ペインクリニック部門

痛みの治療 ペインクリニックでは

ペインクリニックでは様々な疼痛疾患の診断・治療を行います。神経ブロックをはじめ、投薬治療、手術療法、リハビリテーション、心理療法と様々な治療法を組み合わせて症状の軽減を目指します。

神経ブロック

神経ブロック療法では様々な疼痛疾患の診断・治療を行うこができます。神経ブロック治療では痛みを伝える知覚神経のみならず、自律神経のひとつである交感神経もブロックすることから、痛みを抑える効果に加えて血流改善効果も期待出来ます。治療は神経ブロック単独で行われることは少なく、薬物療法などと組み合わせて行われます。

神経ブロック治療とは

診断、治療を行うことが出来ます。

神経ブロック治療は、急性および慢性の痛みをきたす様々な疾患(脊椎疾患、神経の障害による痛み、血流の障害による痛み、など)に対して行われる治療法の一つです。

痛みを起こす神経周囲および関節の炎症を静める、痛みの伝わりをおさえる、血流を改善する、などの作用により、強い痛みをおさえることを目的としています。痛みの診断と治療を同時に進めることができます。

大きく分けると3つの方法があり、1つは局所麻酔薬と炎症を抑える薬(ステロイド)を注入する方法で、2つめは痛みを伝える神経の電気活動を抑える方法(パルス高周波法*)、もう1つは痛みを伝える神経を変性させる方法(アルコール注入、高周波熱凝固法**、など)です。

患者さんにより神経ブロックの方法や、施行する回数は異なります。

*パルス高周波法:専用の針と装置を用いて神経に高周波を当てる治療法
**高周波熱凝固法:専用の針と装置を用いて神経に熱を加える治療法

硬膜外ブロック

脊髄は背骨の内側で骨にまもられるように存在しますが、さらに硬膜と呼ばれる膜に包まれて2重に保護されています。

硬膜外ブロックは、硬膜の外側(硬膜外腔)に治療薬を注入することにより、脊髄付近の炎症を鎮め、痛みの伝わりを抑える方法です。

姿勢はうつ伏せ、または横向きで背中を丸くした体勢で行います。座った姿勢で行う場合もあります。

背骨のすきまから針を進め、硬膜外腔に針の先端が到達したところで治療薬を注入します。

硬膜外腔にカテーテルを挿入し持続的な神経ブロックを行う場合や、カテーテルから生理食塩水を注入して炎症がある部位の洗浄を行う方法を行うこともあります。

神経根ブロック

脊髄から多くの神経が枝分かれし、全身(首から下)に広がっていきます。これを脊髄神経と言いますが、この脊髄神経が背骨から外へ出てくる根もとの部分に注射することによって痛みをおさえる方法が神経根ブロックです。

姿勢はうつ伏せ、またはあお向けで行います。

レントゲンで神経が出てくる背骨の穴を確認しながら、神経にむけて針を進めます。

針の先が神経に届くと、神経の走行に沿った場所に痛みが誘発されます。造影剤を注入し神経を確認した後、治療薬を注入します。

多くの場合、注入後すぐに神経が分布する部位の痛みが消失します。

椎間関節ブロック、脊髄神経後枝内側枝ブロック

背骨は首から腰まで骨がつながって存在しますが、その背骨をつないでいる関節のことを椎間関節と呼びます。

椎間関節に負担がかかる、または関節が変形することにより痛みが出る場合に、関節に注射をして炎症を抑える、あるいは関節の痛みの伝わりを抑えることで改善することがあります。

痛みの原因となる関節に注射する方法を椎間関節ブロックといい、関節の痛みを伝える神経(脊髄神経後枝内側枝)がとおっている背骨の表面に薬を注入して痛みを抑える方法を脊髄神経後枝内側枝ブロックといいます。

腕神経叢ブロック

腕や手の運動・感覚をつかさどる神経は、首の脊髄から枝分かれした神経によって構成されています。

首の骨から外へ出た神経の何本かが合流したり枝分かれしながら肩、腕、手へと広がっていきます。

この神経の合流部のことを腕神経叢(わんしんけいそう)と呼び、膜のなかに包まれて存在します。この腕神経叢へ治療薬を注入し痛みを抑える方法を腕神経叢ブロックといいます。ベッド上であお向けの姿勢で行います。

