近位尿細管細胞においてオートファジーはリソソームの合成と機能を促進することによってAGEの分解に寄与する

Diabetes. 2017 May;66(5):1359-1372. PMID: 28246295

Autophagy Inhibits the Accumulation of Advanced Glycation End Products by Promoting Lysosomal Biogenesis and Function in the Kidney Proximal Tubules.

Takahashi A, Takabatake Y, Kimura T, Maejima I, Namba T, Yamamoto T, Matsuda J, Minami S, Kaimori JY, Matsui I, Matsusaka T, Niimura F, Yoshimori T, Isaka Y.

 

Advanced glycation end products(AGE)は糖尿病性腎症の進行に寄与することが知られています。AGEは血中あるいは糸球体濾過を介して近位尿細管細胞に取り込まれリソソームで分解されます。私たちの研究グループではリソソームの分解にオートファジーが関わっていることを見出しており(EMBO J. 2013 Aug 28;32 (17):2336-47.)、本研究では尿細管オートファジーとリソソームを介したAGE分解の関係を探求しました。

8週令のC57/BL6マウス(尿細管細胞特異的オートファジー不全マウス[KOマウス]および野生型マウス)にストレプトゾトシン(STZ)を投与することにより糖尿病を惹起しました。4か月後に安楽死させ、解析に供しました。その結果両マウスで腎組織には差がないもののCML(AGEの一つ)はKOマウスにおいて著明に蓄積していました(図1)。

図1. 糖尿病マウスの腎臓におけるCMLの蓄積。野生型(F/F)およびKO(F/F; KAP)マウスの腎臓をAGEの一つCMLに対する抗体で染色した。茶色が陽性部分。

次にオートファジー可能および不全培養尿細管細胞を、高濃度ブドウ糖液中で培養、あるいは外部からAGEを添加した際のオートファジーの進行を調べました。その結果いずれの場合もオートファジーの流れが停滞し、オートファジー不全培養尿細管細胞では可能細胞に比較してAGEが内部に蓄積していました。このメカニズムを調べるために同条件下でリソソームの多寡とその生合成をつかさどる転写因子TFEBの発現量を調べました。その結果AGE存在下では、AGEを処理するためにリソソームの生合成が促進されるが、オートファジー不全培養尿細管細胞ではその適応反応が障害されていることが判明しました(図2)。

図2. AGE刺激によるリソソームおよび転写因子TFEBの発現量。Lamp1はリソソーム構成因子。Atg(+)、Atg(-)はそれぞれオートファジー可能および不全培養尿細管細胞。

上記の結果に一致してSTZ投与およびKOマウスにおいても、野生型に比較してリソソームの量が減少しており、炎症と線維化が進行していました。これらの結果は以下のようなシェーマでまとめられます(図3)。

図3. オートファジー可能(上段)および不能(下段)尿細管細胞におけるAGEの動態とリソソームの関わり

以上より、尿細管オートファジーが糖尿病状態おいてリソソームの生合成と機能増強を介してAGEの処理に寄与していることが明らかになりました。今後オートファジーによるリソソーム数・機能の調節のメカニズムを解明したいと考えています。