麻酔集中治療医学教室4代目教授 藤野裕士

2013年3月1日に大阪大学麻酔集中治療医学教室の教授に着任致しました。
大阪大学麻酔集中治療医学教室は、故恩地裕先生が創設された歴史ある教室で、私で4代目になります。麻酔科の業務は手術室業務以外に周術期管理を中心とした集中治療、ペインクリニックや緩和医療といった幅広い分野を含みます。
私は1985年に大阪大学を卒業後、関連施設での麻酔科研修を経たのちは集中治療領域を専門として参りました。大阪大学医学部附属病院では6千例弱が麻酔科管理症例であり、今後手術列数増加により更に増加が見込まれます。症例数もさることながら、心臓、肺、肝臓といった脳死臓器提供者からの臓器移植手術や心臓移植待機のための成人・小児心不全患者に対する人工心臓埋め込み手術などの高度先進医療が大阪大学の特徴です。これらの先進医療に大阪大学麻酔・集中治療医学教室は周術期管理の面で多大な貢献をしてきたと思います。
大阪大学集中治療部は設立以来50年以上の歴史を持ちますが、その間の臨床・教育を通じて人的資源を増強した結果として完全クローズド体制で運用するに至りました。集中治療部の主たる研究領域は人工呼吸療法で、急性呼吸不全患者の病態研究や各種の人工呼吸療法を肺傷害動物モデルで評価する臨床への橋渡しをする研究などで成果を挙げて来ました。これらの研究成果を臨床にフィードバックすることで臨床レベルを更に引き上げるよう努めて来ました。ペインクリニックは、真下節前教授が特に力を入れてこられた領域で、特に慢性痛の治療と痛みのメカニズムに関する研究で成果を上げてきました。今後もこれまで同様、大阪大学麻酔・集中治療医学講座の重要分野の一つです。
麻酔科領域は医師不足が深刻に叫ばれており、麻酔科医の養成に関して大阪大学麻酔・集中治療医学教室が担う期待と責任は大変大きいものがあります。私自身の集中治療医としての背景と大阪大学の診療・研究規模をうまく融合し、 手術室内外での全身管理能力に長けた麻酔科医を一人でも多く育成することで伝統ある教室の発展に尽くしたいと思います。