痛みがある側の首のつけねから針を進め、神経を包む膜のなかに針先が入ったところで造影剤を注入し、神経叢が確認されれば治療薬を注入します。

星状神経節ブロック

慢性の痛みが続く場合に、体の機能を調節する交感神経が痛みに関与している場合があるといわれています。

星状神経節ブロックは、首にある交感神経節(星状神経節)に局所麻酔薬を注入し、交感神経の働きを抑えることにより痛みを緩和することを目的としています。

腰部交換神経節ブロック

交感神経とは、体の機能を調整する自律神経の一つで、血管に対しては収縮させるように機能しています。腰部交感神経節ブロックとは、下肢の血流調節に関係している神経の集まり(腰部交感神経節)に局所麻酔薬を注入する、または交感神経節を変性させることにより、下肢の血流を改善させる方法です。

下肢の血流が障害される病気、あるいは交感神経の活動を抑えることによって下肢の痛みが緩和される可能性がある場合に、患部の診断と治療を同時に進めることを目的としています。

腰部交感神経節ブロックの方法には、局所麻酔薬によって一時的に神経をブロックする方法と、神経を変性させて効果を持続させる方法があります。後者には、アルコールを注入する方法と特殊な針で神経に熱を加える方法(高周波熱凝固法)があります。

レントゲンを見ながら、背中から背骨に向けて針を進めます。針先を交感神経節のある背骨の前面まで進め、造影剤を注入し、問題なければ局所麻酔薬を注入します。

神経を変性させる場合は、局所麻酔薬注入後に異常がないか確認したのちアルコール注入または高周波熱凝固を行います。

高周波熱凝固法は、針先以外には熱が加わらない特殊な針を用いて行うため、神経節の部位のみを熱凝固することができます。

三叉神経節ブロック

三叉神経痛のページを参照

薬物療法

痛みに対する薬物治療には、鎮痛薬を用いる方法とガバペンチノイド、抗うつ薬や抗てんかん薬といった神経障害性疼痛治療薬を用いる方法、漢方治療があります。

ガバペンチノイド

神経障害性疼痛、線維筋痛症などに対して効果が期待できます。

プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチンの3つがあり、神経障害性疼痛の第一選択薬です。比較的副作用が少ないお薬ですが、人によっては眠気、ふらつき、浮腫に注意が必要です。

抗うつ薬

帯状疱疹後神経痛、有痛性糖尿病性神経障害、慢性頭痛、慢性腰痛などに対して効果が期待できます。

抗うつ薬の種類としてはアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬、デュロキセチンなどのSNRIなどがあります。

三環系抗うつ薬は口渇、排尿障害、動悸、便秘、倦怠感などの副作用があり、少量で治療を行います。SNRIは吐き気がでる可能性があるものの、副作用は比較的少なめです。

抗てんかん薬

カルバマゼピン、クロナゼパムといった、てんかんの治療に使われる薬がいたみの緩和に役立つことがあります。

三叉神経痛の特効薬といえばカルバマゼピンです。初発であれば三叉神経痛の半分以上のかたがカルバマゼピンによって痛みは消失します。

効果のある投与量、出現する副作用に個人差が大きい薬ですので、慎重に投与する必要があります。

オピオイド鎮痛薬
医療用麻薬

オピオイド鎮痛薬は、主に脳や脊髄において痛みの伝わりをおさえることにより鎮痛作用を発揮するお薬です。

オピオイドとは、モルヒネとその類似物質のことをいいます。不適切な使用による依存性を考慮して、法律にて麻薬と指定されているため、麻薬性鎮痛薬、医療用麻薬とも呼ばれます。しかし、痛みの治療のために適切に使用する限り、精神依存や中毒といった心配される副作用は起こりません。

オピオイド鎮痛薬は、がんの痛み、急性の強い痛み(手術中・手術後の痛み、など)の治療薬として最も効果的なお薬です。

がん以外の慢性的な痛みに対しても効果的なことがありますが、すべての慢性痛の患者さんに有効というわけではありません。 がんの痛みに対しては、痛みの強さに応じてオピオイド鎮痛薬の量を調節し、決められた使い方を守って使用することにより、多くの痛みを取ることができます。

副作用として、便秘、吐き気、眠気などが出現する場合があり、特に便秘は必ずおこります。しかし、それらの副作用は予防薬・治療薬をうまく組み合わせることで多くは対応できるため、副作用対策をしっかり行うことが痛みの治療にとって重要になります。

