大阪大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療医学教室

診療内容・臨床研究

集中治療部門

診療内容

 

歴史

1974年4月、東北大学に続き、全国に先がけて病床数4床で開設されました。初代部長は(旧)第一外科の(故)曲直部壽夫教授で、麻酔科から3名、第一外科から1名の教官が異動して運営が開始されました。その後、増床を繰り返し、2018年からは29床で運営しています。この間、大阪大学医学部附属病院における重症患者の治療に貢献することはもちろん、人工呼吸管理、循環管理、血液浄化法、重症感染症対策、代謝栄養管理など幅広い領域で集中治療医学の発展に寄与してきました。診療・研究・教育の各方面にわたり、わが国の集中治療施設の中でも有数の施設として位置づけられています。

“支え合い”が生む、一歩先のチーム医療

大阪大学医学部附属病院の集中治療部(ICU)は、日本集中治療医学会認定の「closed ICU」として、専属の集中治療医が24時間体制で全ての治療を担っています。完全な二交代制のもと、昼夜問わず専任医が常駐し、途切れのない高度な集中治療を提供しています。看護体制も万全で、日勤帯は1:1、夜間帯でも2:1と、高いマンパワー比を維持しています。
他の大学病院ではICUと救急部門が統合されていますが、大阪大学では独立した体制をとっています。そのため、ICUは術後や急性増悪で重症化した院内患者の管理に集中することができ、外傷などの院外搬送患者は救命救急センターが担うという明確な役割分担がなされています。

医師・看護師・薬剤師・臨床工学士など、多職種が互いの専門性を尊重し合い、状況に応じて連携を図りながらチームで一人ひとりの患者に向き合う、「チームで挑む」臨床力が、当ICUの大きな魅力です

最前線の経験が、力になる

当ICUでは、各科が行う臨床試験中の管理を任されることもあり、スタッフと十分話し合ったうえで、受け入れを行っています。予期せぬ問題への対応、各科、スタッフとの連携を大切に取り組んでいます。
特筆すべきは、心臓・肺・肝臓・膵臓・小腸・腎臓に関して小児から成人まですべての臓器の移植医療に対応しており、これらすべての術後集中管理を担うことができる日本でも数少ない施設であるという点です。また、COVIDの際には救命救急センターと連携し、非常に多くの重症患者を助けることができました。同じ集中治療を行うユニットとして協力体制にあることも特徴です。
当ICUでは、同じ症例が来ることがない現場で、真摯に症例に向き合うこと、新たな知識を吸収すること、多職種との連携を十分にとることを大切にしています。若手の先生方にはスタッフがサポートしますので、確かな知識と技術を身に着ける、判断力と指導力を磨くことができる現場だと考えています。

ICU入室患者の統計

  2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
ICU入室患者数合計 1132 1188 1234 1313 1320
心臓血管外科 398 412 434 419 440
呼吸器内科 41 145 64 11 7
消化器外科 373 338 387 414 386
循環器内科 38 21 41 47 50
呼吸器外科 51 52 41 113 103
小児科 34 26 40 28 41
小児外科 45 42 44 58 53
耳鼻咽喉科 28 48 54 48 46
脳神経外科 24 20 19 15 15
整形外科 12 8 20 27 31
産婦人科 18 19 32 34 31
泌尿器科 28 19 20 42 47
その他の内科 31 30 23 37 42
その他 11 8 9 10 16

臓器移植ICU入室患者(脳死含む)

  2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
6 3 5 7 4
心臓 11 12 13 16 12
肝臓 6 5 8 11 13
膵腎 3 3 6 3 4
腎臓 4 3 7 6 16
合計 30 26 39 43 49

 

臨床研究

1. 臨床研究とは

臨床研究とは新しく開発された薬剤、検査法や治療法が病気に対し安全かどうか、また有効かどうかを患者さんにご協力いただいて行う研究を意味します。治療法が進歩するためにはこのような研究を積み重ね情報を得ることが不可欠で、現在標準治療法とされているものの多くはこれまでの患者さんのご協力に基づいた臨床研究によってできあがったものです。

2. 臨床研究の参加

臨床研究に参加するかしないかは自由であり、参加されない場合でも治療に際し不利益を受けることはありません。また、参加された後でも自由にやめることができます。すなわち、患者さんの自由意思です。

3. 同意書について

担当医がこの臨床研究に関する説明を行った後に、患者さんの参加または不参加の意思を確認させていただきます。この研究の参加に同意した後でも、理由にかかわらずいつでも辞退することができ、治療で不利益になることはありません。

現在進行中の臨床研究

  1. 小児心臓血管外科術後患者における「高流量式鼻カヌラ」の効果:ランダム化臨床試験
  2. 急性呼吸窮迫症候群患者に対する体外式膜型肺管理中の至適呼気終末陽圧の検討:多施設前向き無作為化非盲検化比較試験
  3. 胸部CTにおける肺の自動解析ソフト作成のためのデータ基盤構築
  4. COVID-19感染患者治療の疫学的調査
  5. COVID-19患者における急性呼吸不全に対する非侵襲的呼吸管理デバイス(HFNCOT, CPAP, NPPV)の有効性と安全性の検討
  6. COVID-19症例におけるPICS(集中治療後症候群)発生に関するリスク因子の検討
  7. 集中治療患者における人工呼吸離脱に関連する因子の検討
  8. ネーザルハイフローセラピー中の聴診法、インピーダンス法、呼吸圧による呼吸数の比較に関する研究
  9. Lung stress mapping を用いた ARDS (急性呼吸促迫症候群)患者における人工呼吸器関連肺傷害リスクの解明
  10. 気管切開と患者予後との関連の検討
  11. 日本集中治療医学会主催の ICU 入室患者登録システム事業への参画について