大阪大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療医学教室

診療内容・臨床研究

ペインクリニック部門

はじめに

 

「痛み」は身体の異常をいち早く発見するために必要な感覚ですが、
その反面「痛み」があると患者様の生活の質が著しく損なわれます。

大阪大学医学部附属病院 麻酔科ペインクリニックでは、

  1. 痛みの原因の的確な診断に力を入れています。
  2. 体に負担の少ない低侵襲治療法や高度医療を数多く実践しています
    腰椎疾患(腰椎椎間板ヘルニア、椎間板性腰痛、腰部脊柱管狭窄症など)
    頚椎疾患、肩関節疾患、変形性膝関節症、神経障害性疼痛など
  3. 高度医療だけでなく、地域の患者さんのあらゆる痛みに対応しています
  4. 疼痛医療センターの窓口として、難治性の痛みに対する専門的なチーム医療の中心を担っています

どうぞ気軽にご相談ください。

 

腰下肢痛、首・肩・上肢の痛み

椎間板ヘルニア、椎間板性腰痛

椎間板ヘルニアは、背骨のクッションの役目をしている椎間板の一部が外に飛び出して、神経を圧迫して足や腕のしびれ・痛みを引き起こします。加齢などにより椎間板が変性・断裂することにより起こります。
手足の麻痺症状や排便・排尿の障害が強い場合はヘルニアの摘出手術が必要ですが、これらの症状がなく痛みやしびれが主体の場合は保存的治療が行われます。薬物療法(飲み薬や貼り薬)の効果がない場合には神経ブロック治療が有効です。この治療法にはいくつか種類がありますが、まずは硬膜外ブロックがよいと考えます。脊髄を覆っているもっとも外にある硬膜の外側の空間(硬膜外腔)に麻酔薬や炎症を抑える薬剤を注入し、障害を受けた神経の血流や圧迫、癒着による神経の炎症を改善させる方法です。硬膜外ブロックの効果が不十分な場合に、神経根ブロック、椎間板ブロックなどの方法が選択されます。
通常の神経ブロック療法で効果が長続きしない場合は、パルス高周波法という神経ブロック法を用いて長期に痛みを抑えることができる場合があり、また硬膜外腔癒着剥離術や経皮的椎間板摘出術という低侵襲な手術療法で症状が大きく改善する場合があります。
脚のしびれ・痛みを伴わない慢性腰痛の患者さんの中に、椎間板の変性が腰痛の原因となっている場合があります。椎間板造影検査などによって診断される椎間板性腰痛は、運動療法に加えて経皮的椎間板内治療と呼ばれる低侵襲手術が有効な場合があります。

脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症は中高年の腰・下肢の痛みやしびれ、歩行障害の主要な原因となっている病態です。脊柱管とは背骨の中の脊髄神経は通っている管で、そこが狭くなることで神経が圧迫を受け、痛みや痺れを生じます。症状としては、腰痛、お尻から足にかけての痛みとしびれで特に歩くと足に鉛が入ったようにだるくなり、少し休むと楽になるといった症状があります。
症状の出始めには薬物療法(飲み薬)による治療が行われますが、効果がないときには神経ブロック療法が有効です。
硬膜外ブロック、神経根ブロック、椎間板ブロック、交感神経ブロック、などの治療法があります。大阪大学医学部附属病院麻酔科ペインクリニックでは、外来に専用の治療室があり、安全で確実な神経ブロック療法が随時可能です。
通常の神経ブロック療法で効果が長続きしない場合は、パルス高周波法という神経ブロック法を用いて長期に痛みを抑えることができる場合があり、また硬膜外腔癒着剥離術や脊髄刺激療法という低侵襲な手術療法も効果的です。

変形性脊椎症

腰椎のレントゲン写真腰椎のレントゲン写真

変形性脊椎症とは、加齢に伴って背骨(脊椎)が変形することにより痛みなどの症状が出現するものです。
中年以降の成人にみられ、主に首(頸椎)と腰(腰椎)の背骨に発症します。老化により、背骨のクッションの役割をする椎間板が変性し、それに伴って骨の端にとげができたり(骨棘:こつきょく)、背骨を支える関節や靱帯が変形することが基盤となって、頸椎では首から肩にかけての痛みが、腰椎では腰の痛みが出現します。
神経が圧迫されると、上肢や下肢に痛みやしびれが出る場合もあります。
痛みは動き始め(立ち上がるとき、寝返りをするとき、など)に出現し、動いている時はそれほど痛みが強くないことが多いのが特徴です。
治療は、保存的な治療が主体となり、理学療法(適度な体操、コルセットの着用、など)と薬物療法(消炎鎮痛薬、筋肉を和らげる薬、など)が基本となりますが、痛みが強い場合は神経ブロックが効果的です。
硬膜外ブロック、神経根ブロック、椎間関節ブロックなどの神経ブロック法をそれぞれの病態にあわせて行います。

 