オピオイド鎮痛薬には、モルヒネ以外にオキシコドン、フェンタニルなどのお薬があり、それぞれ少しずつ異なった特徴があります。

また、飲み薬、注射薬、貼り薬など薬の形もいくつかの種類があり、患者さんごとに適した種類を選んで使うことができます。

オピオイド鎮痛薬は、痛みが改善すれば減らしたり、やめることができます。しかし、急に中止すると腹痛、発汗などの離脱症状がでる可能性があるため、ご自分の判断で急に中止せず医師の指示に従ってゆっくり減量するようにしてください。

漢方治療

漢方薬による痛みの治療

痛みについて、2千年前の中国の漢方医学教科書である黄帝内経(こうていだいけい)では、「通則不痛、不通即痛」と記載されています。

訓読みすると「通じれば即ち痛まず、通じざれば即ち痛む」となります。つまり、何らかの原因によって、からだの正常な流れに詰まりを生じた時に痛みを生じるという考えです。

これは心筋梗塞のように、心臓の血管が詰まれば激烈な胸痛を生じますが、カテーテル治療により詰まりを解除すれば途端に痛みが改善するというように、現代医学でも通用する概念といえるでしょう。

それでは、何が詰まりの原因になるのでしょうか。

漢方医学では、気血水という概念があります。気は体を活動させるエネルギー、血は体の基礎となる液体、水は体を潤す液体、とされています。

これらが停滞すると病的状態となります。

治療では何が詰まっているのかを明らかにし、その詰まりを除去するような漢方薬を投与します。

西洋医学的には異常がないとされても、漢方医学的には上記のような異常がみられる患者さんも多く存在し、漢方薬の投与によって嘘のように痛みがなくなったということもよく経験します。

低侵襲痛みの治療

従来の保存的治療では痛みが軽減できない方に対して、当院で行われている治療法について紹介いたします。

高周波熱凝固法(Radiofrequency Thermocoagulation ,RF)

高周波熱凝固法は先端に熱を加えることができる特殊な針を用いて、痛みを伝える神経を編成させることにより、長期間痛みの伝わりを抑えることを目的とした治療法です。局所麻酔薬を用いた神経ブロック治療で一定の効果が見られた患者さんが対象となります。

脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固法

脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固法は、背骨の関節に痛みが出る人に対して、関節の痛みを伝える神経(脊髄神経後枝内側枝)を熱で変性させる事により、長期間痛みの伝わりをおさえます。

針の先端に弱い電流を流した状態で、背骨の表面で針を動かし神経に針先が触れる場所を探します。針先が神経に触れると、関節付近に痛みを感じ、電流を止めると痛みも治まります。

神経の場所が確認できたら造影剤と局所麻酔薬を少量注入し、異常がないことを確認した後、針の先端に約90度の熱を加えて関節の痛みを伝える神経だけを熱で変性させます。

パルス高周波療法(Pulsed Radiofrequency Treatment, PRF)

パルス高周波療法は、急性および慢性の痛みをきたす様々な疾患(脊椎疾患、関節痛、神経の障害による痛みなど)に対して行われる治療法の一つです。特殊な針の先端から高周波エネルギーを間欠的に加えることで、神経を傷めずに痛みだけを抑える方法で、その神経が支配する部位の痛みを一時的に、または長期的におさえることを目的としています。高周波熱凝固法と異なり、針先の温度は42度以下に抑えられるため、しびれや力の入りにくさといった副作用がおこらないと考えられています。

神経根パルス高周波療法

脊髄から多くの神経が枝分かれし、全身(首から下)に広がっていきます。これを脊髄神経と呼びますが、この脊髄神経が背骨から外へ出てくる根もとの部分に、高周波エネルギーを間欠的に加えることで、神経を傷めずに痛みだけをおさえる方法が神経根パルス高周波療法です。頚椎症に伴う腕の痛みや、坐骨神経痛などに効果があります。

レントゲンもしくはエコーで治療を行う神経や目印となる骨を確認し、局所麻酔の注射を行い、麻酔が効いたところで治療を開始します。レントゲンやエコーで確認しながら、神経にむけて針を進めます。針の先が神経に近づいたら、針の先から電気を流して、あなたがいつも痛みを感じている部位に刺激が感じられることを確認します。確認が終わったら、2分間のパルス高周波療法を1から3回行います。

