大阪大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療医学教室

診療内容・臨床研究

手術部門

診療内容

 

仲間意識を重視するチーム力

40人を超えるスタッフ・専攻医・特任研究員 (麻酔看護師)が日々の手術麻酔に携わります。各症例担当の専攻医と指導医が密に問題点を検討し麻酔計画を立案するだけでなく、毎朝カンファレンスで全症例の最終検討を行います。貴重な症例経験を専攻医同士で情報交換する、困ったことがあれば仲間と分かち合うなど、一般的には「個」で行う手術麻酔ですが、当教室では「仲間」で共有する手術麻酔を育んでいきます。スタッフと上級専攻医が専攻医世話係として安全にストレスなく麻酔管理に専念できる環境づくりに貢献しています。

卓越した臨床能力を身につける

大阪大学医学部附属病院において対象疾患及び患者は多岐にわたります。基本的な技術・知識で管理できる症例から大阪大学医学部附属病院ならではの希少な症例、とりわけ全ての臓器における移植医療に加えて、Ventricular Assist Deviceなど高度先進医療、高度な知識・技術を要する症例を数多く経験できます。
ハイブリッド手術、ロボット手術などの特殊な手術の麻酔だけでなく、日本専門医機構指定の必要症例―心臓血管外科手術、6歳以下の小児麻酔なども数多く経験することができます。このような幅の広い症例を日々経験することで、卓越した臨床能力を身につけることができます。

施設全体の症例数

  2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
麻酔管理症例数 6703 6948 7418 7152 7464
経験必要症例数 2019 2007 1933 1938 1933
胸部外科手術 439 439 438 444 472
脳神経外科手術 264 271 279 261 246
心臓血管外科(1群) 375 358 362 368 344
心臓血管外科(2群) 289 355 286 274 300
帝王切開 204 198 165 164 178
6歳未満乳幼児 448 386 403 427 393

JSCVA症例分類

  2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
弁膜症 239 293 278 259 261
AVR 81 72 78 71 70
TAVI 91 147 115 116 108
CABG・OPCAB 83 84 93 90 67
先天性心疾患 34 62 41 57 54
VAD植え込み 17

移植症例

  2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
心移植 11 12 13 16 12
肺移植 6 3 5 7 4
肝移植(脳死含む) 6 5 8 11 12
腎移植(脳死含む) 32 26 33 37 50
膵腎同時移植 3 3 6 3 4

症例数の全国順位

心移植の累計実績(1999年2月〜2023年12月31日)において、大阪大学は181例を実施しており、全国第3位の実績を有しています。
また、2022年12月31日までに実施された小児心臓移植においては、大阪大学が36例と、全国第1位の実績を有しています。

心臓移植レジストリ報告 日本心臓移植研究会まとめ 1999年2月〜2023年12月31日 819例
大阪大学麻酔科関連病院症例数(2022〜2024年度)

シームレスにつながる術中・術後管理

手術麻酔部門・集中治療部門・ペイン部門で、それぞれの領域で専門家を配置・専従で管理を行っているだけでなく、各部門間の活発な人材交流を行っています。これは、長い歴史・伝統をもつ当教室にしかできない大きな強みです。手術部門から集中治療部門へ、集中治療部門から手術部門へ、手術部門からペイン部門へ、ペイン部門から手術部門へと各部門間のシームレスな人材交流により、先を見据えた周術期管理能力すなわち、術後集中治療管理を視野に入れた術中麻酔管理能力を身に着けることができます。
また、様々な専門性に応じた経験豊かな麻酔科医による人材の育成に力を入れており、手術麻酔だけでは終わらない、包括的周術期管理能力を身につける教育を目指しております。

 

臨床研究

1. 臨床研究とは

臨床研究とは新しく開発された薬剤、検査法や治療法が病気に対し安全かどうか、また有効かどうかを患者さんにご協力いただいて行う研究を意味します。治療法が進歩するためにはこのような研究を積み重ね情報を得ることが不可欠で、現在標準治療法とされているものの多くはこれまでの患者さんのご協力に基づいた臨床研究によってできあがったものです。

2. 臨床研究の参加

臨床研究に参加するかしないかは自由であり、参加されない場合でも治療に際し不利益を受けることはありません。また、参加された後でも自由にやめることができます。すなわち、患者さんの自由意思です。

3. 同意書について

担当医がこの臨床研究に関する説明を行った後に、患者さんの参加または不参加の意思を確認させていただきます。この研究の参加に同意した後でも、理由にかかわらずいつでも辞退することができ、治療で不利益になることはありません。

 

現在進行中の臨床研究

  1. レミマゾラムベシル酸塩による心臓外科手術での麻酔管理における有用性の検証
  2. 「周術期管理チームの介入による周術期経過への影響」に関する研究
  3. 全身麻酔中の灌流指数(PI)と血中乳酸値の関連性:末梢循環不全の予測指標として

特定臨床研究

  1. 尿中酸素分圧持続測定値を指標とした急性腎障害発症との関係の検討・井口直也

前向き観察研究

  1. 尿道バルーンカテーテル内に持続尿中酸素分圧測定が可能なセンサーを挿入して測定した尿中酸素分圧計測値の有用性の検証・井口直也
  2. 術後急性腎傷害発症高リスク患者における尿道バルーンカテーテル内に持続尿中酸素分圧測定が可能なセンサーを挿入して測定した尿中酸素分圧計測値の有用性の検証・井口直也

後ろ向き研究

  1. 術後せん妄における血中酸化ストレス、エンドセリン小胞と尿中インドール代謝物の関連