腫瘍外来
1. 担当医師
- 教授
- いのはら ひでのり
- 猪原 秀典
- 昭和62年 大阪大学卒
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定耳鼻咽喉科専門医
日本頭頸部外科学会認定頭頸部がん専門医
日本内分泌外科学会認定内分泌外科専門医(甲状腺)
日本甲状腺学会認定甲状腺専門医
- 助教 学部内講師
- すずき もとゆき
- 鈴木 基之
- 平成13年 大阪大学卒
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定耳鼻咽喉科専門医
日本頭頸部外科学会認定頭頸部がん専門医
- 助教
- きしかわ としひろ
- 岸川 敏博
- 平成22年 大阪大学卒
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定耳鼻咽喉科専門医
- 助教
- かとう ひろし
- 加藤 裕
- 平成28年 広島大学卒
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定耳鼻咽喉科専門医
- 特任助教
- はやし かずき
- 林 計企
- 平成28年 大阪大学卒
2. 診療の特徴
口腔がん
舌がん、口腔底がん、歯肉がんなどの口腔がんの治療では手術が主体となります。進行がんの手術では嚥下機能が低下し、誤嚥が生じやすくなります。そのため嚥下機能改善手術や誤嚥防止手術が必要となることが少なくありません。耳鼻咽喉科・頭頸部外科の大きな特徴は、こうした手術を併せて行うことが可能なことです。術後は専任の医師や言語療法士による嚥下障害や構音障害のリハビリテーションを徹底し、社会復帰をサポートしています。
喉頭がん、下咽頭がん
早期がんの治療では、経口的切除あるいは放射線療法を行います。進行がんの治療では、喉頭の温存、すなわち発声機能の温存が大きな問題となります。手術で喉頭を摘出すると発声機能を失いますが、抗癌剤と放射線を併用する化学放射線療法により喉頭温存が可能なことも少なくありません。当科では治療前のPET/CT画像から腫瘍の体積を計測し、これに基づいた適切な治療法の選択を行うことが可能です。これまで多くの患者さんで喉頭温存に成功しています。万一喉頭摘出が必要な場合は、代用音声とよばれる発声機能の獲得を積極的に指導しています。
中咽頭がん
中咽頭がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となるHPV関連がんと、喫煙・飲酒が原因となるHPV非関連がんに大別されます。近年、HPV関連がんは増加傾向にありますが、HPV関連がんはHPV非関連がんと比べ予後が良好です。そこで、HPV関連がんでは従来と比べ低侵襲な治療を行うことにより、良好な予後を保ったままQOLを向上することが可能と考えられています。現在世界各国でそうした低侵襲治療の有効性を検証するための臨床試験が行われており、当科でも積極的に臨床試験を行っています。
上咽頭がん
上咽頭がんはEpstein-Barrウイルスの感染が原因となります。早期がんは放射線療法、進行がんは化学放射線療法による治療を行います。
鼻・副鼻腔がん
早期がんは内視鏡を用いて経鼻的に切除します。進行がんでは手術を行うと顔面の変形が問題となります。そこで、腫瘍を栄養する動脈へ抗癌剤を直接注入し、併せて放射線療法を行う超選択的動注化学放射線同時併用療法を行っています。
唾液腺がん
唾液腺、特に耳下腺に発生するがんでは腺内を顔面神経が走行するため、その取扱いが問題となります。当科では可能な限り顔面神経を温存して手術を行います。また、適応がある場合は重粒子線治療を紹介しています。一方、良性腫瘍については整容面に配慮した皮膚切開で手術を行っています。
甲状腺がん
