大阪大学高等共創研究院 栁澤研究室

研究紹介

1) 皮質脳波・脳磁図を用いたBMIの開発と臨床応用

 Brain-Machine Interface (BMI)とは「脳と機械の間で情報をやり取りして運動や感覚機能を補填しようとするもの」です。BMIを使う事で、病気などで体を全く動かせない場合でも、”念じるだけ”でロボットを操作して身の回りの事をしたり、コミュニケーション能力を回復できると期待されています。我々は脳の表面に電極を置くことで計測される皮質脳波(図1)や脳から出る微弱な磁気を計測する脳磁図(図2)を使ったBMIを開発し、臨床応用することを目指しています。

図1:皮質脳波計測
図1:皮質脳波計測
図2:脳磁図計測
図2:脳磁図計測

例えば、人工知能により皮質脳波をオンラインで解読(neural decoding)することで、人の運動意図を読み解き、ロボットを動かすことができます(ビデオ1)。また、同様のロボットを、体を全く傷つけずに脳磁図を使って実現することもできます(https://media.nature.com/original/nature-assets/srep/2016/160224/srep21781/extref/srep21781-s2.mov)。


ビデオ1:人が手を動かす時の皮質脳波を解読し、同じ動きをロボットが行うBMI

 

また、JST CREST 共生インタラクション 「脳表現空間インタラクション技術の創出」にて皮質脳波を使った新しいBCIを開発しております(HPはこちら)。

我々は新しいdecoding技術を開発し臨床応用することで、患者さんの福音となるBMIを目指しています。

2) BMI neurofeedbackを用いた精神神経疾患の病態解明と新しい治療法の開発

念じて動くBMIのロボットを動かす訓練をすると、脳活動はどのように変わるでしょうか。また、脳活動の変化に伴って、脳の機能はどのように変わるでしょうか。我々はBMIを使って、脳活動を修飾することで、様々な精神神経疾患の病態を解明し、新しい治療方法を開発します。

 幻肢痛は腕を切断した後などに生じる痛みです。患者さんは腕がないにもかかわらず、まだそこに腕があるように感じる”幻肢”を訴えます。本来はない幻肢が痛むので、原因や治療方法も明らかではありません。しかし、腕を失った後に腕の運動や感覚を担当していた脳の感覚運動野と呼ばれる場所の活動が異常な変化を生じたことが痛みの原因になっていると考えられています。我々は幻肢痛に苦しむ患者さんがBMIのロボットを動かす訓練をすることで、感覚運動野の活動に変化を誘導し、これによって痛みを制御できることを明らかにしました(図3、https://media.nature.com/original/nature-assets/ncomms/2016/161027/ncomms13209/extref/ncomms13209-s2.mov)。現在は、この技術を発展させ、幻肢痛を治療する方法の開発を行なっています。
また、同様の方法は、他の精神神経疾患にも応用することができます。現在、神経内科や精神科の先生と協力して、新しい治療法の開発を目指しています。

図3:BMIロボットを操作する訓練を介して、脳活動を変え、痛みを制御する
図3:BMIロボットを操作する訓練を介して、脳活動を変え、痛みを制御する

頭蓋内の視床下核に留置した電極から脳波を計測し、これを患者さんが念じることで制御し、深部の脳活動を変えられることを示して報告しました

発表論文詳細(2018/12/17掲載)

Real-time neurofeedback to modulate β-band power in the subthalamic nucleus in Parkinsons disease patients

http://www.eneuro.org/content/early/2018/12/14/ENEURO.0246-18.2018

https://medicalxpress.com/news/2018-12-real-time-feedback-parkinson-brainwaves.html

また、

JST ERATO、池谷脳AI融合プロジェクトにて、潜在的な脳情報を解読して本人にfeedbackすることで未知なる能力を習得することを目指しています。(HPはこちら

 

3) 精神神経疾患の脳波・脳磁図による診断技術の開発

脳波や脳磁図の波形を調べると、様々な病気の特徴を見つけることができます。我々はこれまで、、Phase-amplitude couplingがてんかん発作時の皮質脳波において特徴的にみられることを明らかにしました。また現在、我々が持つ、脳波や脳磁図のビッグデータに対して人工知能技術を使うことで、病気を自動で診断したり、新しい特徴を見つける研究を進めています。

安静時の脳磁図信号からてんかん、脊髄損傷、健常者を識別するニューラルネットを開発しました。

http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20190326_1

発表論文詳細(2019/3/25掲載)

Automatic diagnosis of neurological diseases using MEG signals with a deep neural network

Original code; https://github.com/yanagisawa-lab

 

*2020年にオンライン開催した日本神経科学大会 市民公開パネルディスカッション「2050年の脳科学と社会」にて栁澤が「脳科学が脳を作り変える?」としてプレゼンテーションしたアーカイブ動画です。

https://www.youtube.com/watch?v=sZfkYK8CcTc

 

*2022年に当教室の研究を紹介したtalkの公開アーカイブです。
Visualization and manipulation of our perception and imagery by BCI by Takufumi Yanagisawa

*理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)のウェブサイトです。
計算生命科学の基礎8 Brain-Computer Interfaceによる脳情報の伝達と修飾
https://www.r-ccs.riken.jp/about/careers/e-learning/intro-com-life-sci-2021/life-science8-7/

 

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