頚椎症・頸肩腕症候群

頚椎症性神経根症

頸椎の椎間板ヘルニアや加齢による椎間板の変化により神経根を圧迫、刺激をし、頚部の痛みや上肢の痛みが生じます。
症状の出始めには薬物療法(飲み薬)を試しますが、効果がないときには神経ブロック療法が効果的で、神経根ブロックや硬膜外ブロックなどを行います。大阪大学医学部附属病院麻酔科ペインクリニックには専用の超音波装置やX線治療室があり、安全で確実な神経ブロック治療が随時可能です。
通常の神経ブロック療法で効果が長続きしない場合は、パルス高周波法という神経ブロック法を用いて長期に痛みを抑えることができる場合があり、また硬膜外腔癒着剥離術や脊髄刺激療法という低侵襲な手術療法も効果的です。

 

膝の痛み

変形性膝関節症

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症は、加齢による膝関節の変形や長年体重がかかることにより膝関節が破壊されておこる病気です。発症すると、立ち上がったり、歩いたりする時に膝が痛くなり、だんだんと歩くなどの日常生活が難しくなっていきます。日本には変形性膝関節症と診断される患者さんは約2400万人と推計され、そのうちの820万人が痛みを伴うとされます。また、厚生労働省の平成25年国民生活基礎調査結果によれば、変形性膝関節症などの関節疾患は高齢者の健康寿命に影響し、要介護状態への大きなリスクとなっています。病気の進行をおさえるためには、リハビリテーション、ふとももの筋力トレーニング、運動、ダイエットなどが必要ですが、膝の痛みが強いせいでこれらの治療ができない患者さんがたくさんおられます。膝の痛みには、薬物治療(非ステロイド性消炎鎮痛薬、アセトアミノフェンなど)や関節内注射(ステロイド、ヒアルロン酸)、神経ブロックが有効であることもあります。これらの治療法があまり効果のない患者さんには、当科ではパルス高周波療法をお勧めしています。パルス高周波療法はすべての患者さんの膝の痛みに有効というわけではありませんが、当科でパルス高周波療法を受けられた患者さんの約7割に鎮痛効果があり、効果のあった患者さんでは一度の治療で長期間(3ヶ月以上)効果が持続しています。

手術後に長引く痛み(遷延性術後疼痛)

変形性膝関節症が進行し、重症になると人工膝関節全置換術(Total KneeArthroplasty、TKA)など手術治療の適応となります。手術は多くの方に有効ですが、中には手術は成功したのに痛みが長期間残ってしまう患者さんがおられます。TKAをうけた患者さんのうち15〜40%の患者さんには3ヶ月以上痛みが残ってしまった、という報告もあります。このような、手術後に長引く痛みは「遷延性術後痛」と呼ばれ、いったん発症すると薬物治療等をおこなっても効果が乏しいことが多く、日常生活に支障をきたしてしまいます。膝関節手術後の遷延性術後痛患者さんにも、当科ではパルス高周波療法を行っています。パルス高周波療法はすべての患者さんの膝の痛みに有効というわけではありませんが、当科でパルス高周波療法を受けられた患者さんの約5〜6割に鎮痛効果があり、効果のあった患者さんでは一度の治療で長期間(3ヶ月以上)効果が持続しています。

 

神経障害性疼痛

外傷、手術、何らかの病気によって神経が傷害されたために痛みが続く場合があり、これを神経障害性疼痛と呼びます。
代表的なものとしては、帯状疱疹の痛み、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性末梢神経障害、四肢を切断した後の痛み、複合性局所疼痛症候群などです。
感覚が過敏になっていて皮膚を触るだけで痛みが出たり、感覚が鈍くなっているのに持続性の痛みがあったり、誘因なく強い痛みが走ったりすることがあります。
一般に消炎鎮痛薬や麻薬性鎮痛薬の効果が少なく治り難いので難治性になる場合があります。治療薬としては抗うつ薬や抗てんかん薬などの薬物治療が中心となりますが、脊髄刺激療法や神経ブロック療法(硬膜外ブロック、末梢神経ブロック、パルス高周波療法)が有効な場合があります。

帯状疱疹の痛み・帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は一生のうちに数人に一人が罹るほど多い病気です。
通常、痛みは1-4週間くらいで消失し、後遺症を残すことはありませんが、帯状疱疹にかかった患者さんのうち5-10%程度のかたに痛みが遷延し、帯状疱疹後神経痛になります。
高齢者で皮疹が重症の場合になりやすい傾向があります。
帯状疱疹の急性期(罹患1-2ヶ月)は抗ウイルス薬の投与や皮膚の治療と平行して、消炎鎮痛薬や神経ブロックを併用し皮膚の早期治癒と痛みの緩和を図ります。
長期に痛みが残った場合には、神経障害性疼痛専用の治療薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などの内服治療によって痛みの緩和を図ります。また、パルス高周波法を用いた神経ブロックや脊髄刺激療法が患者さんによっては効果的です。

糖尿病性末梢神経障害

糖尿病に長年罹患しますと、末梢神経に異常をきたし手足に痺れをきたす場合があります。これを糖尿病性神経障害と呼びますが、そのような方の一部に有痛性糖尿病性神経障害と呼ばれる痛みを伴う場合があります。
痛みの性質としては「ジンジンした」「うずくような」と表現されるかたが多いです。
いったん発症しますと血糖のコントロールとの関連はあまりないようです。このような痛みに対しては、神経障害性疼痛専用の治療薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などの薬物治療を行いますが、難治性の場合には脊髄刺激療法が効果的な場合があります。

