小学生のみなさんへ

安立小学校6年生卒業記念講演の質問に答えて

免えきの話、平成12年2月23日

 

平成12年3月10日

安立小学校の6年生の皆さん

皆さん、ご卒業おめでとうございます。6年間の数えきれない思い出を胸に秘めつつ、未来への大いなる一歩を、今まさに踏み出そうとされています。さぞ希望にあふれて、創立90周年の記念すべき卒業式に臨まれることと思います。

皆さんとは、2月23日に、一度お会いしただけですが、私の話を最後まで熱心に聞いておられた態度に、大変感激いたしました。皆さんの、それぞれの“ひとみ”が21世紀をめざして光り輝いていたのが大変印象的で、胸が熱くなりました。又、すばらしい感想文ありがとう。大変うれしく読まさせていただきました。

私になく、君たちにあるものは、”未来”という無限の可能性です。21世紀の日本を、世界を築いていくのは、君たち一人一人の力です。”未来”は君たちのものです。”未来”を創るのは、君たち一人一人の力です。いつまでも、”夢”を忘れないように、大いなる”夢”をいだいて未来に挑戦してください。

質問が2つありましたので、お答えいたします。

質問1:「今は治らない病気も、医学が発達すれば治るようになるのでしょうか?」

昔、治療法がなかった病気も、医学が大変進んだおかげで、今では治療することが可能になりました。例えば、世界中で恐れられた病気である天然痘は、免疫学(予防注射)のおかげで、地球上から完全に姿を消しました。50年位前までは確実な治療法がなく、大変恐れられた結核も、今では正しく治療すれば完全に直すことができます。このように多くの病気が治るようになりました。しかし、それでも治療法がない病気は、今でもたくさんあります。これらの病気は、必ず病気になる原因があるから病気になるのです。残念ながら、今の医学の知識では、すべての病気の原因を説明することはできません。しかし、多くの医学研究者が、日夜これらの難病の病因を研究しています。又、原因がわかっていても、治療法のない病気もあります。世界中の医学研究者が、日夜治療法を開発しようと努力しています。これらの努力が実を結び、一つ一つの病気の原因が明らかにされ、その治療法が開発されつつあります。

君達もぜひ、医学研究者になって、一つでも多くの病気の原因と、その治療法を発明して下さい。

質問2:「人間の医者は、動物の病気を治療する資格があるのか?」

人間も、犬や猫と同じ動物ですから、原理的には、人間の病気も、犬や猫、あるいはネズミと同じ原因で病気になります。2月23日に、皆さんの質問にも答えましたように、人間の病気の研究をするときに、実験動物として、ネズミなどを使用しているのです。だから理論的には、人間の医者も、動物の医者も同じです。ただ、現実の問題としては、人間には人間の、犬や猫にはそれぞれに特有の病原菌がいるわけで、それぞれの病気の治療の仕方は、全く同じではないわけです。例えば、人間の病気でも、内科の医者もいれば、眼科の医者もいるように、各々専門があるわけです。又、法律の上でも、動物の医者になるためには、獣医師の免許を、人間の医者になるためには、医師免許が必要です。もちろん両方の免許をとれば(医学部と、獣医学部の両方を卒業して、両方の国家試験に合格する必要があります)、人間と動物の病気を治療することができます。

 

最後に私の恩師の元大阪大学学長、故山村雄一先生の言葉を贈って、私のお祝いの言葉にしたいと思います。

”夢みて行い、考えて祈る”

皆さん、卒業おめでとう。“夢” を持つて、未来に羽ばたいてください。

大阪大学大学院医学系研究科・医学部教授

平野俊夫(昭和35年卒業)

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