*慢性の腰下肢痛
*頚部痛・肩関節痛

肩甲上神経パルス高周波療法

脊髄からは多くの神経が枝分かれし、肩関節から上肢に広がっていきます。枝分かれした神経はさらに分岐したり合流したりを繰り返しますが、首のあたりでは腕神経叢と呼ばれ、この腕神経叢から肩甲上神経や腋窩神経など肩や脇に広がる神経が分岐します。これら枝分かれした後の肩甲上神経に、高周波エネルギーを間欠的に加えることで、神経を傷めずに痛みだけをおさえる方法が肩甲上神経パルス高周波療法です。慢性の肩関節痛に対する肩甲上神経パルス高周波療法の有効性はすでに複数の研究によって証明されています。

エコーで治療を行う神経を確認し、局所麻酔を行い、麻酔が効いたところで治療を開始します。エコーで確認しながら、神経にむけて針を進めます。針の先が神経に近づいたら、針の先から電気を流して、あなたがいつも痛みを感じている部位に刺激が感じられることを確認します。確認が終わったら、2分間のパルス高周波療法を3回行います。治療中は、神経が刺激されることでびりびりしたり、ぴくぴくと動いたりします。刺激による痛みが強い場合は、少量の局所麻酔薬を使用することも出来ます。

当科ではこれまでに、肩関節周囲炎や肩腱板(不全)断裂に伴う肩関節痛や、肩関節手術後に長引く痛み(遷延性術後痛)等を対象に、肩甲上神経パルス高周波療法を行っています。約70%の患者さんの肩の痛みに有効です。一度治療を受けていただくだけで、3か月から1年以上効果が続きます。

伏在神経パルス高周波療法

脊髄からは多くの神経が枝分かれし、下肢に広がっていきます。枝分かれした神経には大腿神経や坐骨神経などがあり、大腿神経から伏在神経が枝分かれし、膝下の内側周囲の皮膚や関節へとひろがっています。これら枝分かれした後の伏在神経に、高周波エネルギーを間欠的に加えることで、神経を傷めずに痛みだけをおさえる方法が伏在神経パルス高周波療法です。

エコーで伏在神経を確認し、皮膚の消毒、局所麻酔の注射を行います。エコーで確認しながら、神経にむけて針を進めます。針の先が神経に近づいたら、針の先から電気を流して、あなたがいつも痛みを感じている部位(おもに膝下の内側)に刺激が感じられることを確認します。確認が終わったら、2分間のパルス高周波療法を4回行います。治療中は、神経が刺激されることでびりびりしたり、ぴくぴくと動いたりします。

当科ではこれまでに、変形性膝関節症に伴う膝関節痛を対象に、伏在神経パルス高周波療法を行っています。約75%の患者さんの膝の痛みに有効です。1回の治療により3か月から1年以上効果が続きます。

その他の対象疾患としては、膝関節術後に長引く痛み(遷延性術後痛)などがあります。

*当科では変形性膝関節症に伴う難治性膝痛の臨床研究にご協力いただける方を募集しています。詳細は「臨床研究」のページをご覧ください。
*変形性膝関節症

硬膜外脊髄刺激療法(Spinal Cord Stimulation, SCS)

慢性疼痛治療のひとつである脊髄刺激療法は、脊髄に微弱な電気を流すことにより、慢性の痛みを和らげる治療法です。これまでに国内では約6000人の患者さんに実施されています。治療の流れは以下の通りです。

① トライアル(試験刺激)

脊髄を包む硬膜という膜の外側に,ボールペンの芯より少し細い程度の電極(リード)を背中から注射針を通して入れます。

まずは,体の外からその電極に電気を流し,痛みのある体の場所に電気の刺激が感じられるように電極の場所を設定します。

からだの外から電気を流して,普段の痛みが和らぐかどうかを観察します。数日間観察して効果があれば,スイッチと電池の役目をする装置を腹部や鎖骨の下あたりの皮膚の下に埋め込んで,患者さん御自身で操作できるようにします。

からだの外から電気を流して,普段の痛みが和らぐかどうかを観察します。数日間〜一週間観察して効果があるかどうかを判定します。効果判定の後は、一旦電極を抜きます。

② 刺激装置の埋め込み

効果があれば、後日埋め込み手術を行います。トライアルの時と同じ方法で、電極を背中から注射針を通して入れた後に、スイッチと電池の役目をする装置を腹部や鎖骨の下あたりの皮膚の下に埋め込んで,患者さん御自身で操作できるようにします。