四肢を切断した後の痛み、外傷・手術などによる神経障害の痛み

事故や手術などによって上肢や下肢を切断した後、失った手や足があるかのような感じがして(幻肢感覚)また痛む(幻肢痛)場合があります。
原因は切断によって感覚をつかさどる脳にひずみを生ずるためと考えられています。治療法としては神経障害性疼痛専用の治療薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などの薬物治療、鏡を使った脳神経リハビリテーション、脊髄刺激療法、経皮的磁気刺激法などがあります。痛みは難治性のことが多く、長期的な治療が必要です。
外傷や手術などによって末梢神経や脊髄、脳を損傷した場合、痛みが続く場合があります。
治療法としては薬物治療、神経ブロック療法、脊髄刺激療法などがあります。幻肢痛と同じく難治性のことが多く、長期的な治療が必要です。
神経の傷が少ない場合には自然治癒も見込めます。また最近では手術治療も行われるようになり、当院でも実施を検討しています。

 

頭痛・顔面痛

三叉神経痛

三叉神経痛は顔面に発作性の激烈な痛みが起こる疾患です。
痛みの特徴は顔面への軽い接触または筋肉の動き(洗顔、ひげ剃り、咀嚼、歯磨き、会話など)であり、それらの刺激により痛みを誘発します。
時には顔に当たる風でさえ痛みを起こすこともあり、だいたい数秒から数分間持続するカミナリが落ちたような痛みを誘発します。
また四季のなかでまったく痛みの無い時期が存在するのもこの病気の1つの特徴です。治療としては以下の4つが代表的です。

薬物療法

治療としてはまず飲み薬(カルバマゼピン)が有効です。
この薬は特発性三叉神経痛の特効薬ですが副作用(眠気、ふらつき、薬疹、骨髓抑制、肝機能障害)も多いのが欠点です。そのため定期的な血液検査を要します。

神経ブロック治療

飲み薬による治療が無効、あるいは副作用のため続けることができない場合に、高周波熱凝固法という方法で神経ブロック治療によって痛みをとめることができます。
専用の神経ブロック針を用いて三叉神経節や枝分かれした神経に熱を加えることにより、発作痛が一定期間起こりにくくなります。副作用として治療後に顔のしびれや感覚の低下が必ず起こりますが、痛みにより食事などの日常生活がままならない場合には副作用を上回るメリットがあり、特に高齢の方で有用な治療法です。長期的には顔のしびれが改善すると共に痛みが再発しますが、神経ブロック治療は繰り返し実施することができます。
外来で実施できる方法(三叉神経末梢枝ブロック)と入院が必要な方法(三叉神経節ブロック)があり、痛みが起こる顔の部位によって方法を選択します。いずれの方法も低侵襲で、80、90歳代の高齢者の方でも安全に実施することができます。

脳外科的治療

近年、三叉神経痛の原因の多くが動脈硬化を生じた血管の三叉神経への圧迫であることが明らかになってきました。
そこで1967年にアメリカのジャネッタ医師が痛みの原因となっている脳深部血管の三叉神経への圧迫を手術によって取り除く(神経血管減圧術)という方法を発表して以来,多くの施設でその有効性が確認されています。
この様な三叉神経痛に対する外科的治療法は,病気の根本原因を治療するといった意味では,いたって合理的な治療法だと考えられています。
手術がうまくいけば手術直後より痛みから解放されます。

ガンマナイフ

三叉神経に放射線を照射して痛みを抑える治療法ですが、当院では実施していません。

慢性頭痛

代表的な慢性頭痛として、①片頭痛 ②緊張型頭痛 ③群発頭痛があります。
片頭痛と群発頭痛は,痛みの程度が強く生活への影響がとても大きい病気ですが、適切なお薬を正しく使っていただくことで痛みをしっかり抑えることができ、生活の質も大きく改善します。頭痛の頻度が多い難治性の患者さんにおいても、新しい注射薬でかなり予防することができるようになりました。当方では,単に薬を処方するだけでなく,効果や副作用は勿論,お一人お一人のライフスタイルを十分聞いた上で最良の対処法をアドバイスするよう心がけております。
「しめつけられるような」痛みが特徴の緊張型頭痛の場合には,比較的くすりの効果も良くないですが,漢方薬や生活指導などもおこないながら対応していきます。
慢性頭痛の中には,稀ではありますが脳の器質的な異常が原因である場合もあります。十分な診察を行った上で,そのような病気を見つけるためにより詳しい検査をお勧めする場合もあります。

 

がん性疼痛

がん患者の有痛率

図1がん性疼痛の出現率と病気の進行度(平賀一陽,2004より改変)

がんに伴っておこる症状のなかで、「痛み」は最も苦痛な症状であり、かつさまざまな病気の段階でみられます(図1)。
そのため、がんの痛みをとることは、苦痛のない生活を送れるようにするだけでなく、がん自体の治療をより積極的に進めるためにも非常に大切なことと言えます。
平成19年4月1日よりがん対策基本法が施行され、「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」が重点課題として挙げられ、より積極的ながん性疼痛治療の必要性が認識されるようになりました。

