腎臓におけるオートファジーはミトコンドリアの品質管理を介して代謝性アシドーシスに対して防御的な役割を有する

J Am Soc Nephrol. 2014 Oct;25(10):2254-66.

Autophagic Clearance of Mitochondria in the Kidney Copes with Metabolic Acidosis.

Namba T, Takabatake Y, Kimura T, Takahashi A, Yamamoto T, Matsuda J, Kitamura H, Niimura F, Matsusaka T, Iwatani H, Matsui I, Kaimori J, Kioka H, Isaka Y, Rakugi H.

 

私たちはこれまで、腎臓におけるオートファジーの役割について、近位尿細管特異的オートファジー不全マウスを用いて、虚血や薬剤性障害に対して保護的に作用することを報告してきました1),2)。オートファジーは細胞内の不要な物質を分解する役割以外にも、ミトコンドリアなどの細胞内小器官の品質管理も行っています。我々は腎不全の重要な合併症である代謝性アシドーシスのモデルマウスの腎近位尿細管においてオートファジーが亢進することを見出したことをきっかけに、アシドーシスに対するオートファジーの役割について検討を行いました。

図1. 酸負荷を行ったマウスの近位尿細管細胞のミトコンドリア右端のオートファジー不全マウスを代謝性アシドーシスにすると、ミトコンドリアは著明に腫大し、顕著な形態異常を示した。

アシドーシスの代償反応であるアンモニアは主にミトコンドリアで産生されており、ミトコンドリアは重要な役割を果たしています。近位尿細管特異的オートファジー不全マウスではコントロールマウスと比較して、アシドーシス時にアンモニアの合成低下や顕著なミトコンドリアの機能の低下や形態異常を認めました(図1)。

図2. 酸負荷により傷害されたミトコンドリアがオートファジーにより分解されているところ。
オートファジーを表すLC3(左から1枚目)がユビキチンというアダプター蛋白を介して、ミトコンドリア(右から2枚目)と、共局在している(右から1枚目の白色の点)。

また、培養尿細管細胞に酸負荷を行うと、ミトコンドリアがオートファジーによって分解されていました(図2)。このことから、オートファジーはアシドーシスにより傷害されたミトコンドリアを分解して(図3)、その品質管理を行う事で、代償反応を維持するといった細胞の生理的な機能も維持することを明らかとしました。

図3. 傷害ミトコンドリアがオートファジーによって分解を受けるところを図に表したもの。

この研究の結果より、オートファジー活性調整が代謝性アシドーシスの新規治療の対象となるのではないかと考えられ、新たな治療法の開発が期待されます。