内皮細胞オートファジーは抗酸化作用を介して腎糸球体係蹄の統合性維持に寄与する

Autophagy. 2018;14(1):53-65. PMID: 29130363

Antioxidant Role of Autophagy in Maintaining the Integrity of Glomerular Capillaries.

Matsuda J, Namba T, Takabatake Y, Kimura T, Takahashi A, Yamamoto T, Minami S, Sakai S, Fujimura R, Kaimori JY, Matsui I, Hamano T, Fukushima Y, Matsui K, Soga T, Isaka Y.

 

オートファジーは細胞内の主要な分解機構であり、細胞成分の代謝回転に貢献しています。 我々はまず野生型マウスの腎臓を用いて構成細胞のオートファジーを評価したところ、糸球体内皮細胞が近位尿細管細胞と同様に高いオートファジー活性を持つことを見出しました(図1)。

図1. クロロキン(オートファジー経路の遮断薬)を投与することで、糸球体内皮細胞のオートファゴソーム数が有意に増加する。白矢印はオートファゴソームを示す。

そこで、内皮細胞オートファジーの役割を明らかにするため、血管内皮および造血幹細胞特異的オートファジー不全マウス(KOマウス)を作成したところ、腎糸球体係蹄特異的に形態異常と酸化ストレスの亢進が見られました(図2)。
野生型マウス骨髄を移植したKOマウスにおいても糸球体病変が進行することから、内皮細胞のオートファジー欠損が糸球体病変に関与していると考えられました。

次に、酸化ストレスがKOマウスの糸球体病変に及ぼす影響を検証すべく、活性酸素種除去剤であるN-アセチルシステイン(NAC)を生後からKOマウスに投与したところ、KOマウスの糸球体病変は改善し、内皮細胞傷害も軽減しました(図2)。

図2. (左)単離糸球体のWestern blotting写真。酸化ストレスはKOマウスの糸球体で亢進し、NAC投与により軽減する。(右)KOマウスの糸球体において腫大、係蹄壁肥厚および内皮細胞傷害を認める。NAC投与によりKOマウスの糸球体病変が著明に改善する。(ジチロシン:酸化ストレスマーカー、ICAM-1:内皮傷害マーカー)

以上より内皮細胞のオートファジーは、糸球体を酸化ストレスから保護し、糸球体係蹄の統合性維持に必須であることが明らかとなりました。血管内皮障害は慢性腎疾患の成因として重要であることから、今後内皮細胞のオートファジー活性を調節することにより、各種糸球体疾患の治療が可能になると期待されます。