この治療の対象疾患としては,脊椎の手術後に残存した慢性の痛み,末梢神経障害性疼痛,脊髄障害性疼痛の一部のものなどの難治性の痛みの方です。適応かどうかは,一概に病名だけでは決められませんし,上記病名以外の方にも適応できる場合が多いですから,希望される方は当科に受診のうえご相談ください。

経皮的髄核摘出術

腰椎、および頚椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲手術法です。薬物療法や神経ブロック治療に抵抗性の痛みが続き、通常の椎間板摘出手術の適応とならない患者さんに対して行われます。

皮膚をメスで切らずに、X線透視下に専用の細い筒を椎間板の中に刺入して、筒の中から椎間板をごく少量摘出し、高周波やプラズマにより椎間板内の減圧を行います。

手術は局所麻酔で実施可能で、短期間の入院治療により早期の社会復帰を目指します。

椎間板性腰痛の患者さんの一部に対しても腰痛の改善効果が期待できます。

経皮的硬膜外腔癒着剥離術(Raczカテーテル)

東京医研株式会社資料より

腰椎疾患(腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎術後疼痛症候群)および頚椎疾患(頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症)に対する低侵襲手術法です。薬物療法や神経ブロック治療に抵抗性の痛みが続き、脊椎の除圧手術の適応とならず、脊柱管内で神経周囲の癒着が痛みの原因となっている患者さんに対して行われます。

皮膚をメスで切らずに、専用の針を通して癒着剥離用のスプリングガイドカテーテル(Raczカテーテル)を脊柱管内の癒着組織に挿入します。カテーテルから生理食塩水などの薬液を注入することにより神経周囲の癒着を剥がして神経痛の原因を取り除きます。

手術は局所麻酔で実施可能で、短期間の入院治療により早期の社会復帰を目指します。

エピドラスコピー
内視鏡的難治性腰下肢痛治療

エピドラスコピー(硬膜外内視鏡)は慢性の腰痛や難治性の腰部椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの坐骨神経痛、腰椎手術後も下肢痛にしびれや痛みが残存し、手術後の神経周囲の癒着などが考えられる場合に、内視鏡を硬膜外腔に入れて癒着を剥離して治療するもので、従来の保存的治療が無効な方に対して行われる治療法の1つです。

この方法は手術室で以下の手順で行います。手術室にてお腹の下に枕を入れうつ伏せになります。お尻の上に局所麻酔の注射をし、直径1mm以下の細い内視鏡を仙骨硬膜外腔に挿入します。

内視鏡およびX線透視下に神経、血管、脂肪などを見ながら、痛みの原因となっている神経周囲の病変を観察し、痛みの原因となっている神経と周囲の癒着組織を剥離、洗浄します。

エピドラスコピーの対象疾患

腰椎椎間板ヘルニア 14例
腰部脊柱管狭窄症 23例
椎弓切除術後症候群
Failed Back Syndrome
15例
腰椎分離すべり症 3例
2002-2007年合計 計58例

治療成績

疾患別治療成績

リハビリテーション

慢性の痛みで起こった運動機能障害や不快な感覚に対してリハビリテーションの手法を用いて活動度の改善、症状の緩和を行います。当科では多くの疾患で神経ブロック治療と組み合わせてリハビリテーションを行います。

幻肢痛や引き抜き損傷後疼痛に対する鏡療法(神経リハビリテーション)の研究、治療も行っています(現在休止中)

慢性の痛みに対するリハビリテーション療法

難治性疼痛に対する視覚を介した神経リハビリテーション

痛みは身体の危険信号として生体に備わっている生理的な神経システムです。

つまり、体性感覚の一つである“痛み”と“身体”は、切っても切り離せない関係にあります。

さらには、身体の認知には視覚が非常に重要なことから、ヒト神経因性疼痛を対象として視覚と体性感覚(痛み)の相互作用研究および痛みに対する神経リハビリテーション治療の開発を行っています。

認知行動療法

痛みという症状は慢性化するとその症状に意識が集中し「痛みにとらわれる」ことが一つの特徴です。

「痛みがあるから~できない」

という思いに陥り、ますますとらわれてしまいがちです。

このような考え方がかえってご自身を苦しめる結果になっていることは意外と患者本人は気づきません。

痛みという感覚の性質を御理解いただき、

「痛みはあるけど~はできる」

という前向きな考え方に改めることができれば、慢性痛の治療は半分以上終わったとも言えます。

認知行動療法とはそのような考えになる過程を、医師がささえていく診療方針全体を指します。

大阪大学大学院医学系研究科 生体統御医学講座 麻酔集中治療医学教室

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