講座の概要

現在、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、パーキンソン病、前頭側頭型認知症などの脳神経疾患に対する薬剤の開発が世界中で進められ、多くの治験が進行・計画中です。本邦ではこれらの領域に精通した専門医が少なく、治験における認知・行動評価を遂行するために必要な専門知識を有する神経心理学者がほとんど存在していないのが実情です。本寄附講座では、認知症性疾患を中心とした脳疾患に対する専門医療を提供するとともに、薬剤の臨床薬理学の教育や研究の基盤を提供し、これからの認知症・脳疾患医療の先導的役割を果たしたいと考えております。

教育研究領域

認知症性疾患や発達障害、大脳損傷による認知行動障害を対象として、神経心理学や神経画像学の面から、ヒトの大脳と認知機能との関係、大脳損傷と認知行動障害との関係、認知行動障害の診断と治療に関する研究を進める。また、認知症に対する薬剤の臨床試験の研究デザインに関する臨床薬理学的研究を行い、自らもこれらの治験を実施する。臨床研究および診療に関しては精神医学および神経内科学教室と連携する。

現在本邦において、これらを専門とする医師、研究者は欧米に比し圧倒的に不足し、臨床はもちろん、治験を含む臨床研究が立ち遅れている。本寄附講座は本領域の研究・教育を集中的に進め、この領域での先導的役割を果たす。本研究科は、小児のこころと脳発達を医科学的見地から研究する基盤として設置されているが、本寄附講座では退行の面から発達を研究するものであり、関連領域の研究と双方向性に相乗効果が期待できる。

当初の研究計画としては以下のような計画を持っている。

  1. 臨床神経心理学:ヒトにおける、大脳損傷と認知行動障害の関連を、神経変性疾患および脳血管障害の患者を対象にして、神経心理評価と神経画像を用いた検討
  2. 神経病態計測学:診断および臨床試験のアウトカム評価に用いる認知行動障害の評価法の開発
  3. 認知症性疾患に対する臨床試験の研究計画立案と実施:レビー小体型認知症、アルツハイマー病における、認知機能障害、行動・精神症状、運動機能障害に対する効果の研究
  4. アルツハイマー病が並存する特発性正常圧水頭症に対する脳脊髄液シャント術のランダム化対照試験の計画立案、実施、解析
  5. アルツハイマー病など神経変性疾患による認知症に対する早期診断法の確率と病態修飾薬の効果判定方法の開発

授業科目等

本寄附講座においては、大学院学生を対象に以下の講義・実習指導等を行う。
また、研究生の受入れも適宜行い、研究指導を行う。

  1. 基礎神経心理学及び臨床神経心理学の講義及び実習
  2. 行動神経学及び神経精神医学の講義及び実習
  3. 神経画像診断学及び神経画像解析学の講義及び実習
  4. 臨床薬理学、病態計測学及び生物統計学の講義及び実習
  5. 臨床試験に携わる研究者による臨床試験実習

※ 研究指導については、寄附講座の設置期間が限られているため、対象とする学生は、寄附講座の存続期間内に修了可能な学生とする。