がん性疼痛(全人的な痛み)

図2がん患者の痛み
(淀川キリスト教病院編 緩和マニュアル2007より改変)

がんの痛みは、図2のように「全人的な痛み」として治療に当たることが重要と言われていますが、なかでも「身体的な痛み」を抑えることは最も重要で、適切に鎮痛薬を使うことでその多くが緩和されます。
また、痛みがおきる原因が腫瘍そのものにより引き起こされる場合もあれば、がん治療に伴う痛みや体の衰弱に伴う痛みなど様々であるため、患者さん一人一人で鎮痛薬の必要量や種類は大きく異なります。
大阪大学医学部附属病院麻酔科ペインクリニックでは、大阪大学医学部附属病院でがん治療を受けている患者さんを中心に、入院患者さんには緩和ケアチームが、通院患者さんには麻酔科ペインクリニック外来が痛みのコントロールに関する相談および治療に当たっています。鎮痛薬の効果が不十分な場合、あるいは鎮痛薬の副作用をできるだけ抑えるために、専門的な神経ブロック治療(腹腔神経叢ブロック、くも膜下フェノールブロック、経皮的コルドトミー、など)、くも膜下モルヒネ注入ポート埋込術などを行っています。

 

原因の明らかでない痛み

誘引なく全身、舌、口腔内、会陰部などに痛みが続くことがあります。
いろいろな診療科で検査をしても異常が見つからない場合には、どこの診療科を受診したらよいか困る場合が多いようです。このような痛みも長く続くと治療抵抗性となります。治療方法としては抗うつ薬や漢方薬などの薬物治療、及び運動療法や心理療法を含めた集学的治療が中心となります。

 

複合性局所疼痛症候群(CRPS)

外傷や手術後に不釣り合いな痛みが手足に持続することがあります。
浮腫や皮膚温の左右差、発汗の異常などを伴う場合、複合性局所疼痛症候群(CRPS)と呼ばれる病気の可能性があります。
この病態の原因は明らかでなく、我々は厚生労働省の研究班として活動し、その基準作りをしてまいりました。
治療としては理学療法が中心となりますが、神経ブロック、薬物治療や脊髄刺激療法などを併用することがあります。
治療方針は個々の患者さんの病態に応じて決定いたします。

 

痛みの治療 ペインクリニックでは

ペインクリニックでは様々な疼痛疾患の診断・治療を行います。神経ブロックをはじめ、投薬治療、手術療法、リハビリテーション、心理療法と様々な治療法を組み合わせて症状の軽減を目指します。

神経ブロック

神経ブロック療法では様々な疼痛疾患の診断・治療を行うこができます。神経ブロック治療では痛みを伝える知覚神経のみならず、自律神経のひとつである交感神経もブロックすることから、痛みを抑える効果に加えて血流改善効果も期待出来ます。治療は神経ブロック単独で行われることは少なく、薬物療法などと組み合わせて行われます。

神経ブロック治療とは

診断、治療を行うことが出来ます。
神経ブロック治療は、急性および慢性の痛みをきたす様々な疾患(脊椎疾患、神経の障害による痛み、血流の障害による痛み、など)に対して行われる治療法の一つです。
痛みを起こす神経周囲および関節の炎症を静める、痛みの伝わりをおさえる、血流を改善する、などの作用により、強い痛みをおさえることを目的としています。痛みの診断と治療を同時に進めることができます。
大きく分けると3つの方法があり、1つは局所麻酔薬と炎症を抑える薬(ステロイド)を注入する方法で、2つめは痛みを伝える神経の電気活動を抑える方法(パルス高周波法*)、もう1つは痛みを伝える神経を変性させる方法(アルコール注入、高周波熱凝固法**、など)です。
患者さんにより神経ブロックの方法や、施行する回数は異なります。
*パルス高周波法:専用の針と装置を用いて神経に高周波を当てる治療法
**高周波熱凝固法:専用の針と装置を用いて神経に熱を加える治療法

硬膜外ブロック

脊髄は背骨の内側で骨にまもられるように存在しますが、さらに硬膜と呼ばれる膜に包まれて2重に保護されています。
硬膜外ブロックは、硬膜の外側(硬膜外腔)に治療薬を注入することにより、脊髄付近の炎症を鎮め、痛みの伝わりを抑える方法です。
姿勢はうつ伏せ、または横向きで背中を丸くした体勢で行います。座った姿勢で行う場合もあります。
背骨のすきまから針を進め、硬膜外腔に針の先端が到達したところで治療薬を注入します。
硬膜外腔にカテーテルを挿入し持続的な神経ブロックを行う場合や、カテーテルから生理食塩水を注入して炎症がある部位の洗浄を行う方法を行うこともあります。

