エイコサペンタエン酸はオートファジーフラックスを回復することで腎脂肪毒性を軽減する

Autophagy 2020 Jun 16. PMID: 32546086

Eicosapentaenoic acid attenuates renal lipotoxicity by restoring autophagic flux.

Yamamoto T, Takabatake Y, Minami S, Sakai S, Fujimura R, Takahashi A, Namba-Hamano T, Matsuda J, Kimura T, Matsui I, Kaimori JY, Takeda H, Takahashi M, Izumi Y, Bamba T, Matsusaka T, Niimura F, Yanagita M, Isaka Y.

 

オートファジーはリソソームにおける細胞質成分分解機構であり細胞恒常性維持に重要な役割を果たします。われわれは以前、高脂肪食(HFD)によりオートファジーへの依存性が高まる一方リソソーム障害からオートファジーがスムーズに機能せず腎障害につながるという、新しい脂肪毒性機序を報告しました(JASN2017)。今回、臨床で頻用されるエイコサペンタエン酸(EPA)の効果とその機序を検討しました。EPA併用はHFDによる尿細管の空胞病変・リソソーム内リン脂質蓄積を減少させ、ミトコンドリア機能障害、炎症、線維化などの腎脂肪毒性のいくつかの特徴を軽減しました(図1)。

図1. 高脂肪食を与えた肥満マウスの腎尿細管では著明な空胞形成・リソソーム内リン脂質蓄積を認めるが、EPAを与えた肥満マウスでは軽減していた。

次に近位尿細管培養細胞を用いて機序の検討を行いました。EPAはパルミチン酸(PA)によるリソソーム障害とオートファジーフラックス障害を軽減しました(図2)。さらに蛍光標識飽和脂肪酸を用いたpulse chase assayから、PA投与でリソソーム内に蓄積する脂肪酸がEPA併用時には脂肪滴へ貯留し、さらにミトコンドリアでの脂肪酸β酸化を促すことが判明しました(図3)。

図2. EPAはパルミチン酸(PA)によるオートファジーフラックス障害を軽減した。

図3. PAでリソソーム内(白:LAMP1)に蓄積する脂肪酸(赤:Red C12)がEPA併用時には脂肪滴(緑:BODIPY)へ貯留し(左図)、さらにミトコンドリア(緑:MitoTracker)での脂肪酸β酸化を促すことが判明した(右図)。

以上より、EPAは飽和脂肪酸を細胞保護的な脂肪滴内に囲い込み、リソソーム障害を軽減しオートファジーフラックスを回復させることがわかりました。これまでの研究で、様々な腎疾患ストレス下でオートファジーフラックス障害が病態に寄与していることが判明しており、今後オートファジーフラックスに焦点をあてた腎臓病治療の創薬につなげていきたいと考えております。