甲状腺がんの治療は手術が第一選択となります。甲状腺がんでは声帯麻痺により嗄声を来すことが稀ではありません。当科ではさまざまな音声改善手術を行い、嗄声の改善を図っています。また、縦隔に進展したり、あるいは喉頭や気管、食道へ浸潤した難治例に対する手術を積極的に行っているのも特徴です。更に、放射性ヨードによる治療や分子標的薬による治療も行っています。
3. 手術・診療実績
令和5年に当科で加療した悪性腫瘍の新規例は以下の通りです。
部位 | 症例数 |
---|---|
聴器がん | 6 |
鼻・副鼻腔がん | 13 |
口腔がん | 27 |
上咽頭がん | 11 |
中咽頭がん | 36 |
下咽頭がん | 44 |
喉頭がん | 25 |
唾液腺がん | 7 |
甲状腺がん | 41 |
原発不明がん | 2 |
4. 研究
- 将来より良い医療を患者の皆さんに提供できるよう、当科では次のような研究に取り組んでいます。どうかご協力をよろしくお願いいたします。
- 既に当科で治療あるいは検査を受けられた方の中で、*のついた研究においてご自身の既存情報(画像データ、血液検査データなど)が使われることを希望されない場合は当科まで(耳鼻咽喉科・頭頸部外科学医局:06-6879-3951)ご連絡ください。
臨床研究
より有効ながんの治療法や診断法の開発を目指して、実際に患者さんに参加していただいて行う研究です。
- 切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌患者を対象としたアキャルックスおよびBioBladeレーザシステムによる頭頸部イルミノックス治療の有効性および安全性に関する観察研究
- 臨床因子から算出したスコアを用いた頭頸部癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測能の後方視的検討
- サルコペニアが免疫チェックポイント阻害薬の効果に与える影響に関する研究
- 切除可能なHPV関連局所進行中咽頭進行がんに対する放射線単独療法による低侵襲治療 多施設共同第Ⅱ相試験
- 再発・転移頭頸部扁平上皮がんに対するmodified PFE療法とmodified TPEx療法を比較するランダム化第Ⅱ相多施設共同試験
- 腫瘍代謝容積に基づく局所進行喉頭・下咽頭がんに対する治療の最適化 多施設共同第Ⅱ相試験(仮称)
- 頭頸部がん患者における放射線療法期間中の患者報告アウトカム(PROs)に基づく急性期有害事象と日常生活への影響に関する後方視的研究
橋渡し研究
患者さんから得られた検体や画像データなどを用いて、新たながんの治療法や診断法の開発を目指して行う研究です。
- 頭頸部領域腫瘍のリスク評価に関するゲノム研究*
- 臨床検体を用いた甲状腺腫瘍の分子遺伝学解析とその社会実装に関する研究*
- PET/CT画像のtexture解析、腫瘍代謝容積に基づく予後診断*
- HPV関連頭頸部癌に対するliquid biopsyの有用性に関する検討*
- 臨床検体を用いた頭頸部腫瘍のゲノム解析とそれを基盤としたリキッドバイオプシーなどの社会実装に関する研究*
- 頭頸部腫瘍患者において腫瘍細胞と微小環境を形成する免疫細胞及び間質細胞の遺伝子発現プロファイルから治療感受性に与える影響を解析する研究*
- HPV関連中咽頭がんの前がん病変の検出とそのバイオマーカーの検出
基礎研究
培養細胞や実験動物、あるいは患者さんから得られた検体を用い、発がんのメカニズムなどを研究します。また、新規の抗がん剤の開発などを目指した研究を行います。
- 嫌気性解糖を標的とした頭頸部がんの新規治療法の開発
- Notch signalingを標的とした頭頸部がんの新規治療法の開発
- HPV関連中咽頭がんモデルマウスの開発
- E6/E7を標的としたHPV関連中咽頭がんの新規治療法の開発
- p16陽性/HPV DNA陰性中咽頭がんの遺伝子背景の解明
- 口腔内細菌叢と頭頸部がんのゲノム異常の検討*
- 甲状腺濾胞性腫瘍のゲノム異常の解析*
- ホウ素中性子補足療法における新たなホウ素化合物の基礎的検討