神経根ブロック

脊髄から多くの神経が枝分かれし、全身(首から下)に広がっていきます。これを脊髄神経と言いますが、この脊髄神経が背骨から外へ出てくる根もとの部分に注射することによって痛みをおさえる方法が神経根ブロックです。
姿勢はうつ伏せ、またはあお向けで行います。
レントゲンで神経が出てくる背骨の穴を確認しながら、神経にむけて針を進めます。
針の先が神経に届くと、神経の走行に沿った場所に痛みが誘発されます。造影剤を注入し神経を確認した後、治療薬を注入します。
多くの場合、注入後すぐに神経が分布する部位の痛みが消失します。

椎間関節ブロック、脊髄神経後枝内側枝ブロック

背骨は首から腰まで骨がつながって存在しますが、その背骨をつないでいる関節のことを椎間関節と呼びます。
椎間関節に負担がかかる、または関節が変形することにより痛みが出る場合に、関節に注射をして炎症を抑える、あるいは関節の痛みの伝わりを抑えることで改善することがあります。
痛みの原因となる関節に注射する方法を椎間関節ブロックといい、関節の痛みを伝える神経(脊髄神経後枝内側枝)がとおっている背骨の表面に薬を注入して痛みを抑える方法を脊髄神経後枝内側枝ブロックといいます。

腕神経叢ブロック

腕や手の運動・感覚をつかさどる神経は、首の脊髄から枝分かれした神経によって構成されています。
首の骨から外へ出た神経の何本かが合流したり枝分かれしながら肩、腕、手へと広がっていきます。
この神経の合流部のことを腕神経叢(わんしんけいそう)と呼び、膜のなかに包まれて存在します。この腕神経叢へ治療薬を注入し痛みを抑える方法を腕神経叢ブロックといいます。ベッド上であお向けの姿勢で行います。
痛みがある側の首のつけねから針を進め、神経を包む膜のなかに針先が入ったところで造影剤を注入し、神経叢が確認されれば治療薬を注入します。

星状神経節ブロック

慢性の痛みが続く場合に、体の機能を調節する交感神経が痛みに関与している場合があるといわれています。
星状神経節ブロックは、首にある交感神経節(星状神経節)に局所麻酔薬を注入し、交感神経の働きを抑えることにより痛みを緩和することを目的としています。

腰部交換神経節ブロック

交感神経とは、体の機能を調整する自律神経の一つで、血管に対しては収縮させるように機能しています。腰部交感神経節ブロックとは、下肢の血流調節に関係している神経の集まり(腰部交感神経節)に局所麻酔薬を注入する、または交感神経節を変性させることにより、下肢の血流を改善させる方法です。
下肢の血流が障害される病気、あるいは交感神経の活動を抑えることによって下肢の痛みが緩和される可能性がある場合に、患部の診断と治療を同時に進めることを目的としています。
腰部交感神経節ブロックの方法には、局所麻酔薬によって一時的に神経をブロックする方法と、神経を変性させて効果を持続させる方法があります。後者には、アルコールを注入する方法と特殊な針で神経に熱を加える方法(高周波熱凝固法)があります。
レントゲンを見ながら、背中から背骨に向けて針を進めます。針先を交感神経節のある背骨の前面まで進め、造影剤を注入し、問題なければ局所麻酔薬を注入します。
神経を変性させる場合は、局所麻酔薬注入後に異常がないか確認したのちアルコール注入または高周波熱凝固を行います。
高周波熱凝固法は、針先以外には熱が加わらない特殊な針を用いて行うため、神経節の部位のみを熱凝固することができます。

三叉神経節ブロック

三叉神経痛のページを参照

 

薬物療法

痛みに対する薬物治療には、鎮痛薬を用いる方法とガバペンチノイド、抗うつ薬や抗てんかん薬といった神経障害性疼痛治療薬を用いる方法、漢方治療があります。

ガバペンチノイド

神経障害性疼痛、線維筋痛症などに対して効果が期待できます。
プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチンの3つがあり、神経障害性疼痛の第一選択薬です。比較的副作用が少ないお薬ですが、人によっては眠気、ふらつき、浮腫に注意が必要です。

抗うつ薬

帯状疱疹後神経痛、有痛性糖尿病性神経障害、慢性頭痛、慢性腰痛などに対して効果が期待できます。
抗うつ薬の種類としてはアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬、デュロキセチンなどのSNRIなどがあります。
三環系抗うつ薬は口渇、排尿障害、動悸、便秘、倦怠感などの副作用があり、少量で治療を行います。SNRIは吐き気がでる可能性があるものの、副作用は比較的少なめです。

抗てんかん薬

カルバマゼピン、クロナゼパムといった、てんかんの治療に使われる薬がいたみの緩和に役立つことがあります。
三叉神経痛の特効薬といえばカルバマゼピンです。初発であれば三叉神経痛の半分以上のかたがカルバマゼピンによって痛みは消失します。
効果のある投与量、出現する副作用に個人差が大きい薬ですので、慎重に投与する必要があります。

