ご挨拶

本寄附講座は2017年に設立され、森悦朗先生が初代教授を務められました。2024年4月から私が第2代目教授に就任いたしました。

私は大学生時代に脳と心の関係に興味を持ち、脳神経内科と精神科のどちらの道に進むか悩んでおりました。ご縁があり大学卒業後に慈恵医大神経内科に入局し、一般脳神経内科医として研鑽を積みました。その後、脳と認知機能の関係についての学問である神経心理学を学ぶために東北大学高次機能障害学に移り、認知症、高次脳機能障害、てんかんの診療・研究に従事しました。脳神経内科医として約20年間過ごした後、精神科医になることを希望して東京都立松沢病院に移り、5年間トレーニングを受けました。私の現在の研究面での関心は、ヒトの経験や精神活動を哲学・心理学・神経生理学の言葉で記述することです。医師としては、脳神経内科と精神科の中間領域の診療実践をライフワークとしております。

脳の疾患の診断・治療には、脳神経内科と精神科の中間の専門領域に関する知識が必要とされる場面が多くあります。例えば、認知症性疾患の主たる症状はいうまでもなく記憶障害をはじめとする認知障害ですが、様々な精神症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia, BPSD)や運動障害も高頻度に認められます。また、パーキンソン病をはじめとする運動障害疾患においても認知障害や精神症状が高頻度に認められ、運動障害と同等もしくはそれ以上の大きな影響を患者さんと介護者の方々の生活に与えます。

脳神経内科と精神科の中間領域に相当する学問領域は行動神経学(behavioral neurology)もしくは神経精神医学(Neuropsychiatry)と呼ばれ、当教室の名前はこれらに由来します。本寄附講座の教育的目標は、認知症性疾患やその他の脳疾患・脳損傷による認知行動障害の臨床と研究に対応できる医師やコメディカルを養成することです。


大阪大学大学院連合小児発達学研究科
行動神経学・神経精神医学
寄附講座教授 西尾慶之