オートファジーは近位尿細管において加齢ストレスや虚血障害に対抗する

J Am Soc Nephrol 2011; 22: 902-13, PMID 21493778

Autophagy protects the proximal tubule from degeneration and acute ischemic injury.

Kimura T, Takabatake Y, Takahashi A, Kaimori JY, Matsui I, Namba T, Kitamura H, Niimura F, Matsusaka T, Soga T, Rakugi H, Isaka Y.

 

オートファジーはユビキチン-プロテアソーム系と並ぶ主要な細胞内分解システムであり、細胞成分の代謝回転を担うことで細胞内ホメオスターシスを維持しています。また、細胞が負荷を受けると傷害性物質を積極的に排除するために亢進します。近年、各種臓器でオートファジーの重要性が判明しつつありますが、我々は腎臓の近位尿細管におけるオートファジーの役割を検討することにしました。

近位尿細管特異的オートファジー不全マウスを作成したところ、野生型マウスに比較して経時的に尿細管機能障害と細胞腫大を来たしました。また、細胞内封入体や異常なミトコンドリアの集積を認めました。

図1 近位尿細管特異的オートファジー不全マウスに蓄積した細胞内封入体

赤がユビキチン化された封入体、緑は近位尿細管の刷子縁を、青は核を染めています。

 

次に虚血・再灌流(I/R)傷害をモデルに急性腎障害での役割について検討したところ、近位尿細管特異的オートファジー不全マウスでは野生型マウスに比較して、I/R傷害後の腎傷害が著明に増悪しました。

図2 I/R傷害後の(左)野生型マウスと(右) 近位尿細管特異的オートファジー不全マウスの尿細管

 

以上より、オートファジーは尿細管の加齢ストレスに対抗して細胞保護的に働くこと、I/R傷害に対抗して細胞保護的に働くことが判明しました。尿細管におけるオートファジーの機能についてはほとんど知られていませんでしたので、今後、オートファジーについての更なる理解により、慢性腎臓病と急性腎障害に対して全く新しい機序からの治療戦略につながる可能性があります。

図3 オートファジー欠損の尿細管細胞の模式図

ストレスにより異常な蛋白やミトコンドリア、細胞内封入体の蓄積を示す。