オピオイド鎮痛薬
医療用麻薬

オピオイド鎮痛薬は、主に脳や脊髄において痛みの伝わりをおさえることにより鎮痛作用を発揮するお薬です。
オピオイドとは、モルヒネとその類似物質のことをいいます。不適切な使用による依存性を考慮して、法律にて麻薬と指定されているため、麻薬性鎮痛薬、医療用麻薬とも呼ばれます。しかし、痛みの治療のために適切に使用する限り、精神依存や中毒といった心配される副作用は起こりません。
オピオイド鎮痛薬は、がんの痛み、急性の強い痛み(手術中・手術後の痛み、など)の治療薬として最も効果的なお薬です。
がん以外の慢性的な痛みに対しても効果的なことがありますが、すべての慢性痛の患者さんに有効というわけではありません。
がんの痛みに対しては、痛みの強さに応じてオピオイド鎮痛薬の量を調節し、決められた使い方を守って使用することにより、多くの痛みを取ることができます。
副作用として、便秘、吐き気、眠気などが出現する場合があり、特に便秘は必ずおこります。しかし、それらの副作用は予防薬・治療薬をうまく組み合わせることで多くは対応できるため、副作用対策をしっかり行うことが痛みの治療にとって重要になります。
オピオイド鎮痛薬には、モルヒネ以外にオキシコドン、フェンタニルなどのお薬があり、それぞれ少しずつ異なった特徴があります。
また、飲み薬、注射薬、貼り薬など薬の形もいくつかの種類があり、患者さんごとに適した種類を選んで使うことができます。
オピオイド鎮痛薬は、痛みが改善すれば減らしたり、やめることができます。しかし、急に中止すると腹痛、発汗などの離脱症状がでる可能性があるため、ご自分の判断で急に中止せず医師の指示に従ってゆっくり減量するようにしてください。

漢方治療

漢方薬による痛みの治療

痛みについて、2千年前の中国の漢方医学教科書である黄帝内経(こうていだいけい)では、「通則不痛、不通即痛」と記載されています。
訓読みすると「通じれば即ち痛まず、通じざれば即ち痛む」となります。つまり、何らかの原因によって、からだの正常な流れに詰まりを生じた時に痛みを生じるという考えです。
これは心筋梗塞のように、心臓の血管が詰まれば激烈な胸痛を生じますが、カテーテル治療により詰まりを解除すれば途端に痛みが改善するというように、現代医学でも通用する概念といえるでしょう。
それでは、何が詰まりの原因になるのでしょうか。
漢方医学では、気血水という概念があります。気は体を活動させるエネルギー、血は体の基礎となる液体、水は体を潤す液体、とされています。
これらが停滞すると病的状態となります。
治療では何が詰まっているのかを明らかにし、その詰まりを除去するような漢方薬を投与します。
西洋医学的には異常がないとされても、漢方医学的には上記のような異常がみられる患者さんも多く存在し、漢方薬の投与によって嘘のように痛みがなくなったということもよく経験します。

 

低侵襲痛みの治療

従来の保存的治療では痛みが軽減できない方に対して、当院で行われている治療法について紹介いたします。

高周波熱凝固法(Radiofrequency Thermocoagulation ,RF)

高周波熱凝固法は先端に熱を加えることができる特殊な針を用いて、痛みを伝える神経を編成させることにより、長期間痛みの伝わりを抑えることを目的とした治療法です。局所麻酔薬を用いた神経ブロック治療で一定の効果が見られた患者さんが対象となります。

脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固法

脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固法は、背骨の関節に痛みが出る人に対して、関節の痛みを伝える神経(脊髄神経後枝内側枝)を熱で変性させる事により、長期間痛みの伝わりをおさえます。

針の先端に弱い電流を流した状態で、背骨の表面で針を動かし神経に針先が触れる場所を探します。針先が神経に触れると、関節付近に痛みを感じ、電流を止めると痛みも治まります。
神経の場所が確認できたら造影剤と局所麻酔薬を少量注入し、異常がないことを確認した後、針の先端に約90度の熱を加えて関節の痛みを伝える神経だけを熱で変性させます。


パルス高周波療法(Pulsed Radiofrequency Treatment, PRF)

パルス高周波療法は、急性および慢性の痛みをきたす様々な疾患(脊椎疾患、関節痛、神経の障害による痛みなど)に対して行われる治療法の一つです。特殊な針の先端から高周波エネルギーを間欠的に加えることで、神経を傷めずに痛みだけを抑える方法で、その神経が支配する部位の痛みを一時的に、または長期的におさえることを目的としています。高周波熱凝固法と異なり、針先の温度は42度以下に抑えられるため、しびれや力の入りにくさといった副作用がおこらないと考えられています。

神経根パルス高周波療法

脊髄から多くの神経が枝分かれし、全身(首から下)に広がっていきます。これを脊髄神経と呼びますが、この脊髄神経が背骨から外へ出てくる根もとの部分に、高周波エネルギーを間欠的に加えることで、神経を傷めずに痛みだけをおさえる方法が神経根パルス高周波療法です。頚椎症に伴う腕の痛みや、坐骨神経痛などに効果があります。
レントゲンもしくはエコーで治療を行う神経や目印となる骨を確認し、局所麻酔の注射を行い、麻酔が効いたところで治療を開始します。レントゲンやエコーで確認しながら、神経にむけて針を進めます。針の先が神経に近づいたら、針の先から電気を流して、あなたがいつも痛みを感じている部位に刺激が感じられることを確認します。確認が終わったら、2分間のパルス高周波療法を1から3回行います。
*慢性の腰下肢痛
*頚部痛・肩関節痛

