医学部教育|大阪大学 免疫内科

教育・研修

学生の皆さんへ

免疫疾患は、重症となる前の診断・治療介入が重要であり、その診断・評価・治療には多臓器・多系統にわたる広い知識を要します。 疾患概念、診断、評価、治療について医学的根拠に基づいた医療(EBM: evidence based medicine)を指導するとともに、新しい知見や研究的側面など発展的な議論も行います。

日本の科学研究諸分野の中で、免疫学は日本が世界をリードしている分野です。本研究室は、 世界的な評価を受けている多くの免疫学者を輩出しています。業績のひとつとして、 岸本忠三、元大阪大学総長、が中心となり進められたInterleukin-6(IL-6)に関する研究は、基礎免疫学および臨床免疫学の発展に大きく寄与し、その阻害剤の開発は、関節リウマチをはじめとする疾患に対して世界で使用されるに至りました。

免疫学に興味のある皆さんの参加をお待ちしています。

免疫内科

講義の概要


「教室OBの岸本忠三(元阪大総長)の講義風景 2013年4月」

1: アレルギー疾患総論

アレルギーの発症機構を、Coombs and Gellによる免疫反応の分類を用いて概説する。さらに、 即時型アレルギー疾患に焦点を絞り、診断、治療、最近のトピックスとして、アレルギー疾患増加の仮説と予防策、 新しい治療戦略を講義する。

2: 膠原病総論

膠原病とは、1942年にKlempererによって提唱された病理形態学的概念で、全身の結合組織にフィブリノイド変性がみられる疾患群の総称である。骨関節病変の観点からリウマチ性疾患、自己抗体や免疫現象の観点から自己免疫疾患とも分類される。疾患の分類、病因、臨床徴候、診断、治療について概説する。

3: 免疫不全症

原発性免疫不全症とは、その多くは小児期に発症する遺伝性疾患である。多くの責任遺伝子が同定され、診断、治療方法の進歩も見られるようになった。主要な疾患における病態、治療について概説する。

4: 全身性エリテマトーデス (SLE)

SLEは、多彩な自己抗体の産生と多臓器障害を呈しうる代表的な膠原病である。その臓器障害は、皮膚、粘膜、骨、関節、血液、神経、心血管、腎、肺、消化器、膀胱と非常に多岐にわたり重症度もさまざまである。診断、各臓器障害の評価、治療を説明する。

5: 喘息

気道の慢性的なアレルギー炎症で気流制限を呈する。気道炎症を中心とした病態に関して概説し、炎症を抑制する吸入ステロイド剤の重要性を強調する。

6: 全身性硬化症 (SSc)、全身性強皮症

進行性の皮膚硬化とレイノー現象を主徴とする慢性炎症性疾患である。臓器障害として、消化管、腎、肺(間質性肺炎)、肺動脈(肺高血圧症)などの病変の合併は予後に重要である。

7: 血管炎症候群

血管のサイズに基づいた分類(チャペルヒル分類)によって、高安病、巨細胞性動脈炎、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、その他の血管炎に分類する。多くある血管炎症候群の病態の違い、診断、治療について理解する。

8: ベーチェット病

皮膚や粘膜の被刺激性亢進から、口腔アフタ、結節性紅斑や毛嚢炎、眼のブドウ膜炎、外陰部潰瘍、発熱、関節炎などの炎症の反復を特徴とする。自然免疫系の病態への関わりを理解する。反復するブドウ膜炎や神経病変は、予後不良の可能性があり、積極的な治療介入が必要である。

9: シェーグレン症候群 (SjS)

自己免疫機序による外分泌腺とくに涙腺や唾液腺の慢性炎症により機能障害が進行し、眼および口腔乾燥症状を主訴とする。さらに間質性肺炎、間質性腎炎、神経障害などの腺外の臓器病変がありえる。甲状腺機能低下症など他の自己免疫疾患を合併することがある。

10: 関節リウマチ (Rheumatoid arthritis: RA)

早期診断を可能とした新しい診断基準(2010分類基準)、効果的な標準治療(メトトレキサート、生物学的製剤)、疾患活動性の評価について理解する。

11: 多発性/皮膚筋炎(PM/DM)

