムシフト(TOPICS)週刊医学のあゆみ Vol260: 229-230、2019.
2)若年者の甲状腺癌の過剰診断問題
ーSelf-limiting
Cancerは早期診断・早期治療をしてはいけない!-
我々は芽細胞発癌説の理論から、転移・浸潤はするものの途中で成長を止めてしまうため一生患者に悪さをしないSelf-limiting
Cancerが若年者に高頻度で存在することを予想していました。このSelf-limiting
Cancerは従来の多段階発癌説では想定しえないものです。Self-limiting
Cancerを早期診断・早期治療することは過剰診断につながり、対象者に害をもたらします。我々は無症状の対象者に対する甲状腺超音波スクリーニングの危険性を訴え、情報提供することで過剰診断の抑制に取り組んでいます。
”過剰診断”は診療に関わる医師であれば必ず知っておかなければならない現象です。我々のグループで発表した論文をベースに、短時間で学べる内容にまとめました。確認のための問題もあります
若年者の甲状腺がんの過剰診断についての情報(一般向け)
5) 甲状腺超音波検査によるスクリーニング:海外の専門家の意見は?
7) 過剰診断に関する誤った科学的見解のリスト(2020/10/17日現在)
8) 福島の若者の未来を守るための3原則(2017/12/2)
福島県有識者会議における発言要旨 (2017-2019)
福島県民健康調査検討委員会・甲状腺評価部会における野徹委員の甲状腺検査に関する発言要旨をまとめてあります。なお、記憶に基づいて記載していますので正確なところは福島県のホームページ等でご確認ください。
【英語論文】
@ Overdiagnosis of thyroid cancer:
The children in Fukushima are in danger.
Arch Pathol
Lab Med
143:660-661, 2019
無料フルテキスト
A Natural history of thyroid cancer suggests begining of the overdiagnosis of juvenile thyroid
cancer in the United State. Cancer 125: 4107-8, 2019 日本語要旨はここから
B Overdiagnosis of juvenile thyroid cancer. (review) Eur
Thyroid J 9: 123-131, 2020
C Overdiagnosis of juvenile thyroid cancer: Time to consider self-limiting cancer. (perspective)
JAYAO 9: 286-8, 2020
D In reply:An accurate picture of Fukushima's thyroid ultrasound examination.
Arch Pathol Lab
Med 144: 797-8, 2020
【日本語論文】
福島の甲状腺がんの過剰診断ーなぜ発生し、なぜ拡大したか日本リスク研究学会誌 Vol28(2):67-76
無料フルテキスト
【関連参考資料】
*福島県甲状腺評価部会に提出した検査改善案(野・祖父江提案)(2018/6/15)
3)穿刺吸引核酸診断法(Aspiration Biopsy Nucleic Acid Diagnosis, ABND)
甲状腺腫瘍の術前診断法として、腫瘍を穿刺した検体より核酸を抽出して解析することより良悪を判定する穿刺吸引核酸診断法(ABND)を世界で初めて開発しました。
(甲状腺癌鑑別のベストマーカーとしてのTFF3)(穿刺検体でのTFF3測定プロトコール:フィルター濾過法Ver.2)
ふぁっつ・にゅう
研究室の風景ー過剰診断問題を話題にコーヒーブレイク(2019/8/8)
超音波検査による早期診断は再発率を高める(2021/1/9)
転移や再発があれば過剰診断例ではないって本当?(2022/1/31)
福島の子どもの甲状がん、過剰診断の割合は?(2022/4/16)
最近の国際論文で当研究室の研究業績を紹介しているものを解説します。
研究室メンバー(クリックで詳細へ)
医学系研究科特任講師・りんくう総合医療センター甲状腺センター長 高野 徹
研究協力者
病院臨床検査学講座准教授・阪大臨床検査部部長 日高 洋
連絡先 ttakano@labo.med.osaka-u.ac.jp
リンク
学会/講演会予定
〇日本臨床検査専門医会 第3回年次大会 (紀南看護専門学校 2024年6月29日(日))
「芽細胞発がん説:甲状腺癌のエビデンスが示すがんという病気の真の姿」(特別講演)
演者:野 徹 (りんくう総合医療センター)