肩甲上神経パルス高周波療法

脊髄からは多くの神経が枝分かれし、肩関節から上肢に広がっていきます。枝分かれした神経はさらに分岐したり合流したりを繰り返しますが、首のあたりでは腕神経叢と呼ばれ、この腕神経叢から肩甲上神経や腋窩神経など肩や脇に広がる神経が分岐します。これら枝分かれした後の肩甲上神経に、高周波エネルギーを間欠的に加えることで、神経を傷めずに痛みだけをおさえる方法が肩甲上神経パルス高周波療法です。慢性の肩関節痛に対する肩甲上神経パルス高周波療法の有効性はすでに複数の研究によって証明されています。

エコーで治療を行う神経を確認し、局所麻酔を行い、麻酔が効いたところで治療を開始します。エコーで確認しながら、神経にむけて針を進めます。針の先が神経に近づいたら、針の先から電気を流して、あなたがいつも痛みを感じている部位に刺激が感じられることを確認します。確認が終わったら、2分間のパルス高周波療法を3回行います。治療中は、神経が刺激されることでびりびりしたり、ぴくぴくと動いたりします。刺激による痛みが強い場合は、少量の局所麻酔薬を使用することも出来ます。
当科ではこれまでに、肩関節周囲炎や肩腱板(不全)断裂に伴う肩関節痛や、肩関節手術後に長引く痛み(遷延性術後痛)等を対象に、肩甲上神経パルス高周波療法を行っています。約70%の患者さんの肩の痛みに有効です。一度治療を受けていただくだけで、3か月から1年以上効果が続きます。

伏在神経パルス高周波療法

脊髄からは多くの神経が枝分かれし、下肢に広がっていきます。枝分かれした神経には大腿神経や坐骨神経などがあり、大腿神経から伏在神経が枝分かれし、膝下の内側周囲の皮膚や関節へとひろがっています。これら枝分かれした後の伏在神経に、高周波エネルギーを間欠的に加えることで、神経を傷めずに痛みだけをおさえる方法が伏在神経パルス高周波療法です。
エコーで伏在神経を確認し、皮膚の消毒、局所麻酔の注射を行います。エコーで確認しながら、神経にむけて針を進めます。針の先が神経に近づいたら、針の先から電気を流して、あなたがいつも痛みを感じている部位(おもに膝下の内側)に刺激が感じられることを確認します。確認が終わったら、2分間のパルス高周波療法を4回行います。治療中は、神経が刺激されることでびりびりしたり、ぴくぴくと動いたりします。

当科ではこれまでに、変形性膝関節症に伴う膝関節痛を対象に、伏在神経パルス高周波療法を行っています。約75%の患者さんの膝の痛みに有効です。1回の治療により3か月から1年以上効果が続きます。
その他の対象疾患としては、膝関節術後に長引く痛み(遷延性術後痛)などがあります。
*当科では変形性膝関節症に伴う難治性膝痛の臨床研究にご協力いただける方を募集しています。詳細は「臨床研究」のページをご覧ください。
*変形性膝関節症

硬膜外脊髄刺激療法(Spinal Cord Stimulation, SCS)

慢性疼痛治療のひとつである脊髄刺激療法は、脊髄に微弱な電気を流すことにより、慢性の痛みを和らげる治療法です。これまでに国内では約6000人の患者さんに実施されています。治療の流れは以下の通りです。

①トライアル(試験刺激)

脊髄を包む硬膜という膜の外側に,ボールペンの芯より少し細い程度の電極(リード)を背中から注射針を通して入れます。
まずは,体の外からその電極に電気を流し,痛みのある体の場所に電気の刺激が感じられるように電極の場所を設定します。
からだの外から電気を流して,普段の痛みが和らぐかどうかを観察します。数日間観察して効果があれば,スイッチと電池の役目をする装置を腹部や鎖骨の下あたりの皮膚の下に埋め込んで,患者さん御自身で操作できるようにします。
からだの外から電気を流して,普段の痛みが和らぐかどうかを観察します。数日間〜一週間観察して効果があるかどうかを判定します。効果判定の後は、一旦電極を抜きます。

②刺激装置の埋め込み

効果があれば、後日埋め込み手術を行います。トライアルの時と同じ方法で、電極を背中から注射針を通して入れた後に、スイッチと電池の役目をする装置を腹部や鎖骨の下あたりの皮膚の下に埋め込んで,患者さん御自身で操作できるようにします。
この治療の対象疾患としては,脊椎の手術後に残存した慢性の痛み,末梢神経障害性疼痛,脊髄障害性疼痛の一部のものなどの難治性の痛みの方です。適応かどうかは,一概に病名だけでは決められませんし,上記病名以外の方にも適応できる場合が多いですから,希望される方は当科に受診のうえご相談ください。