全身の筋の炎症性疾患であり、DMにおいては皮膚にも典型的皮疹を伴う(ヘリオトロープ疹やGottron徴候など)。 間質性肺炎や悪性腫瘍の合併の有無にも留意する。

12: 抗リン脂質抗体症候群 (Anti-phospholipid syndrome: APS

リン脂質に対する自己抗体と関連し、動静脈血栓症や妊娠合併症を呈する症候群。抗リン脂質抗体の種類とその性状、 血栓症を惹起する機序、診断、治療について説明する。

13: 混合性結合組織病 (Mixed connective tissue disease: MCTD)

全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性/皮膚筋炎の臨床徴候がオーバーラップし、U1RNPに対する自己抗体の単独高値がみられる特徴を理解する。肺高血圧症の合併は、時に重症となり予後に影響を与える。

14: 腫瘍免疫総論

腫瘍関連抗原を標的として、腫瘍細胞を特異的に攻撃するCD8Tリンパ球を生体内で誘導できる。この原理に従えば、癌細胞のみに障害を与え正常細胞には障害を与えない癌特異的な免疫療法の開発が可能となる。癌免疫療法の基礎および進行中の臨床応用について概説する。

学内Clinical clerkship(臨床実習)

実習にあたり以下の点に留意すること

実習内容

1: 診察と記録法

医療面接(問診)、身体診察の方法と解釈、適切な記録について指導する。主訴、現病歴、既往歴、家族歴などの聴取、全身状態の把握、バイタルサインの測定、各身体部位の診察などの一般内科的項目に加え、膠原病診療に必要な筋所見、関節所見についても解説する。 【記載用シート】

2: 担当症例の診察、カルテ記載、考察

日々の症状を聴取し、身体所見を自ら診察し、カルテに記載する。これに検査所見の解釈を加えて、現在の病状と治療について、考察を行う。

3: カンファレンスシートの作成、カンファレンスでの発表・議論

毎週の全体カンファレンスでの症例発表を行う。主訴、現病歴、入院時所見、診断、治療計画など、入院に関する全体の経過をまとめる。次週以降は、入院中の経過を簡潔に発表する。 【カンファシート(Sample)】

4: 基本手技の指導(採血、NGチューブなど)

採血手技の実際を指導する。また留置針やNGチューブなどの日常的に汎用される手技についても指導する。

5: 論文検索・抄読の指導

論文の選び方、読み方を指導する。実際に論文を選定して要約を作成し、抄読・発表する。 【論文を読もう】

6: 外来実習

外来では、限られた時間のなかで、医療面接、身体診察を行うことが必要となる。場合によっては検査をオーダーしその場での判断が必要となることもある。可能な場合は、見学のみならず実習の様式をとる。

7: クルズス

発熱の対応、検査計画と解釈、治療薬の概説、癌免疫療法、免疫アレルギー内科の紹介、などを、少人数での対話スタイルで講義する。

実習スケジュール

実習スケジュールは、変更になることもあるので実習時に配布される表で確認

 月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日
1午前ガイダンス
病棟紹介
論文を読む技術
論文の検索法
鑑別の考え方外来実習発熱の対応
午後診察と記録法1
(病歴・問診)
診察と記録法2
(身体所見)
カンファ参加
病棟回診
基本手技(採血、血管確保)検査値の読み方
2午前病棟医につく治療薬概説
論文抄読
実技(末梢血・尿の観察)外来実習WT1ワクチンベッドサイドティーチング
午後病棟医につく診察と記録法3
カンファシート作成
カンファ発表
病棟回診
癌免疫療法とは免疫疾患概論
3午前HIVの診療論文抄読
留学と進路
実習(ピークフロー)外来実習実習(関節・腹部エコーなど)
午後病棟医につくカンファシート作成カンファ発表
病棟回診
論文発表
レポート準備膠原病の検査計画
4午前皮膚の評価
Vesmeter実演
IL6の展開
論文抄読
抗体医薬の展開外来実習レポート準備
午後病棟医につくカンファシート作成カンファ発表
病棟回診
論文発表
免疫アレルギー内科紹介記録・記載の確認
出席確認と評価
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