経皮的髄核摘出術

腰椎、および頚椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲手術法です。薬物療法や神経ブロック治療に抵抗性の痛みが続き、通常の椎間板摘出手術の適応とならない患者さんに対して行われます。
皮膚をメスで切らずに、X線透視下に専用の細い筒を椎間板の中に刺入して、筒の中から椎間板をごく少量摘出し、高周波やプラズマにより椎間板内の減圧を行います。
手術は局所麻酔で実施可能で、短期間の入院治療により早期の社会復帰を目指します。
椎間板性腰痛の患者さんの一部に対しても腰痛の改善効果が期待できます。

経皮的硬膜外腔癒着剥離術(Raczカテーテル)

東京医研株式会社資料より

腰椎疾患(腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎術後疼痛症候群)および頚椎疾患(頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症)に対する低侵襲手術法です。薬物療法や神経ブロック治療に抵抗性の痛みが続き、脊椎の除圧手術の適応とならず、脊柱管内で神経周囲の癒着が痛みの原因となっている患者さんに対して行われます。
皮膚をメスで切らずに、専用の針を通して癒着剥離用のスプリングガイドカテーテル(Raczカテーテル)を脊柱管内の癒着組織に挿入します。カテーテルから生理食塩水などの薬液を注入することにより神経周囲の癒着を剥がして神経痛の原因を取り除きます。
手術は局所麻酔で実施可能で、短期間の入院治療により早期の社会復帰を目指します。

 

エピドラスコピー
内視鏡的難治性腰下肢痛治療

エピドラスコピー(硬膜外内視鏡)は慢性の腰痛や難治性の腰部椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの坐骨神経痛、腰椎手術後も下肢痛にしびれや痛みが残存し、手術後の神経周囲の癒着などが考えられる場合に、内視鏡を硬膜外腔に入れて癒着を剥離して治療するもので、従来の保存的治療が無効な方に対して行われる治療法の1つです。
この方法は手術室で以下の手順で行います。手術室にてお腹の下に枕を入れうつ伏せになります。お尻の上に局所麻酔の注射をし、直径1mm以下の細い内視鏡を仙骨硬膜外腔に挿入します。
内視鏡およびX線透視下に神経、血管、脂肪などを見ながら、痛みの原因となっている神経周囲の病変を観察し、痛みの原因となっている神経と周囲の癒着組織を剥離、洗浄します。

エピドラスコピーの対象疾患

腰椎椎間板ヘルニア 14例
腰部脊柱管狭窄症 23例
椎弓切除術後症候群
Failed Back Syndrome
15例
腰椎分離すべり症 3例
2002-2007年合計 計58例

治療成績

疾患別治療成績

 

リハビリテーション

慢性の痛みで起こった運動機能障害や不快な感覚に対してリハビリテーションの手法を用いて活動度の改善、症状の緩和を行います。当科では多くの疾患で神経ブロック治療と組み合わせてリハビリテーションを行います。
幻肢痛や引き抜き損傷後疼痛に対する鏡療法(神経リハビリテーション)の研究、治療も行っています(現在休止中)

慢性の痛みに対するリハビリテーション療法

難治性疼痛に対する視覚を介した神経リハビリテーション

痛みは身体の危険信号として生体に備わっている生理的な神経システムです。
つまり、体性感覚の一つである“痛み”と“身体”は、切っても切り離せない関係にあります。
さらには、身体の認知には視覚が非常に重要なことから、ヒト神経因性疼痛を対象として視覚と体性感覚(痛み)の相互作用研究および痛みに対する神経リハビリテーション治療の開発を行っています。

 

認知行動療法

痛みという症状は慢性化するとその症状に意識が集中し「痛みにとらわれる」ことが一つの特徴です。
「痛みがあるから~できない」
という思いに陥り、ますますとらわれてしまいがちです。

このような考え方がかえってご自身を苦しめる結果になっていることは意外と患者本人は気づきません。
痛みという感覚の性質を御理解いただき、
「痛みはあるけど~はできる」
という前向きな考え方に改めることができれば、慢性痛の治療は半分以上終わったとも言えます。
認知行動療法とはそのような考えになる過程を、医師がささえていく診療方針全体を指します。

 

臨床研究

1. 臨床研究とは

臨床研究とは新しく開発された薬剤、検査法や治療法が病気に対し安全かどうか、また有効かどうかを患者さんにご協力いただいて行う研究を意味します。治療法が進歩するためにはこのような研究を積み重ね情報を得ることが不可欠で、現在標準治療法とされているものの多くはこれまでの患者さんのご協力に基づいた臨床研究によってできあがったものです。

2. 臨床研究の参加

臨床研究に参加するかしないかは自由であり、参加されない場合でも治療に際し不利益を受けることはありません。また、参加された後でも自由にやめることができます。すなわち、患者さんの自由意思です。

3. 同意書について

担当医がこの臨床研究に関する説明を行った後に、患者さんの参加または不参加の意思を確認させていただきます。この研究の参加に同意した後でも、理由にかかわらずいつでも辞退することができ、治療で不利益になることはありません。

現在進行中の臨床研究

  1. 難治性疼痛及び慢性疼痛に対する学際的治療の多面的評価
  2. コロナ禍における帯状疱疹関連痛の発症に影響を与える因子の後方的調査